妊娠の基礎知識/妊娠の基礎知識

40代の不妊治療は無駄なの?(3ページ目)

本当のところ、40代の妊娠力はどの程度なのでしょうか? 厚労省の研究班は「40代の体外受精は有効性が低く危険でもある」と報告しましたが、そこをじっくりと検証しました。

河合 蘭

執筆者:河合 蘭

妊娠・出産ガイド

 

体外受精で出産できる率は、40歳なら5人に1人、43歳なら20人に1人、45歳なら50人に1人くらい

海で抱っこ

体外受精で出産できるのは、40歳なら5人に1人、45歳なら50人に1人。

研究班が参照した主なデータは、国内で体外受精をおこなっている全施設の報告から求めた「1回あたりの平均値」です。

【40代の体外受精 1回あたりの出産率 全国平均】
(日本産科婦人科学会2010年実施分)
 
  • 40歳 7.7%
  • 41歳 5.3%
  • 42歳 3.7%
  • 43歳 2.0%
  • 44歳 1.3%
  • 45歳 0.6%
  • 46歳 0.3%
  • 47歳 0.1%
ただし、これは体外受精を1回だけ実施した時のデータであって、それぞれの年齢の人が最終的に何%妊娠したかを示すものではありません。

体外受精は、1回で妊娠できなければ繰り返すのが普通です。実際には、初回よりは低率となるものの、2回目、3回目で妊娠する人もたくさんいます。

ただし、体外受精で妊娠する人の大半は3回以内で妊娠します。この段階で妊娠しないと難しいケースかもしれない、と考え始めなければなりません。4回目以降の出産率は大きく下がり、それ以降はさまざまな報告があるものの大体6回以降の妊娠はかなり少ないと考えられています。

このことから、体外受精に進んだ人の累積の出産率(最終的に出産できた率)は1回あたりの出産率の2~3倍であると仮定してみましょう。すると、1回で7.7%妊娠する40歳の人が最終的に妊娠できる率はほぼ2割くらい、つまり約5人に1人というところでしょうか。

同様にもっと上の年齢も見て行くと、42歳の体外受精では最終的に出産するのは十数人に1人程度、43歳の体外受精では20人に1人くらいになります。これより上の年齢になると、さすがに治療をする人も少なくなります。でも一部の人は40代半ばでも治療をしますが、出産できる率は、45歳では50人中1人くらいになります。
 

40代全体では、妊娠できる人は1割強

厚労省研究班の報告書では、 国立成育医療研究センターで体外受精をおこなった40代の患者さん全体について、累積出産率が示されていました。それによると、全部で48人の40代女性が体外受精を受けていて、そのうち6人が何回目かの体外受精で出産に至りました。これは全体の12.5パーセントに当たります。

皆さんと予想と比べて、40代の出産率はいかがだったでしょうか?
 

若い人でもみんなが出産できるわけではない

「最先端の医療」というイメージと裏腹に、そもそも体外受精自体がそんなに強力なものではありません。

体外受精は、出産に最適な時期の若い夫婦がおこなっても、すべての人が赤ちゃんを抱けるわけではないのです。厚労省研究班の報告書で示されたデータによると、34歳以下の人が出産に至った人は約7割(68.9%)。40代に較べれば非常に高く見えますが、それでも3割の女性は出産できていません。

まして年齢が高い人の体外受精は大変不確実なものです。治療費の助成が税金を使った少子化対策であることも考えれば、年齢制限がかかるのはやむを得ないことかもしれません。

ただ、何歳で線引きをするかは判断が難しいところです。
 
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