ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

六本木に新劇場!こけら落し『カフェ・イン』レポート

先月末、六本木に「アミューズ・ミュージカルシアター」がオープンしました。日本のミュージカル文化をもっと身近なものとするべく、アジアの良質なコンテンツが続々紹介される予定ですが、こけら落としに選ばれたのは、「ソウルのオフ・ブロードウェイ」ことテハンノ発のヒット作『カフェ・イン』。5月19日まで上演される本作の開幕レポートを、主演俳優、キム・ドヒョンさんへのミニ・インタビューを交えつつ、お届けします!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

ソウル発、男女の等身大の恋を小粋に描く『カフェ・イン』

『カフェ・イン』 (C)AMT

『カフェ・イン』 (C)AMT

舞台は小粋なカフェ。マネージャー兼バリスタのセジンは恋愛運が悪く、つきあう男性にふられてばかり。お店の掲示板に「愛なんて嘘」と書き込んでは憂さを晴らしているのですが、そんなある日、新たに夜間のマネジャーとなったソムリエのジミンが、掲示板の「愛なんて嘘」に「時には」といたずら書き。互いに出会うことのないまま、二人は連日、掲示板で正反対の恋愛論を戦わせます。

相手をからかってみようと思ったジミンは、カフェのお客になりすまして早朝に店を訪れますが、意外にも好意を抱き、急接近。何も知らないセジンは、夜にはダサい容姿に変装するジミンに「恋のコーチ」を頼みます。しばらくはうまくいくものの、やがてジミンの嘘がばれることになり…。

『カフェ・イン』 (C)AMT

『カフェ・イン』 (C)AMT

笑いと涙をふんだんに盛り込みながら、恋愛下手の女性と自称・モテ男が本当の恋に気づくまでを描いた舞台は、てきぱきとした流れで、100分があっという間。恋をコーヒーやワインに例えた歌詞も簡潔ながらお洒落で、恋をしたことのある人なら、どこかで「そうそう」と共感できることでしょう。台本・作詞・演出を手掛けたのはソン・ジェジュン、作曲はキム・ヘヨン。二人ともまだ30代半ばという若さで、今後が嘱望されます。

そして、二人っきりの芝居だと気づく間もなく、観客を舞台に引き込むのが、出演者のユン・コンジュとキム・ドヒョン。コンジュさんはこれまでに『ラ・マンチャの男』アルドンサ、『レント』のミミなどを演じ、現地のミュージカル大賞で何度も人気スター賞を獲得している人気女優とあって、なめらかな歌声は安定感抜群。またドヒョンさんは『王になった男』『笑の大学』などストレートプレイにも多数主演する俳優で、そののびやかな声とともに、大人の男の色気ふんぷん、余裕ある演技が素敵です。

この二人にかわり、6日からは『壁抜け男』『風月主』などで多彩な役どころを演じ分けるク・ウォンヨン、ミュージカル版『冬のソナタ』でジュンサンを演じたイ・スが出演。前キャストとはまた違ったフレイバーで、この薫り高いミュージカルを見せてくれそうです。

アミューズ・ミュージカルシアターundefined(C)AMT

アミューズ・ミュージカルシアター (C)AMT

劇場は今後もアジアの良質なコンテンツを紹介してゆく方針ですが、ミュージカルに関しては韓国が突出しているということで、本作、『シングルズ』『風月主』…としばらくは韓国発の作品が続きます。これまで、韓国ミュージカル公演は翻訳ミュージカルでの来日が多かったのですが、ここでは韓国のオフブロードウェイ、テハンノ発の作品が続々登場。大がかりではなくとも、現地の若い才能たちの意欲溢れる舞台に触れられる、絶好の機会となりそうです。

主演俳優キム・ドヒョン ミニ・インタビュー

キム・ドヒョンundefinedAMT

キム・ドヒョン AMT

公演前半のキャストとして、ジミンを魅力的に演じたドヒョンさん。お時間のない中、快くインタビューを受けてくれました。

――今回のジミン役をどんな男性ととらえ、演じていらっしゃいましたか?
「ジミンは、豪快で、友達が沢山いて、いつもその中心にいるような存在。そして、女性には手は早いが、決して悪い人ではないので、女性が気軽に付き合い易い男性。また、経済的に豊かで育ちがよく、ゆとりある人生を送っている。ユーモアもあって、世の中を常に前向きに、明るく見ているような人物です。
また、ダサい男に扮装した時のジミンは、例えば5人姉妹など大人数の女性の中で育ったような、女性というものをよく分かっている男の子ととらえています。
いっぽう、彼がセジンをからかうために現れるジョンミンは、歌詞でセジンが歌っているとおり、全ての女性の理想像だと思います」

――様々な作品に出演されているようですが、ミュージカルはどのように修業されたのでしょうか?
「はじめはストレートプレイの世界だけで活動していました。お芝居には、決してミュージカルでは表現出来ない奥深さがあると信じ、それを追求してきたからです。
そんなある日、あるミュージカルのとあるナンバーに衝撃を受け、ミュージカル俳優を目指す事を決意。オーディションを受けては落ちるという日々が続きました。
そこで役者を休業し、アルバイトで生計を立てながらボイストレーニングを受けました。2年後、ついにオーディションに合格し、ミュージカル俳優の道に進むことが出来ました。
その作品こそが、自分をミュージカルという新しい表現の世界に導いてくれた『ジキルとハイド』です。
この作品で2006年には来日公演(韓国版)にも参加することが出来ました」

――日本の観客はいかがですか?
「韓国のミュージカルファンは20代から40代を中心に、とてもマニアックなお客様が主流となっています。
一方、今回、アミューズ・ミュージカルシアターで演じてみて、日本のお客様の幅の広さに驚きました。年配の方から小さいお子さんまで、皆さんとても真剣に作品と向き合って下さっていたので、演者としてとても演じ甲斐があり、手ごたえを感じました」

――どんな役者を目指していらっしゃいますか? 今後出てみたい作品などありますか?
「目指す役者像は、いつも観客と向き合うことの出来る俳優です。
作品を問わず、観客の存在の大切さを忘れずに演じていきたいです」

実はドヒョンさん、アミューズ・ミュージカルシアターの今後の上演作品で、再度来日する可能性もあるそうです。役者としての誠実なスタンスを忘れない彼が、別の作品でどんな姿を見せてくれるか、楽しみですね!

*公演情報*『カフェ・イン 愛は偽り?!』上演中~2013年5月19日まで アミューズ・ミュージカルシアター http://www.amuse-musical-theatre.jp/ 公演中は毎日、多少観づらい席の当日券が、枚数限定の「テハンノシート」として1枚3000円で売り出されます。一度韓国ミュージカルを観てみたいけど予算が…という方、まずはこちらでお試しになってみては?

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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