日産、日航を復活に導いた「制度」改革
同じような例は人事制度にも見て取ることができます。90年代後半にひん死の状態にあった日産自動車を立て直しに入ったカルロス・ゴーン氏。氏が先導した同社の復活戦略「日産リバイバルプラン」を絵に描いた餅に終わらせないために、「戦略」達成に向けて彼がおこなったマネジメントは徹底したコミットメント経営であり、それを実践するために導入した「制度」が成果主義人事制度でした。
自身を含めた役員自ら目標未達時の退任を明言し、それまでの日本的な情実人事を排し目標達成の成否をもって評価とする人事制度を導入。見事に当初3年計画であった目標を1年前倒しの2年で達成する業績V字回復を実現したのです。日産の復活戦略はゴーン氏の的確な「制度」の実行によってもたらされたと言っても過言ではないでしょう。
現代の “経営の神様” 京セラの稲盛和夫氏が提唱する「アメーバ経営」もまた、「制度」変更に裏打ちされた「戦略」であると言えます。
経営破たんした日本航空の再建を引き受けた稲盛氏。彼が日航に乗り込んで再建を実現するために真っ先に手がけたことは、巨大化し何事も形式化した同社に徹底した採算管理による意識改革を起こすという「戦略」でした。
そしてその「戦略」実行に向けた「制度」として走らせたものが、小集団部門別採算管理制度でした。従来、計画は作られても予算は消化するのみで検証はされないという至ってお役所的な収益管理を改めるべく、飛行機1便ごとに収支を管理し運行の翌日にはその結果が出るような仕組みを作り上げたのです。
日航、脅威のスピード再建の陰には、再建に向けた大胆な「戦略」を可能にした的確な「制度」があったのです。
「制度」は必ず目的をもった「戦略」実行のために練られるべきものであり、あらゆる「制度」は「戦略」に照らして瑕疵のないものであるか否か、常に検証を加える必要があるのです。