ミュージカル映画の黄金期を伝承する作品
『ザッツ・エンタテインメント』(74)
■監督ジャック・ヘイリー・ジュニア
■主演
フレッド・アステア、ジーン・ケリー
■DVD発売元
ワーナー・ホーム・ビデオ
この映画はMGM社が創立50周年を記念して、1929~58年にかけて製作したミュージカルの中から、約200本の映画の名場面をアンソロジーにしたものです。
まだビデオもDVDもなかった時代に、この映画は黄金期のミュージカル映画を伝承する役割を果たしました。
かつてMGMは“星の数よりも多いスター”をキャッチフレーズにしていただけに約120人ものスターが登場します。
名場面の合間にはフランク・シナトラやエリザベス・テイラーら、当時存命だった11人のスターが思い出を語ります。
中でも、フレッド・アステアがジーン・ケリーを、ケリーがアステアを、ライザ・ミネリが母のジュディ・ガーランドを紹介するところは見ものです。
私はこの映画のおかげで、アステアとジンジャー・ロジャースを、ケリーを、そして水中ショーのエスター・ウィリアムズなどを知り、ひいてはミュージカル映画の歴史そのものを知ることができました。
今は名場面のそれぞれはYou Tubeなどで手軽に見られるかもしれません。
しかし、この映画の存在価値は名場面を適切に配置して編集し、スターの語りを融合させ、ミュージカル映画の歴史を語った点にあります。
ミュージカル映画初心者にはこれ以上の“入門書”はないでしょう。
私のお気に入りの名場面は、『雨に唄えば』(54)のどしゃぶりの雨の中でジーン・ケリーが歌い踊るシーンと、ドナルド・オコナーが体を張って笑わせる「メイク・エム・ラフ」、そして『ショウ・ボート』(51)でウィリアム・ウォーフィールドが朗々と歌い上げる「オール・マン・リバー」です。
あなたもこの映画を見て、自分だけのお気に入りの名場面を見つけてください。
続編として『PART2』(77)、『PART3』(94)も製作されているのでこちらもぜひどうぞ。