上の子にイライラしてしまう……「上の子可愛くない症候群」とは?
2人目出産後、上の子が赤ちゃん返りを起こしたり、イヤイヤ期などの反抗期が重なって、可愛いと思えなくなり、イライラしてしまう「上の子可愛くない症候群」とも言われる現象が起きがちです。子どもが最も安心して過ごせる家庭の場で、親が兄弟を同じように愛せないという気持ちになってしまった場合、どうしたらよいでしょうか。
兄弟差別を受けた子どもに与える影響、兄弟の葛藤について知った上で、兄弟育児で大切にしたいこと、認め合える兄弟関係を育むために親が心がけたいことについて解説します。
<目次>
生まれた順・性差・相性などの違いによる兄弟での愛情差発生
生まれた順、性差、親子の相性などの違いで生じる、兄弟での愛情差
生まれた順、性差、親子の相性などの違いにより、兄弟で愛情の感じ方に差が生じてくることは当然あるでしょう。
「ご飯よ」と声をかけても、いつまでもだらだらとテレビを見ている、きちんと片づけられない、忘れ物をよくするなど、なぜかイライラするのは同じ子に対してばかり。わが子なのに兄弟を同じように愛せない自分を責めたり、深まる親子の溝に悩みます。
立場を変えて、子どもの目線から家庭の風景を眺めてみましょう。自分では同じことをしているつもりでも、いつも叱られて「自分は親に愛されていない」と感じながら成長することになります。大好きなママがいつも他の兄弟姉妹を可愛がる風景。その辛さや悲しい気持ちをうまく言葉に表現できない子どもは、涙であったり、寡黙であったり、もしくは反抗という形で表してくるかもしれません。
▽参考記事
兄弟・姉妹を同じように愛せない!悩むママへの処方箋
2人目出産後に起きがちなイライラ「上の子可愛くない症候群」
下の子が生まれたら、急に困った言動ばかりの上の子にイライラ……
上の子は、赤ちゃんに逆戻りしたかのように甘えて自己主張をし、親の気を引こうとします。下の子の誕生とともに自分との関わりがグッと減ったことに「ママは自分のことを嫌いになったの?」と大きな不安を抱き、赤ちゃん返りや反抗をして、親の気持ちを取り戻そうとし、愛情を確かめてきます。
一方で親は、下の子が生まれて家事育児が忙しく、上の子に対して「少しでも手伝って欲しい」「できるだけ手を煩わせないで欲しい」と思うことでしょう。そんな中で、親を困らせる言動を繰り返す上の子にイライラし、「上の子も下の子も同じように愛している」「兄弟姉妹同じように接しよう」と思っているにも関わらず、きつい言葉をかけることが増えているかもしれません。
親の気持ちを取り戻そうとしている上の子は、ますます親に素直に甘えることができなくなり、親は上の子が更に可愛くなくなる……という悪循環に陥ってしまいます。
▽参考記事
親に甘えられない長男・長女…子供の複雑な胸の内とは
赤ちゃん返りとは? 原因・症状
赤ちゃん返りの症状は、子どもの「ママ! ぼくを見て!」という心の叫び
上の子は、今まで周囲の注目を一身に受けていたのに、弟や妹が誕生して、急に周りの大人の関心が赤ちゃんに向けられてしまいます。親は赤ちゃんのお世話で、上の子との関わりはグッと減ってしまうでしょう。上の子にとっては、大きな環境の変化で、一大事です。
子どもは、大人に世話をされて育つ必要があります。それまで自分に向けられていた「養育」や「関心」がほかの子ども=下の子に移ったのを敏感に感じ取り、親の気持ちを再び自分に向けさせようと、反抗したり、わざと困らせる態度を取ったりするなど、それまでとは顕著に異なる行動に出るわけです。それは、上の子の防衛本能ともいえるでしょう。
赤ちゃん返りには、おもらしが増える、オムツをしたがる、夜泣きする、赤ちゃん言葉を話すようになる、赤ちゃんに対して乱暴をする、なにかイライラしているように見える、どもる……などの症状が現れます。このような赤ちゃん返りの症状は、いずれも子どもの「ママ! ぼく(わたし)を見て!」という心の叫びなのです。
赤ちゃん返りは、日本だけでなく世界共通の現象で、乳幼児の発達心理でも、「Sibling Rivalry(きょうだい間競争)」などと呼びます。周囲の大人が、より手のかかる赤ちゃんへと移るのも当たり前、上の子がそのことに怒りを感じるのも当たり前、これはごく自然なことです。
▽参考記事
「上の子可愛くない」甘え下手な上の子の心理と対応法
「赤ちゃん返り」の症状と上の子が安心する上手な対応
悶々!上の子がかわいく思えない!
下の子誕生! 上の子の気持ち・上の子が抱えがちな不満
下の子の誕生で心が揺れるのは、幼児期の子どもに限ったことではありません
上の子が1~3歳の場合、親に「かまってほしい。こっちを向いてほしい」というただ一つの理由で、母乳やミルクを飲みたがる、すぐに泣く、などの典型的な「赤ちゃん返り」の症状が現れますが、保育園や幼稚園に通っている4~5歳にもなると、家族以外との世界で過ごす時間も増え、気持ちの発散もできるようになっていきます。逆にそこで親の方が安心してしまい、子どもが抱えている気持ちに気付きにくくなるということもあります。上の子が小学校低学年なら、親としても「もう小学生だから」と、家庭環境の変化をある程度理解して振舞ってくれることを期待しますが、実際はまだまだ甘えたい気持ちをたくさん抱えている年頃です。
兄弟の順番でも、いつも怒られるのは自分ばかりと感じている上の子は、自分が怒られるのを観察して、立ち回りが上手な下の子を「ずるい」と思っていたりもします。上にも下にもきょうだいがいる子は、親から最も放っておかれがち。そのぶん自由で気楽でもありますが、注目されにくく、時と場合によって上の子扱いされたり下の子扱いされたりするので、そこに不満を抱くことも。
年代、置かれた状況は違っても、赤ちゃんを迎えたことで家族間のバランスが変わり、自分の役割も大きく変化しつつあることを敏感に感じている点は、一緒なのです。
▽参考記事
生まれ順による兄弟姉妹の違いと対応法
【年代別】赤ちゃんを迎えた上の子の揺れる気持ち
兄弟喧嘩の仲裁で親が上の子にやりがちNG言動!
兄弟が同性の場合は、なおさら比較することに注意が必要
兄弟が同性の場合は、なおさら比較することに注意が必要です。「お兄ちゃんなのに負けるなんて……」そんなことは言われなくても、年が上である兄が弟に負けることはそれだけで辛いわけですから、さらに親に追い討ちをかけられることが、どれほど子どもの心を傷つけることになることでしょう。
大怪我に進展しそうで、喧嘩の仲裁に入る場合、平等に2人の話を聞くこと。そして、感情が高まって、自分の言いたいことを冷静に伝えられない子ども達に代わって、子どもたちの思いを相手に伝えてあげましょう。
兄弟喧嘩に過度な干渉は禁物ですが、どうにも見ていて喧嘩が収まりそうにないときは、親は冷静に、兄弟のどちらかを一方的に叱ったり、兄弟を比べたり子どもを突き放してしまうような叱り方は避けましょう。
▽参考記事
兄弟喧嘩に対する正しい親の対応は?悩みのタネを解消
上の子へのストレス・可愛いと思えない気持ちへの対処法
可愛かった上の子が、下の子が生まれた頃から、だんだん可愛くなくなってきた……甘え上手な下の子に対し、甘え下手な上の子、いつの間にか、その差はどんどん広がってしまう、そのように感じることはないでしょうか。「上の子も、下の子も同じように愛している」「兄弟姉妹同じように接しよう」と思っているにも関わらず、親を困らせる言動を繰り返す上の子にイライラしてしまう自分を責めることもあるでしょう。悩むということは、「同じように愛そう」と思っているからで、それだけでも上の子に対して愛情はあるということです。「兄弟、姉妹同じように好きになれない」という気持ちは、少しくらいあっても当然のこと。まずは、自分の心に率直に向きあい、努力している自分自身をまずは認めましょう。
下の子が出来て、上の子が赤ちゃん返りしたり、反抗的になったりするのは、それまでの親子関係が上手くいっている証拠でもあります。子どもに「ママを困らせても、きっと受け入れてくれるだろう」というある程度の信頼感があるからこその言動なのです。そして一見、甘え下手にも感じる上の子の心の内は「ママへの信頼」に、「ゆらぎ」「確かめ」「取り戻そうとする思考錯誤」が複雑に絡まって、懸命に生きています。そう思うと、上の子の甘え下手も愛おしく感じますね。
素直に自分の気持ちに向き合い、子どもたちを同じように愛そうと努力する気持ちがあれば、大丈夫です。子どもたちは、同じように皆、ママのことが大好きです。
▽参考記事
兄弟・姉妹を同じように愛せない!悩むママへの処方箋
「上の子可愛くない」甘え下手な上の子の心理と対応法
認め合える兄弟・姉妹関係を育むために親が気を付けること
認め合える兄弟・姉妹関係を築くために重要なのは、親の向き合い方
何人兄弟の何番目に生まれたかは、自分にはどうすることもできない事実。それに加えて、兄弟と比較されては、たまったものではありません。足が速い遅い、背が高い低い、勉強ができるできないなど、深い意味はなく、つい口にしてしまう兄弟を比較する言葉。「お兄ちゃんはできるのにあなたはできない」「妹の方が生活態度が落ち着いていると先生が言っていた」などという直接的な言葉は、親が兄弟同士の仲を悪くしているようなものなのかもしれません。
例えば「(器用ではないけど)根気がある」「(素早くはないけど)慎重に行動できる」など、兄弟との比較ではなく、その子自身が持つ魅力をしっかり見て、本人に伝えてあげましょう。
同じわが子、兄弟という間柄であっても、様々な個性を持つ別の人間。そもそも、平等に接するなんて無理なのに、親は兄弟間で「同じようにやってきたのに」と思いがちです。子どもたちにとって本当に嬉しいのは、「平等に」されることよりも、自分の持つ個性や自分自身を認められること。自分自身の個性を認めてもらえていると感じられると、他の兄弟のことも認められるようになっていくのではないでしょうか。
▽参考記事
認め合える兄弟・姉妹関係を育むために親がすべき事
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