タイプA?

何かの折に言葉を荒げて、あとで後悔といったような場合、自分をちょっと罰してみる、例えば、その日はお気に入りのオヤツをあきらめるといったやり方も、人によっては効果的な対策になります

「怒りは敵と思え」とは、江戸幕府を開いた徳川家康が残した言葉だと伝わっていますが、時に、この言葉が身につまされるような時があるかも。

例えば、些細な事で言葉を荒げてしまい、あとで、ひどく後悔。あるいは、誰かのちょっとした物言いや仕草に自分のプライドがひどく傷ついてしまい、もしも何か仕返ししたい気持ちに駆られたら大変。その場の人間関係がかなり悪化してしまうだけでなく、自分自身の心身の健康を負のスパイラルに入りこませてしまう可能性もあります。

今回は、思わずカッとなってしまうような心的反応や、何か仕返ししたい、といった攻撃的感情に上手に折り合いを付けるためのヒントを精神医学的観点から詳しく解説いたします。

日常のフラストレーションは大きくなっていませんか?

何かの折に、たとえ、ひどく気持ちを荒げてしまっても、一概にNGとは言えない面もあるもの。それには人間の本能の一部と見なせる面もあり、もしも、あまりに理不尽な事態に直面したら、自分の気持ちを爆発させるように表出したとしても、場合によっては、それが、その場にふさわしい反応であるかも。

とはいえ、通常の日常的な状況で、もしも自分の気持ちを、以前の自分では考えられないほど、抑え難くなっている場合、まずは、自分がそうなっているという事態と、それが引き起こしている問題は正確に把握しておきたいもの。

原因は意外とはっきりしない事もあるでしょうが、何といっても、日常のストレスは大きな要因。例えば、連日、仕事のノルマが山のようで、心身がバテているところに、他人のちょっとした言動がグサリと心に刺さってしまう。あるいは、家庭で家族関係が思わしくなく、仕事が終わったあとも、あまり家に帰りたくない……といった事態に、もしもなっていたら、心の辛さが何かに向かってしまうかも。

もっとも原因がこのようにはっきりしている場合、その原因には正面から向き合っていきたいもの。上記の例でも、絶対にこなさなくてはいけない事は、真っ先にして、できるだけ気持ちを楽にする。あるいは、家族関係に黄色信号がともっている人は、青色に戻るように家族サービスが必要だ……といった事は、落ち着いて考えてみれば、すぐ気付く事だろうと思います。是非、自分をゆっくり見つめ直す時間は、どんなに忙しくても作っておきましょう。

怒りは心身を戦闘モードに変化させる

カッとなる事を、「頭に血が上る」などと言いますが、実際、体内の副腎から血中にアドレナリンが分泌され、心身は戦闘モードに入ります。呼吸は早く浅くなり、また、心拍数は上がり、血圧が上昇し、体の隅々まで酸素が充分、行き届くようになります。

言わば、心身は何らかの闘争ができる状態に変化した訳ですが、この厳しい社会を生き抜くうえで、時に広義な意味での闘争は必要になるもの。実際、闘争心は物事を成し遂げる有力な原動力。しかし、いつも心が戦闘モードでは、心身に慢性的に負荷が掛かります。

特に、ご注意して頂きたいのは、いわゆる「タイプA」の方。エネルギッシュで競争心が強く、自分の思い通りにならないと、カッとしやすい戦士的なパーソナリティは、世渡りの大きな武器となり得ますが、心身が常に緊張状態にあるという事は、体の内分泌系に慢性的に負荷を掛けてしまい、高血圧、ひいては心筋梗塞など心血管系の疾患リスクを高めてしまいます。

人生は長期戦である以上、心身に掛かる慢性的な負荷は、できるだけ軽減しておきたいもの。もしも最近、カッとなりやすい自分を自覚されていて、さらに健康診断で自分の血圧にショックを受けたなんて事がありましたら、心身に掛かっている負荷をゆるめるべく、日常生活を時には意識的にスローダウンする事も是非、ご考慮してみてください。

怒りを抑えられる自分になるヒント

最近、ちょっとした事で腹が立ちやすくなっていても、自分の周りをよく見渡してみれば、不思議な事に、おだやかな物腰で、そつなく自分の役目をこなしている人がいるもの。もしも、こうした手本となり得る人物にしっかり気付けば、言わば、ゴールは見えたようなもの。その人を目標に、見習える点は、どんどん取り入れていきたいところです。

その際、日常のストレス対策は不可欠。その基本は、いささか単純に聞こえそうですが、睡眠時間を十分、確保して、栄養のバランスの取れた食事で心身のコンディショニングを整えていく事。そして、気の合った仲間同士のおしゃべり、あるいはジョギングなどの有酸素運動といったように、個人個人に合ったやり方で適宜、ストレスを発散させていく事が望ましいです。

とはいえ、心を穏やかにするつもりで、ストレスを発散させていても、時には、それが逆効果になっている場合もある事には要注意。例えば、ある人は、やり場のない怒りを覚えると、家に帰ってから、筋トレに励む事にしているとします。もちろん、それで気持ちが穏やかになれる人はなれますが、場合によっては、何十回も腕立てふせをしていくうちに、かえって闘志が出てきたなんて事もあり得ますので、ご自分のストレス発散法は適宜、見直していきたいものです。

場合によっては脳内環境が病的になっている可能性も

最近、怒りっぽくなった、あるいは、ちょっとした事でキレやすくなっていても、通常は、その原因である日常の問題が解決できれば、元の自分に戻れるもの。とはいえ、こうした症状は場合によっては、脳内環境が病的になってしまった事を反映している可能性もあります。

実際、さまざまな心の病気の症状、あるいは前駆症状として、それまでとは人が変わってしまったかのように、怒りっぽい人になってしまうケースもあります。例えば、怒りっぽくなってしまった背景には実は、うつ病で脳内環境が病的になっていた。あるいは場合によっては、アルツハイマー型認知症の初期症状である事もあります。

脳内環境が病的になってしまったか否かを判断する上での重要な目安は、症状の深刻度と、その持続期間です。もしも、怒りっぽい人になってしまっただけでなく、日常生活に何らかの深刻な困難が生じている場合、例えば、以前なら難なくこなせた仕事のノルマが非常に厳しく感じられる、あるいは、家庭や職場で人間関係上のトラブルが絶えない……といったような場合、その背景には、うつ病など心の病気で脳内環境が病的になっており、精神科(神経科)受診が望ましい可能性もある事には是非、ご注意ください。
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