海外出産で考えるべきこと
海外で出産したら、費用はどうなる? 日本の健康保険は適用される?
1.日本からの駐在員(または駐在員妻)として出産する場合
2.日本から出産を目的に海外に渡航し出産、もしくは海外旅行先で急きょ出産した場合
3.国際結婚などで長期間住む予定で相手国に行き出産する場合
以上の3つに分けて考えてみましょう。
1. 海外に駐在している人やその家族が出産したら?
日本の会社から出向等により海外に居住している方(駐在など)は日本の健康保険の被保険者となり、その家族も被扶養者として日本の健康保険の適用を受けます。ちなみに海外駐在時に日本で加入する駐在員向けの海外旅行保険では、基本的に出産に関することは給付金の対象外ですが、事情に応じて赴任先の国で医療保険などを検討することはできます。
本人や家族が出産したときは日本国内で健康保険が適用される範囲内の治療(例えば帝王切開等の異常分娩となったら手術費等一部が保険診療対象)なら海外療養費の払い戻しを受けられます。通常出産でも出産育児一時金は支給申請することができるでしょう。手続きの詳細は、会社の総務担当者や健保組合または協会けんぽ都道府県支部にお問い合わせください。
■健康保険の海外療養費支給申請に必要なもの(協会けんぽ)
・健康保険療養費支給申請書(立替払等)
・診療内容明細書
・領収明細書
・日本語の翻訳文
・保険証、印鑑、通帳または通帳のコピー
2. 妊娠中に海外へ渡航して出産したら?
妊娠中、場合によっては飛行機の搭乗を断られることも
例えば、加藤あいさんはアメリカで出産、小雪さんは韓国で出産、ジャガー横田さんはハワイで出産したとのことですが……。一般的に、芸能人と一般人ではビザの入国理由が違うことが考えられます。
出産を理由に入国することを禁ずる国もあります。なお、民間の海外旅行保険では基本的に出産に関しては給付金の対象外ですので、出産費用や病院の診察料や入院費用はいったん自分で全額支払うこととなるでしょう。
また妊婦の飛行機への搭乗は断られる可能性もあります。妊娠中に全く問題なく診断書も付けられたとしても、少なくとも1カ月前くらいからの滞在になるので家族の渡航費や滞在費も自己負担ですし、言葉の問題もあります。
出産後は大使館にも出生届を提出する必要もあり、赤ちゃんのパスポート取得の必要もあるでしょう。例えば出生地主義の国(アメリカやカナダなど)だと赤ちゃんが日本と2重国籍になるので、子どもが成長したときに日本以外に国籍を持っていることを説明する必要があるでしょう。
国民健康保険加入者が海外に短期(1年以内)渡航した際には海外療養費制度があります。日本国内で国民健康保険が適用される範囲内の治療(例えば帝王切開等の異常分娩となったら手術費等一部が保険診療対象)なら帰国後海外療養費を支給申請することができます。
ただし、海外出産することを目的に渡航し出産した場合は、海外療養費の支給申請の対象外となる可能性が高いです。健康保険でも国民健康保険でも療養や治療を目的に海外へ渡航した場合は、海外療養費の支給対象外としているためです。海外旅行中にたまたま産気づき出産することになった場合は、海外療養費を支給申請することはできるでしょう。
海外出産でかかった費用はいったん全額自分で負担をし、帰国してから住民票のある市区町村役場で海外療養費の支給申請をします。海外療養費は日本に住民票を残してあることが条件で、海外転出届を提出してしまうと支給申請ができません。手続きについての詳細は各市区町村役場の保険担当課にお問い合わせください。
■国民健康保険の海外療養費申請に必要なもの(横浜市の場合)
・保険証
・印鑑(朱肉を使用するもの)
・銀行の預金通帳又は口座番号などの控え
・医療機関等で発行される診療内容が分かる明細書 様式A(区役所にも所定の様式の用意があります)
・医療機関等で発行される費用の領収明細書 様式B(区役所にも所定の様式の用意があります)
・日本語翻訳文
海外療養費及び出産育児一時金の支給申請ともに、治療費を支払ってからまたは出産後2年で時効となりそれぞれ支給申請ができなくなりますのでご注意ください。海外療養費払い戻しのための翻訳業務を行っているところもあるので帰国後は早めに手続きしてください。
海外療養費が支給される場合は、支給決定日の外国為替換算率(売りレートTTS)が用いられ、日本円で支給されます。また出産育児一時金も支給される場合は40万4000円(海外の病院は産科医療補償制度に参加していないため)になります。
3. 国際結婚などで相手の国へ行って出産したら?
国際結婚する場合は、相手の国の健康保険制度などもチェック
ただし本人が日本の会社の健康保険に任意継続している場合や会社員を退職後6カ月以内に出産する場合は会社の健康保険で海外療養費を支給申請できます。
相手国に健康保険制度があるか?健康保険制度があれば出産に健康保険は適用されるか?出産育児一時金に相当する制度などはあるか?帝王切開などの処置を行っていてそのような医学的措置で健康保険が使えるか?日本では健康保険がきかない妊娠や出産について全額健康保険がきく国もありますが、国によって医療事情はさまざまです。
■アメリカ
2014年4月から医療保険改革法が施行され、無保険者は少なくなったとのこと。でも医療費は高額です。
■ハワイ
日本と比べ非常に医療費が高く、救急車は有料。24時間体制や日本語の話せる医師がいるクリニックもあり。
■カナダ
極端に医師数の少ない科(整形外科、皮膚科、産婦人科など)では、数カ月後から1年先にしか予約がとれない状況とのこと。
■タイ
バンコクでは、日本人向けに24時間サービスを行っている病院や、産婦人科医が常勤している病院もあるようです。
■ベトナム
日本語を話せる医師が少し増えてきているが、基本ベトナム語対応のところが多い。ハノイやホーチミンでは私立病院で産婦人科医が常勤のところや24時間サービスのところもある。
■韓国
処理院と呼ばれる、産後の疲れた体を癒すための施設があり、24時間体勢で母子ともに専門スタッフがお世話をしてくれるとのこと。
■メキシコ
子どもの多い国なので都市部には産科は多いようです。自然分娩はほとんどなく、無痛分娩か帝王切開から選ぶのが普通。出産したら2日後には退院するとのこと。
※詳細については「世界の医療事情(外務省)」「世界の医療事情(i保険)」もあわせてご覧ください。
相手国の健康保険制度に入る場合を除くと、日本人が海外で出産した場合、基本的にはいったん出産に関わる費用を全額立て替えることになりますし、海外療養費の払い戻しや出産育児一時金が必ず受けられるとは限りません。
渡航先の医療事情も国によりさまざまなので、住んでいる人に詳しいことを聞いてみるなどして、事前にその国の医療事情をよく調べることをおすすめします。
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