雨の日の鬱陶しさを忘れさせてくれる『はっぱのおうち』
さわやかで過ごしやすい季節はあっという間に過ぎ、じめじめした梅雨がやってきました。外遊びができないこの季節は、お子さんのストレスもたまりがちですね。こんな時は、おうちでのんびり絵本を楽しんでみませんか。透明感のある絵とその絵の中の秘密の仕掛けが、雨の日の鬱陶しさを忘れさせてくれる……そんな絵本をご紹介します。絵だけが語る、愉快な「サイド・ストーリー」を見つけよう
少女がしろつめ草を摘んでいます。少女の名はさち、水玉模様のエプロンドレスが良く似合う女の子です。すると、雨がぽつんと降ってきました。でも平気です。さちには雨宿りできる特別なおうちがあるのですから。それは、葉っぱの屋根がある小さなおうちでした。そのおうちには、雨が強くなるにつれて、かまきりやてんとう虫、アリなどたくさんのお客さんが雨宿りにやって来ました。その小さな虫たちとさちとの楽しい交流のひとときが、チャーミングに描かれていきます。まるで秘密基地のようなおうちを舞台にした優しいストーリーは、それだけでも子どもたちのお気に入りになることでしょう。でも、この絵本には、他にも特別なお楽しみが用意されています。それは、文章ではなく絵によってのみ語られる「サイド・ストーリー」です。
例えば、さちが摘んでいたしろつめ草は、いつの間にか編まれて輪になり、小さなブレスレットが出来上がっています。また、さりげなく描かれているクモの巣は、時間の経過とともに雨のしずくが大きくなって、キラキラと輝きを増していきます。他にも、文章では語られない生き物がいくつも登場して、愉快な「サイド・ストーリー」を見せてくれます。
きっと1度や2度読んだだけでは、そのすべてを見つけることはできないでしょう。読むたびに新しい発見があり、発見するたびに、ページを行ったり来たりしながら、語られてはいないストーリーを読みとっていく。『はっぱのおうち』は、そんな楽しい読み方ができる作品です。どうぞお子さんとご一緒に、雨音を聞きながら、絵本を開いてみてください。
【書籍データ】
征矢清:作 林明子:絵
価格:840円
発売日:1989/5/25
出版社:福音館書店
推奨年齢:2歳くらいから
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