最近の商品企画のトレンドとして注目されるのが、メーカーではなくマンションディベロッパーの主導で、キッチンや洗面台などの商品開発が行われている点です。
このたび、分譲マンションの供給大手である三菱地所レジデンスが、顧客の声を活かした商品開発の体制強化のために、ユーザーの声を試作品として形にし、各種の分析・検討を行う拠点となる「EYE’S PLUS LAB(アイズプラスラボ)」を赤坂に開設しました。同施設のレポートと、商品開発の流れを紹介します。
顧客の目線にプロの視点を加え新たな価値をプラス
直接的なコミュニケーションを軸にモノづくりを
同社が提示している「EYE’S PLUS」とは顧客の目線に、プロの視点を加えて「新たな価値をプラス」していく三菱地所レジデンスのものづくりの取り組みです。直接的なコミュニケーションの結果を具体的に商品に反映させ、開発プロセスを可視化し、「EYE’S PLUS LAB(アイズプラスラボ)」に試作品や完成品を展示、検証・改良していきます。この場所では、座談会などでも意見を吸収していきます。商品開発の第一弾として、キッチンの完成形が公開されています。商品開発に際し、同社ではアンケート、グループインタビュー、「スマイラボ」(顧客の意見を募集する同社運営のサイト)のコミュニケーション、同社の顧客接点を持つ部署や社員の意見をもとに、同社の新商品「EYE’S PLUS KITCHEN」が完成しました。
まず第一のステップがWEBと街頭でのアンケートです。「シンクまわりの形状の理想」の項目では、立ち上がり+カウンター(お皿も置ける)が45.92%の支持を受けました。ここから手元が隠せる立ち上がりのニーズが高いことを把握しています。
「足りないと思うスペース」では、食品庫などの収納量にニーズが多くありました。また、「食洗機があればシンクより作業スペースがほしい」の質問では同意する意見が半数を超え作業スペースのニーズの高さをリサーチしています。
このニーズから試作品をつくりグループインタビューや、WEB上でのアンケートでさらに6つの項目で検証を行い商品開発につなげています。
実際に展示されているキッチンを見ると、マンションで標準的な横幅2400mmの広さに対し、シンクとコンロの間の作業スペースがとても広く確保されています。これは、アンケート結果に基づきシンクを通常サイズよりも狭めることで広くなっています。位置を中央にしているのもユーザーアンケートを反映してのものです。
立ち上げ部分の高さは、小さいまな板が収まるように約23cmで設定しています。また、シンクまわりのものが収納しやすい取り外し可能なラックの設置や、開放感と収納確保の両立を考え吊戸を一つにする、シンク下の収納は開き戸にするなどもアンケートの結果を参考にしています。
また、同所ではキッチンについては25%超のニーズのあったフラットカウンターのものも含め4タイプ展示しています。複数の商品を比較することで、意見も出しやすくなると思います。
カラースキム、ユニットバスなども開発予定
お客様の目線+プロの視点のプロセスが重要
「EYE’S PLUS LAB(アイズプラスラボ)」では、さらに洗面化粧台や浴室、カラースキムなどの試作品も展示しています。こうした試作品も今後新商品発表につなげていく考えです。かつて某ディベロッパーの商品開発担当の方から、ユーザーへのインタビューで漠然と理想の住まいを聞いてもなかなか商品開発につながらないといった話を聞いたことがあります。一般の方が自分の思うニーズを形にして、具体的な長さや形状を示すことは難しいのでしょう。そういう視点で考えると、今後のマンションの商品開発において、どういうプロセスで商品開発を行っていくかはとても重要です。
三菱地所レジデンスの「EYE’S PLUS LAB(アイズプラスラボ)」は、顧客の意見をより具体的に吸い上げる場だけでなく、商品開発の担当者と顧客の接点をとりもつことも可能です。顧客の目線とプロの視点でのモノづくり。注目していきたいと思います。