ハードルの高い分譲マンション住民の「合意形成」
分譲マンションでは住民の「合意形成」に高いハードルが
こうしたとき、いつ、どのように、どのくらいのお金をかけて修繕するかなどについて、管理組合の構成員である住民が話し合い、合意を形成し、問題の解決を図っていきます。複数の住民が参加し合意形成を行うのですから、仮に平時の日常的な問題であったとしても、いろいろな意見が出て、なかなか意見がまとまらないこともあるでしょう。ましてや災害時に、建物が一気に大きな損害を被ったとなると、建物の再建や修繕の方向性、あるいは内容についての合意形成は、さらに難しくなるはずです。
「改正被災マンション法」により、住民の合意形成の基準が緩和された
阪神淡路大震災では、多数の分譲マンションが被災し、さらに再建にあたり大変な困難に直面しました。そこで当震災を受け、平成7年に制定されたのが「被災区分所有建物の再検討に関する特別措置法」、通称被災マンション法でした。この法律によって、地震など政令で定める災害によりマンションが滅失した場合、5分の4の多数決により、その敷地に建物を再建(修復は4分の3)することができることなどが定められました。ただしこの法律には、重大な被害を受けた建物を取り壊したり売却するとき、そして建物が滅失した場合の敷地売却についての定めがないため、こうした場合は民法の規定に従い全員の同意が必要でした。そうはいっても1人の反対も許さないこの定めでは、住民の合意形成は難しく、住民の生活再建が滞るだけでなく、結果として建物が長期間放置され、周囲に危険を及ぼす可能性もあるとの指摘もなされていました。そこで東日本大震災後には、大規模な災害により重大な被害を受けたマンション、あるいは滅失したマンションの敷地についても、5分の4以上の多数決で取り壊しや売却を実現する決議制度が創設されました。
これが平成25年6月に成立した「改正被災マンション法」で、7月末には政令が施行され、東日本大震災で被災したマンションにもさかのぼって法律が適用されています。このように、合意形成がしやすいよう基準は緩和されたのですが、改正法では売却先の決め方や抵当権の扱いについての定めがなく、課題も残しています。
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