「新しいファンドが出ました」のセールストークに注意を
そもそも投資信託というのは、長期保有を前提に考える金融商品です。理由その1……購入手数料が高かったとしても、保有期間を長期化することで、1
投資信託を買う上で注意したいこととは
理由その2……解約が生じると満足のいく運用が出来なくなるから。資金流出が続いているファンドの運用成績は、ほぼ間違いなくジリ貧になります。
したがって投資信託を選ぶ際には、過去の運用実績以上に、まずは資金の流出入に注意する必要があります。さて、昨年末に新規設定された、米国株投資のファンドがあります。2000億円もの資金を集めたこともあって、話題になりました。運用開始から4ヶ月が経過した現状はどうなっているのでしょうか。
4月23日時点の純資産残高は1589億1600万円。純資産残高は、ファンドに組み入れられている有価証券の時価総額なので、株価が下落すれば減少することも考えられますが、この間、米国株価は上昇し、かつ円安も進んでいるので、基本的に純資産残高は増加傾向をたどるはずです。実際、1口あたりの純資産残高を示す基準価額は、1万1690円まで上昇しています。
基準価額が上昇しているのに純資産残高が減少しているというのは、それだけファンドから資金が流出していることを意味します。実際、一定の計算式をベースにして、同ファンドの資金流出入状況を調べると、基準価額が1万1000円に乗せた2月20日から、一斉に資金流出が増えているのが分かります。
一方、日本の中小型株を主要投資対象としたファンドなのに、昨年末からの短期間で急激に資金が流入したがために、一時的に追加設定を中止するケースも出てきました。以前、私は10人くらいの日本株ファンドマネジャーに、「中小型株ファンドを運用する際の最適な資産規模はいくら?」と聞いたことがあります。
その時の答えは、ほとんどの人が「300億円前後」というものでした。つまり中小型株メインのファンドで、純資産残高1000億円超というのはサイズが大きすぎますし、それでも運用を継続する場合、ファンドの性格は大きく変わらざるを得ません。
なぜ、短期間で大きな資金が集まったのか。あるいは一気に資金が抜けるような事態が生じているのか。その背景にあるのは、ほぼ間違いなく販売金融機関の存在です。新規設定の場合は、募集期間中に一気に資金を集める。そして基準価額が一定水準になったら、それを解約して他のファンドに乗り換えさせる。そんな営業を行っている販売金融機関がたくさんあります。
繰り返しますが、投資信託は高速回転売買を繰り返すような金融商品ではありません。投資信託を保有している方は、自分で納得して買ったファンドであれば、「新しいファンドが出たのでご検討ください」などというセールストークを販売金融機関で受けたとしても、それに踊らされないことが肝心です。
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