ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

『スウィーニー・トッド』を熱く語ろう!(2ページ目)

ティム・バートン監督ジョニー・デップ主演の映画の下敷きとなった作品。ブラック&ホラーなストーリーなのに、おかしくて笑えちゃうし、切なくて泣けちゃったりもするから、人間の気持ちって不思議。スティーヴン・ソンドハイムの魔法を体感しつつ、思い切り感情を揺り動かしてみて!

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

ミュージカルガイド


音楽も物語も激しくスリリング!

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悪巧みしてるのに楽しくなっちゃって…

いや~、なんたる高いハードル!スリリング!物語も充分ドキドキハラハラだけど、音楽のこの丸く収められない感は尋常じゃないです。
ソンドハイムは日本だと曲の難しさに焦点を当てられがちな気がしますが、作詞・作曲両方を手掛けているので詞の面白さにもぜひ注目してみてください。1幕ラスト、死体をパイにしちゃえば…とミセス・ラヴェットが思いつくナンバー「牧師はいかが」は、こんな職業の人はこんな味(文字にするとアンモラルで恐縮ですが)と、ブラックでシニカルさ満載、ぞっとしつつもたまらない可笑しさです。

人間ドラマを音符で描く、天才ソンドハイム

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スウィーニー・トッド役の市村正親さんはダンディ。

ではなぜここまで音楽が複雑になったのかというと、ソンドハイムは音楽じゃなくて、人間ドラマを描きたかったからだろうと思います。舞台上で映画のような臨場感を人間の内面でさまざまに揺れ動く感情を、譜面に表したらこうなった。考えてみれば、人と人のやりとりや気分って、いつもきれいに共鳴するわけではないですよね。同じことしていても違うこと考えていたり、そつなく会話していても心の中は疑心暗鬼だったり。きれいごとじゃなく、リアルな人間を丸ごと描こうとした結果が、この作品なのかなとも思います。

興味深いことに、ソンドハイム自身、『スウィーニー・トッド』は映画『戦慄の調べ』(1945)とその音楽を手掛けたバーナード・ハーマン(作曲家。ヒッチコック映画の音楽で知られる)へのトリビュート作品だと記しています。『戦慄の調べ』は不協和音を聞くと凶暴な発作を起こすクラシックの作曲家を主人公としたサイコスリラーで、音楽が強烈に素晴らしい。少年時代のソンドハイムに大きな影響を与えた音楽のひとつでもあります。

演技派キャストが舞台上で火花を散らす

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ミセス・ラヴェット役の大竹しのぶさんはキュート。

そんなソンドハイムの意図通りか、『スウィーニー・トッド』には演技派のキャストが集結。市村正親さんがトッド、大竹しのぶさんがミセス・ラヴェットと聞いただけで、熱い火花が散るのは必須。私たちを別世界に連れて行ってくれます。

演出は宮本亜門さん。ソンドハイムと交流があり、芝居をとても大切になさる演出家です。亜門さんは「とにかく『スウィーニー・トッド』という作品が好き!大好き!」と、熱い思い入れを持っていらっしゃいますから、一層進化したドラマを見せてくれるはず。

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トバイアス役の武田真治さん。純真でいたいけ。

武田真治さんは純粋な少年トバイアス役で、初演でも評価が高かったはまり役。新しいキャスト、柿澤勇人さんと高畑充希ちゃんは、フレッシュで甘酸っぱく、どこか危うささえ感じさせてくれるカップル。芳本美代子さんは、乞食女という今までにない役どころで魅せてくれます。

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