<目次>
おすすめのヒッチコック映画!入門編
『北北西に進路を取れ』(1959年度作品)★アクション&パニック
★ロマン
広告マンのロジャー(ケイリー・グラント)は、カプランという男に間違われて誘拐されてしまう。ところが人違うだとわかるや、今度は殺されそうになり、命からがら逃げだしたと思ったら、今度は殺人の容疑者に! 逃げる途中、ロジャーは謎の美女イブ(エヴァ・マリー・セイント)に助けられ、二人は意気投合するけれど……。
公開時に批評家からも絶賛され、大ヒットしたヒッチコック監督の代表作ともいえる作品。主人公が命を狙われ、危機一髪の状況を乗り越えていくスリルがたまらない。飛行機に追いかけられたり、ラシュモア山で追い詰められたり、素晴らしい技巧とアイデアでスリリングなシーンを演出。でもサスペンスをごり押しするのではなく、どこかエレガントなヒッチコックの持ち味が生きている作品。ヒッチコック映画初心者にオススメです。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ケイリー・グラント、エヴァ・マリー・セイント、ジェームズ・メイソン、ジェシー・ロイス・ランディス、マーティン・ランドー、レオ・G・キャロル、エドワード・ビンズ、ロバート・エレンスタイン
『裏窓』(1954年度作品)
★サスペンス
★ロマン
カメラマンのジェフ(ジェームズ・スチュワート)は、足を怪我しており身動きできず、唯一の楽しみは向いのアパートの住人の生活を見ること。ある日、セールスマンの男が病床の妻と口論をしているところを目撃し、その後、その妻がいなくなってしまいます。「彼が奥さんを殺したのでは?」と怪しむジェフは、恋人のリザ(グレイス・ケリー)の協力のもと調査を始めます。ところが……。
主人公が向いのアパートの住人たちの生活をのぞき見するという、好奇心をくすぐるアイデア、加えて主人公が足を怪我しており動けないという設定が、クライマックスの危機をスリリングに煽る! 舞台はほとんどアパートの一室なのに、向いのアパートを見るジェフの視点がユニークで効果的。舞台が動かないことが気になりません。サスペンス映画の傑作として有名ですが、特筆すべきはヒロインを演じるグレイス・ケリー、今見ても圧倒される美しさ! ヒッチコックお気に入りの衣装デザイナー、イディス・ヘッドによるグレイスの服も素敵です。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート、グレイス・ケリー、レイモンド・バー、セルマ・リッター、ウェンデル・コーリイ
『鳥』(1963年度作品)
★アクション&パニック
カモメがメラニー(ティッピー・ヘドレン)をつついて怪我を負わせます。その一羽の鳥の襲撃を発端に、メラニーが弁護士のロジャー(ロッド・テイラー)宅へ行くと、そこで多くの鳥の大群に襲われ、小学校で、町中で、鳥は次々に人間を襲い、殺し、町はパニックになっていくのです。
いわゆるパニック映画の元祖と言える作品。ヒッチコックは、鳥の大群に襲われるという当時としては斬新な恐怖を映画にしました。今の映像技術に比べるとアナログな時代なのに、今見ても十分怖いのは、やはりヒッチコックの演出センスが突出していたから。人間の背後にいつのまにか鳥の大群、一羽の鳥が飛んでくる……そんなシーンだけでもゾゾっとする。この映画を見た後だと、可愛い小鳥が邪悪に見えてしまうかも。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ティッピー・ヘドレン、ロッド・テイラー、スザンヌ・プレシェット、ジェシカ・タンディ、ヴェロニカ・カートライト、ドリーン・ラング、エリザベス・ウィルソン、エセル・グリフィス、チャールズ・マックグロー、ロニー・チャップマン、ジョー・マンテル、マルコム・アターベリイ
ヒッチコック映画の闇の世界へようこそ
『見知らぬ乗客』(1951年度作品)
★心理
★サスペンス
列車の中。テニス選手のガイ(ファーリー・グレンジャー)は見知らぬ男ブルーノ(ロバート・ウォーカー)に声をかけられます。ガイが悪妻と離婚したがっていることを知ったブルーノは、自分がガイの妻を殺すから、ガイはやっかいな自分の父を殺してくれないかと交換殺人の話を持ち掛けてきます。ガイは断りますが、ブルーノは勝手にガイの妻を殺してしまい、彼に付きまとい始めます。
『見知らぬ乗客』は元祖ストーカー映画。心が壊れた男が主人公につきまとう。どんなに逃げてもいつも視界に入ってきて、生活が壊されていく怖さ! ブルーノを演じたロバート・ウォーカーの怪演が背筋を凍らせます。またヴィジュアルの演出も冴えわたり、メガネに映る殺人シーン、車の中から見える佇むブルーノ、止まらない回転木馬など、恐怖シーンが強烈! 素晴らしい映画は時代を超える! この映画はその最たるものです。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ファーリー・グレンジャー、ロバート・ウォーカー、ルース・ローマン、レオ・G・キャロル、パトリシア・ヒッチコック、ローラ・エリオット、マリオン・ローン、ジョナサン・ヘイル
『めまい』(1958年度作品)
★心理
★ロマン
高所恐怖症による眩暈に苦しむ元刑事のスコティ(ジェームズ・スチュワート)は、友人から妻マデリン(キム・ノヴァク)の素行が怪しいので調査してほしいと依頼されます。彼はマデリンが自殺をしようとするところを助け、それをきっかけに二人の仲は深まっていくのですが、マデリンは再び自殺を図り、死んでしまいます。ショックのあまり、スコティは心を病んでいきますが、ある日、スコティの前にマデリンにソックリのジュディと言う女性が現れ……。
ヒッチコック監督作の中でも人間のダークサイドを描いた1本と言えるでしょう。心を病んだ男が怪しい女に翻弄されて、ますます闇に突き落とされるという一種のファムファタール映画でもあります。ネタバレになるので多くは語れませんが、ドンデン返しの面白さ、スチュワートとノヴァクのロマンスの色っぽさ、そして流麗なカメラワークが堪能できるミステリーです。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク、バーバラ・ベル・ゲデス、トム・ヘルモア、ヘンリー・ジョーンズ、エレン・コービイ、レイモンド・ベイリー、リー・パトリック
『レベッカ』(1940年度作品)
★心理
★サスペンス
マキシム(ローレンス・オリヴィエ)は妻レベッカを亡くし、モンテカルロで出逢った女性(ジョーン・フォンテイン)と再婚します。大邸宅に二人で帰りますが、家政婦のデンバー夫人(ジュディス・アンダーソン)は、レベッカを忘れられず、新夫人に冷たくあたり、彼女を精神的に追い込んでいきます。ついに新夫人は自殺を考えるほどになりますが……。
ヒッチコック監督が英国からハリウッドに進出して最初に作った作品。亡くなったレベッカに今も仕えているようなデンバー夫人が、ネチネチと新しい夫人を追い込んでいく様が恐怖を煽ります。デンバー夫人は、レベッカの亡霊のようにも見えるし、邸宅そのものがレベッカのようで気味が悪い。ジワジワと恐怖を浸透させていく静かなサスペンスの演出はさすがヒッチコック! アカデミー作品賞受賞作。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ローレンス・オリヴィエ、ジョーン・フォンテイン、ジョージ・サンダース、ジュディス・アンダーソン、グラディス・クーパー、レオ・G・キャロル、ナイジェル・ブルース
ハラハラドキドキ!息もつかせぬ傑作サスペンス!
『知り過ぎていた男』(1956年度作品)★サスペンス
ベン(ジェームズ・スチュワート)は、ジョー夫人(ドリス・デイ)と息子とともにモロッコへ。そこでトラブルから救ってくれたフランス人の若い男と知り合いますが、翌朝、彼が殺され、ベンは死に際の彼から某国の首相暗殺計画に関係する重要な言葉を聞いてしまいます。これをきっかけに、ベンの家族は事件に巻き込まれ、息子を誘拐されてしまうのです。
ドリス・デイが歌う「ケ・セラ・セラ」が有名な本作。クライマックス、劇場での首相暗殺のシーンはドキドキの頂点! オーケストラのシンバルが鳴る瞬間が暗殺の合図なのですが、そこに至るまでのスリリングな演出は見事です。ドリス・デイの明るい個性がこの映画の華となり、事件を解決に導く名曲「ケ・セラ・セラ」は一度聴いたら忘れられません。巻き込まれ型サスペンスの傑作ですね。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジェームズ・スチュワート、ドリス・デイ、ラルフ・トルーマン、ダニエル・ジェラン、クリス・オルセン、ブレンダ・デ・バンジー、キャロリン・ジョーンズ、ノエル・ウィルマン
『ダイヤルMを廻せ!』(1954年度作品)
★サスペンス
舞台はロンドン。妻のマーゴ(グレイス・ケリー)が浮気していることを知った夫のトニー(レイ・ミランド)は、浮気相手を言葉巧みに誘いだし、その間に友人の男に妻の殺しを依頼。ところが、もみ合っているうちにマーゴは男を殺してしまいます。計画が狂って焦ったトニーですが、急きょ「マーゴが浮気をネタに男にゆすられていたので殺したのだ」と、警察に信じ込ませますが……。
舞台劇の映画化で、ほとんどが主人公のアパートの一室で繰り広げられます。電話、ハサミなど小道具の使い方が巧く、美しいヒロインが追い詰められていくストーリーはヒッチコック節が効いています。完全犯罪を計画しながら、犯人が思わぬハプニングに遭遇し「さあ、どうする?」という展開や、後半、思いがけない犯罪のほころびが見えてくるところなどお見事!正統派ミステリーファンにオススメの1本です。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:レイ・ミランド、グレイス・ケリー、ロバート・カミングス、アンソニー・ドーソン、ジョン・ウィリアムズ、パトリック・アレン
ヒッチコックはロメコメ系サスペンスも大得意
『バルカン超特急』(1938年度)
★サスペンス
★ロマン
バルカンの避暑地からロンドンへの列車の中。アイリス(マーガレット・ロックウッド)は老婦人フロイ(メイ・ウィッティ)と親しくなりますが、フロイは列車内で行方不明に。アイリスは列車内の人々にフロイの行方を尋ねますが「そんな人は見たことない」と言われます。「そんなはずはない!」とアイリス。そんな彼女にギルバート(マイケル・レッドグレーヴ)が協力し、二人は老婦人フロイの存在を証明する証拠を探しますが、その事件には驚くべき真実が隠されていたのです。
ヒッチコック監督の初期の名作と言われる1本。ほぼ列車内で起こる事件だけれど、アイリスとギルバートが、テンポのいい会話を交わしながら距離を縮めていく様子はロマンチックコメディ風で楽しく、まったく飽きない。後半は銃撃戦もあるが、さすがに30年代の襲撃シーンはどこかホノボノ。一件落着かと思いきや、最後の最後までハラハラさせつつ、ラストは見事な着地!英国時代のヒッチコックの代表作と言われるのもわかります。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:マーガレット・ロックウッド、マイケル・レッドグレーヴ、ポール・ルーカス、グーギー・ウィザース、リンデン・トラヴァース、メイ・ウィッティ
『泥棒成金』
★ロマン
ジョン(ケイリー・グラント)は、かつてキャットと呼ばれた宝石泥棒だったけれど、引退してリヴィエラで優雅な生活を送っていました。そこへ自分と同じ手口の宝石泥棒が現れ、警察はキャット復活だと、彼に疑いの目を向けます。ジョンはニセモノの正体をつきとめようと、社交界に潜入し、お金持ちの母娘の宝石を偽キャットが狙うのを待つことに。そのジョンに娘のフランセス(グレイス・ケリー)が興味を抱き……。
ヒッチコック映画では珍しく「盗み」の犯罪を描いています。サスペンスとしてのドキドキ感は薄いのですが、ロマンチックコメディのテイストで、ケイリー・グラントとグレイス・ケリーという美男美女のやりとりを楽しめる作品。ロケ地となったモナコなどの景色の美しさ、ポストカードを切り取ったような映像、グレイス・ケリーの輝きなど、ミステリーが苦手な人でも楽しめる要素満載です。
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ケイリー・グラント、グレイス・ケリー、シャルル・ヴァネル、ブリジット・オーベール、ジェシー・ロイス・ランディス、ジョン・ウィリアムズ
ヒッチコックがプロデュースした傑作ドラマ
この作品はテレビドラマなので、ちょっと番外編としてご紹介!
「ヒッチコック劇場」(1955~1961年)
ヒッチコックがプロデュースした30分のミステリードラマ。人間の滑稽さや怖さを凝縮した短編ドラマは見やすく、軽妙で味わい深いミステリーが満載。日本でも放映されて人気を博しました。「ヒッチコック劇場」のテーマ曲は、ヒッチコックを語るときの定番のようになり、ヒッチコックがドラマの道先案内人のように解説するのも有名です。
ほかにも面白いヒッチコック映画はあるのですが、ヒッチコック監督は多作で全部紹介しきれない~。みなさんもいろいろ見て、自分のヒッチコック映画ベスト10など作ってみてください。そうそう、ヒッチコックは多くの作品で、自分がちょい役で登場しています。だいたい映画の冒頭に登場することが多いですよ。独特の風貌ですから、すぐわかるはず。探してみるのも楽しいかも!
ちなみにヒッチコック最大のヒット作『サイコ』については、前回紹介しています。こちらをご覧くださいね→『サイコ』
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