国家側から見た終戦をドキュメンタリータッチで描く 『日本のいちばん長い日』
■監督岡本喜八
■主演
三船敏郎、山村聡
■DVD発売元
東宝
■おすすめの理由
監督は『独立愚連隊』(59)など戦争アクションを得意とした岡本喜八。
どこかアナーキーな雰囲気を感じさせる監督です。
その彼が、国家の側から見た終戦を、重厚なドキュメンタリータッチで描いています。
ちょっと意外な取り合わせという感じを受けます。
タイトルは、米英中が発したポツダム宣言を受けて、御前会議で降伏を決定した昭和20年8月14日の正午から、ラジオの玉音放送を通じて天皇がポツダム宣言の受諾を国民に知らせる8月15日正午までの24時間を指しています。
この間、どういう形で降伏するのかをめぐって閣僚たちは延々と会議を続けます。
「なにしろ大日本帝国の葬式だからな……」という台詞も吐かれます。
ここは三船敏郎ら東宝が誇る“軍人役者”たちの独壇場です。
その一方、戦争継続を叫び、軍事クーデターを目論む青年将校たちは、終戦を告げる放送をさせてはならじと天皇の言葉を録音したレコード盤を探します。
こちらは若き日の黒沢年男らが狂気を含んだ大熱演を見せます。
東宝はこの映画のヒットを受けて「8.15シリーズ」と銘打ち毎年戦争映画を製作していきますが、ほとんどが国家や軍人から見た戦争という視点で描かれ、一般市民はあまり登場しません。
一方、この映画を撮りながら「何かが違う」と感じた岡本喜八は、国家ではなく一兵士から見た終戦としてATGで『肉弾』(68)を撮りました。
日本人にとって太平洋戦争とはなんだったのかを知る意味でも対で見ることをお薦めします。