自らの理想と現実のはざまに惑いわずらう青年の戦争映画
■監督デイヴィッド・リーン
■主演
ピーター・オトゥール
「アラビアのロレンス」は、毎年アカデミー賞の季節になると、過去の作品をふりかえる企画が映画雑誌でもちあがりますが、その際必ずと言っていいほど大きなページをさいて紹介される、7部門を受賞したディヴィッド・リーンの最高傑作です。
大英帝国の昔から世界中に派兵していた英国ですから、砂漠にも士官はおりまして。
その任地であるエジプトはカイロの砂漠と民を深く愛しつつも、異邦人であるがゆえに仲間になりきれず、自らの理想と現実のはざまに惑いわずらう青年を主人公とした戦争映画、ともいえましょうか。
湾岸戦争や、「アラブの春」を経験した現代人の目からみれば、まるでおとぎ話のように純真な悩みを抱える、青年ロレンス。主演のピーター・オトゥールさんには、この映画以外お目にかかったことがないのですが、いや彼の悩める姿というのは実に絵になります。
水もしたたる正統派美男俳優だからでしょうか?
「もうそんなに泣かないでいいから」なんていいながら、眉間に深く刻まれた皺を指でのばし、そのうなだれる頭をそっと抱えてあげたくなります。
同民族の血で血を洗う抗争であるとか、国と国とのばかばかしいプライドをかけた闘いであるとか。
現代でもそこらじゅうに転がり、当事者にしても同じ世界の住人である我々にしても、解決するためにあがくのが精いっぱいですが。映画でならば悲劇や歴史ドラマとして楽しめる。
わたしはこの映画をみるたびにそう思いますが、あなたはどうでしょうか。