稲盛氏に学ぶ「組織の精神」としての経営者

今回は、組織マネジメントにおける経営者の経営者であるが故の重要な役割について考えてみます。

経営者の役割は大きく分けると、組織内部に対するものと組織外に対するものに分けられます。こまごまと紐解けば最高指揮者故にさまざまな役割がありますが、ここでは組織内部、外部それぞれに向けて経営者が直接かかわることで確実に効果が異なる特筆すべき役割を、実例を挙げながら解説します。

解説

経営者は組織内部に対しては「精神」であれ

まず組織内部に対するもの。経営者は言うまでもなく組織マネジメントの要であり、オーガナイザーとして戦略、管理におけるあらゆる意思決定を担うことは言うまでもありません。しかしそれ以上に重要な経営者自身がおこなうべき事があります。それは「ビジョンの共有」を自らおこなうことです。「ビジョン」とは組織が中期的に目指す姿であり、それをいかにして社員たちと共有するかに経営者自身が腐心することが、組織マネジメント成功へ重要なカギを握っています。

10年2月に日本航空の再建を託された稲盛和夫氏は、事業再建計画というビジョンの実現に向けて、いかにこれを社員一人ひとりが他人事にせず共有することができるか、ただ一点そこに注力したと言います。氏は後日談で、「就任直後に幹部社員を集め、1カ月間にわたり人間としての生き方や哲学を説いた。しかしあまりに基本的なことと反発も受けたが、それすら身についてなかった結果の倒産だと説き続け、次第に受け入れられた」とその苦労を述べています。氏の言う、「基本精神」=「フィロソフィー」の共有です。

一見再建計画というビジョンとは無関係に思われがちな、こういった地道で根気強い「精神」活動が、実は「組織をひとつにし、全従業員の士気を高め、そのことが日本航空の再建を可能にした」と、稲盛氏は話しています。氏は常々「リーダーによっていかなる企業の浮沈も左右されるのだ」と説いていますが、同じ実質破たん企業である東京電力の震災後2年を経てなお遅々として改まらない組織風土を見るに、経営者が組織内部に対して「ビジョンの共有」努力に腐心するか否かがいかに重要であるかを実感することができると思います。