2008年3月3日、東京証券取引所(以下東証)は、J-REITの海外不動産の組み入れについて、5月を目処に可能とする予定であることを発表しました。同日会見した斉藤惇社長は、海外不動産の解禁を認めたことで「上場REIT市場の拡大が見込める」とメリットを強調しました。投資制限緩和で市場拡大を狙うという考えのようです。

~ことの経緯~

 J-REIT・海外不動産投資
J-REITの海外不動産投資解禁!
東証は2001年9月にREIT市場を開設し、これまでに40銘柄が上場しています。しかしその銘柄のすべては、国内不動産のみを投資対象とするもので、海外不動産を投資対象とするものはありませんでした。

国内の上場REITによる海外不動産への投資は法的に制限されていないものの、現実にはこれまで1件も実施されていません(私募ファンドでは米国や欧州の不動産を投資対象と構想しているものもあります)。上場REITが不動産を取得する場合は、国内の関連法規に従って専門家の鑑定評価を実施する必要がありますが、制度や慣習の異なる海外での適正な評価は難しく、実務上のネックになっていました。これは、諸外国の税制をすべて把握することは困難で、REITの投資先が世界各地に及んだ場合、投資家への安全性を東証が担保できないとの理由からです。

分散投資などの観点から、海外不動産の組み入れ解禁を要望する投資家は従来から多かったのですが、これまで東証は、上記のように鑑定評価方法が定まっていないこと等の環境不備を理由にJ-REITの海外不動産への投資を規制していました。一方海外に目を向けると、投資制約のない国が多いことから、海外 REITが日本の不動産へ投資する事例が多く見られました。

このようにアジア諸国など海外の不動産投資市場との競争が厳しさを増すなかで、日本の競争力を維持するために、ついに国側も重い腰を上げざるを得なかったようです。

2007年、国土交通大臣の諮問機関である国土審議会は国内のREITによる海外不動産への投資促進など、不動産投資市場の活性化策をまとめた報告書の作成に入りました。報告書は、国内の不動産鑑定士が現地の専門家と連携して海外不動産を鑑定する場合などを想定し、体制整備のあり方や留意点をガイドラインとして示すよう国に提言するものです。同年7月5日には最終報告書を発表し、国土交通省はこれを受けて、「海外不動産投資鑑定評価ガイドライン」の作成に入っていました。


そしてついに2008年1月、国土交通省は「海外不動産鑑定評価ガイドライン」を完成・発表し、海外不動産の鑑定評価方法を示しました。東証はこのことから、投資家保護の問題も一応クリアするなど環境が整ったと判断し、解禁を決めた模様です。なお、海外投資を行うREITは、海外の投資姿勢・投資方針・運用体制・リスク管理・情報開示等について報告書を提出することが求められます。

今回の規制緩和は、上場REITが高利回りの魅力的な国内不動産を取得することが難しくなってきている状況があるなか、海外の優良物件にも投資対象が増えることにより、ファンド収益に貢献する可能性もあるという点で歓迎すべきことかもしれません。また、サブプライムローン危機にはじまる金融不安で萎縮しっぱなしのREIT市場において、カンフル剤として一役買ってくれるという側面も期待できます。


投資家が注意すべき点は??>>