MRI社にとうとう捜査のメスが
4月26日、金融庁が米国の資産運用会社であるMRI社の業者登録を抹消するとともに、証券取引等監視委員会の捜査が入るという報道が流れました。アメリカの医療保険請求債権を運用対象とした「MARS(マース)投資」で日本人顧客から集めた資金は総額1300億円超。少なくとも2011年以降は、集めた資金を他の投資家の配当支払いなどに流用する「自転車操業」が行われていたとされており、今後の進展が注目されます。
今日から3回にわたって、MRI事件から私たちは何を学ぶべきなのかという点について、考えてみたいと思います。
日本上陸当初から怪しい点がいくつもあった
MRI社が日本に上陸したのは1998年のことです。当時、都内の一流ホテルで同社の記者会見があり、筆者もそこに参加したことがあります。この時、いくつかの疑問点がわきました。1. 「投資信託」と称しているが、商品性格上それは該当しないのではないか
2. どうして円建てと米ドル建ての利率が同じなのか
3. 「元本保証」という触れ込みは出資法に抵触するのではないか
4. なぜ日本でのみ販売するのか
早速、記者会見が行われた後日、同社役員に対するインタビューの約束を取り付け、疑問点について2時間ほど詳しく説明を求めました。
彼らが言うには、まず1と3については、「国外の運用会社なので、日本の法律は適用されない」。2については、「当社には独自のノウハウがある」。4については「日本は豊かな個人金融資産があるが、低金利で運用難に陥っている。それを解決する手段を提示したい」というのが、彼らの言い分でした。
もう、これだけで十分に怪しいですよね。恐らく、彼らはこの指摘に対して、「マズイ」と思ったらしく、しばらくすると「投資信託」という名称は使わなくなりましたし、「元本保証」は「元本確保」という言い方に切り替えられていました。
でも、それでもこの商品の怪しさが無くなったわけではありません。さらに詳しく取材をしていくと、英語で表記された「投資証書」(つまり本券です)の綴りにスペルミスが確認されたこと、「バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)」と提携しているという明らかな嘘をパンフレットに明記していたことなど、さらにおかしな点が出てきました。この金融商品の価値を表象している投資証書にスペルミスがあるなどということは、どう考えてもあり得ないミスですし、パンフレットに嘘を書くことなど許されるはずもありません。
ましてや同社は、日本支社を設けて、積極的に営業活動を展開していました。日本人が海外で口座を作り、そこで海外の金融商品を購入するというのは、個人の自由ですが、MRI社のように日本支社を設けて営業活動を行うとなったら話は別です。当然、日本の法律に準拠して営業活動をしなければなりません。もちろん「投資信託」の名称を使うことは許されませんし、元本保証を標榜した時点で出資法違反に問われます。
そして、円建ても米ドル建ても同じ利率という点は、どう考えても成立しない話です。もし為替ヘッジをかけているとしたら、円建てと米ドルの利率が同じなどということはありません。半分冗談のつもりで、「当社のノウハウです」というのは、ひょっとしたら相場を取りにいくという意味なのかということを問いただすと、「それもあり得ます」という答え。
ちなみに、この時の取材ではMRI社の幹部が勢ぞろいしていたので、それぞれの経歴を確認してみたのですが、金融ビジネスに深く関わっていた人は、ほとんどいませんでした。それで為替について「当社のノウハウで……」などと言われても、信ぴょう性のカケラもありません。
こうした実例からも分かるように、MRI社の「医療保険請求債権」という商品は、最初から疑問点だらけの真っ黒な商品だったのです。
(「MARS投資のMRI事件から学ぶべきこと (2)」へ続く)
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