マネジメント/組織マネジメントとは

経営者は組織の「精神」であり「顔」である(2ページ目)

組織マネジメントにおける経営者の役割を考えます。経営者は単なる組織のオーガナイザーとしての役割だけでなく、組織内、組織外それぞれに対して、経営者であるがゆえに意識し気遣いを求められる重要な役割があります。その役割について、実例を挙げながら説明します。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド


ジョブスに見る「組織の顔」としての経営者

次に組織外部に対するものです。これは組織の「顔」としての経営者の信用力をいかに高めるか、その点に尽きるでしょう。決して経営者に「目立ちなさい」とか「スタンドプレイをしなさい」と言っているのではなく、会社組織のトップたる経営者は嫌が上にも目につくものであり、目につくが故経営者には対外的にしっかりと信頼感を感じさせる言動に務めて欲しいということになります。

解説

経営者は組織外部に対しては「顔」となる

これは大企業に限った話ではありません。むしろ中小企業ほど重要なことでもあるのです。例えば銀行が融資の可否を審査する場合を考えてみてください。決算書はあくまで過去の成績の記録にすぎません。確かに参考にはなりますが、銀行員がおカネを貸して返ってくるか否か最終的な判断のよりどころは、将来を担う経営者の人物評価に帰結するのです。いくら決算内容が良くても、経営者が人物的に危ういなら銀行は決して長期の融資を応諾しないでしょう。中小企業同士の新規の商取引における取引の可否判断にも、同じことが言えると思います。

大企業の場合には、経営者の積極的かつ的確な露出が広告塔的な役割を果たすことでその企業の信頼感をさらに高めケースもあります。「プレゼンの神様」と言われたアップル・コンピュータの故スティーブ・ジョブズ氏は、企業ブランドを高めた経営者のパフォーマンスとして世界で最も成功した例としてあげられるでしょう。

逆にトップが関与する不祥事の発生は、「顔」であるが故、他の不祥事に比べてより大きなイメージダウンにもつながります。古くは前回も登場した岡田社長事件後の三越が宮内庁御用達を外された件がそれであり、最近では元トップが逮捕されたオリンパス事件で同社が存亡を賭けソニーとの提携を余儀なくされた件もまた同じです。

経営トップたるものは単なる組織の長ではなく、組織内に対しては「精神」としての役割を担い、組織外に対しては「顔」としての役割を担っていることを、常に意識した行動を心掛けなくてはならないのです。
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