井原西鶴の処女作が原作、色男の結末とは
色男、世之介は、さんざん女性と関係をもったあげく、死の間際にあった父親にさる言葉でとどめをさし、手に入った遺産をまた女遊びにつぎ込む。
役所から目をつけられ、居場所がなくなると、「好色丸」なる船に乗り、どこにあるとも知れない「女護が島」を目指して日本を出る、というナンセンスな物語。
けれども観終わったあと、奇妙な感慨がじわじわと湧いてきたから不思議です。
どんなことがあってもへこたれずに女遊びに精進し、最後には女性しかいない島へと旅立つ。
このばかばかしさが、どこか仏の道へと通じているような気さえしてきます。
思わず、偉い、と口をついて出そうになりました。
物語もさることながら、ご注目いただきたいのは、世之介を演じる市川雷蔵の堂に入った演技。
なよっとしていて底なしに軽薄で、ただひたすら女性を崇拝している、そんな男を完璧に演じています。彼以外にこんな役はできないんじゃないでしょうか。『アラビアのロレンス』でロレンス少尉を演じたピーター・オトゥールと同様。
あともうひとつ、増村監督の撮る江戸、特に室内の光や着物の撮り方にご注目ください。
おそらく、他の監督の作品では出会えない光が、本作には満ち満ちています。
■好色一代男
監督:増村保造
主演:市川雷蔵、若尾文子
DVD発売元:角川書店