メキシコの治安、社会情勢の最新情報
メキシコではデモが頻繁に行われている
メキシコは危険なこと以上に、美しいこと、楽しいこと、素晴らしい人々であふれています。少しの気配りが、危険を回避することにつながるので、旅を楽しむためにも、メキシコの防犯対策の記事もあわせて読んでおいてください。
アヨツィナパ教員養成学校の生徒虐殺疑惑に伴う治安悪化
2014年9月26日ゲレロ州アヨツィナパ(Ayotzinapa)教員養成学校の43人の学生たちを、政府の指揮により、ゲレロ州イグアラ市で軍隊が虐殺した疑いが濃厚な事件が起こりました。42人の学生たちは未だに発見されず(ひとりは2014年12月9日に遺体で発見されました)、事件が解決していないのを受けて、メキシコ全国各地で連日のように抗議活動が続いています。この事件の直接的な指示を出していた前イグアラ市長は逮捕され、前ゲレロ州知事は辞任していますが、混乱は深まっています。ゲレロ州山間部はかねてから、けし、大麻などの麻薬栽培地として知られ、犯罪組織の力が強い場所でもあるため、利権争いや、報復行為が続いています。これまで安全だった人気観光地のゲレロ州のアカプルコやタスコも治安が悪化しているので、なるべく行かないようにしてください。
メキシコ国内でのデモ多発における注意
前述のゲレロ州イグアラの事件を受けて、おもに大都市の中心部でのデモが連日のように行われています。警察機動隊がデモを制圧するために、市民に暴力行為を行い、ゴム弾や催涙ガス、放水車を使用するので、巻き込まれないように警戒が必要です。メキシコシティでのデモは、ソカロ(Zocalo)、独立記念塔(Angel de la independencia)、革命記念塔(Monumento de la revolucion)、大統領官邸(La Residencia Oficial de los Pinos,通称Los pinos)、内務省(Secretaria de gobernacion)、連邦警察オフィス(procuraduria general de la republica。通称PGR)、テレビサ・チャプルテペック(Televisa Chapultepec)などが開催地になることが多いので、周辺を通る場合には注意しましょう。
また、高速道路料金所付近や空港前の占拠も行われることがあるので、移動の際にはじゅうぶんに情報収集しましょう。
なお、デモによりメキシコシティのセントロ地区が閉鎖され、車両通行止めになるほか、地下鉄やメトロブスなどの公共交通機関の駅も閉鎖されることがあるので、セントロ地区のホテル滞在はお勧めしません。
麻薬組織抗争の現在
2006年12月から2012年11月まで大統領だったPAN(国民行動党)のフェリーペ・カルデロンが指揮した麻薬組織撤廃政策により、犯罪組織と癒着していた政府、警察関係者たちも巻き込み、メキシコは激戦状態になりました。カルデロンが大統領任期中の6年間に、抗争に巻き込まれた死者数は7万人以上で、そのなかには多くの民間人もふくまれています。メキシコのなかでもっとも勢力を持っていた麻薬組織ロス・セタスのトップが2012年10月、海軍との銃撃戦により亡くなった影響か、抗争が沈静化した地域も多いのですが警戒態勢が続く場所も多いです。
メキシコの治安の記事では、「メキシコは日本に比べたら治安は良くないが、観光客にとっては、命を狙われたり、誘拐されるような深刻な事態になる可能性はきわめて低い」と書きました。しかし、残念ながら2012年以降、観光客が犯罪に巻き込まれるケースが相次いでいます。
2012年6月25日に、メキシコシティ国際空港第2ターミナルで起きた銃撃事件では、麻薬取り締まりを担当していた3人の警官が殺されたのですが、なんと犯人も警察官! 巻き添えとなった民間人はいなかったとはいえ、メキシコの警察の腐敗の現状を思い知る事件でした。もちろん、すべての警察官が悪事を働いているわけではありませんが、何かと因縁をつけて、賄賂を請求する警官もいるので、用がなければ、あまり近づかないほうがいいです。
2013年2月にはゲレロ州アカプルコで14人の観光客が武装集団に襲撃され、そのうちスペイン人女性6人が強姦される事件が起こりました。ゲレロ州アカプルコは避暑地として有名ですが、麻薬組織抗争の舞台となり、ここ2年くらいで 治安の悪化が著しく、地元民は夜の外出を避けています。
この事件が、麻薬組織絡みなのかは明らかではありませんが、治安の悪化に便乗して、犯罪が起こるケースが増えているので、抗争が激化している場所には、極力行かないようにしましょう。
ミチョアカン州では2013年より麻薬組織ラ・ファミリア系の「カバジェロス・テンプラリオス」と地元自警団を巻き込んだ抗争が激化し、自警団が勝利を収め、治安が良くなるかと思われていました。しかし、自警団のリーダー、ホセ・マヌエル・ミレーレス・バルベルデが2014年6月27日に政府によって拘束され、同地は混乱を来しているので、極力近づかないほうがいいでしょう。
また、2015年に入って、カバジェロス・テンプラリオスや、ロス・セタスのトップが続々と逮捕されていますが、これによって治安が良くなっているわけではありません。
カバジェロス・テンプラリオスのメンバーの多くがメキシコシティの隣のメキシコ州や州境いの町に潜伏しています。このため、メキシコ州の治安が激的に悪化し、2014年上半期(1~6月)だけでも1113件の殺人事件が起こっています。世界文化遺産の遺跡テオティワカンもメキシコ州にありますが、観光地のため危険ではありません。ただ、移動の際には細心の注意を払い、複数人数での行動を心がけてください。
最近では、ハリスコ州の新興犯罪組織、ヌエバ・ヘネラシオンの活動が活発化し、2015年5月22日にミチョアカン州で警察との銃撃戦が起こりました。これにより、同組織のメンバー42人が死亡したことを受け、政府へ報復すると発言。今後、ミチョアカン、ハリスコ、グアナファト、ゲレロ、ベラクルスの5州での戦いを宣言しているので、該当地域へ行く場合はじゅうぶんに注意しましょう。
メキシコ国家公安が発表した2014年上半期(1~6月)の殺人事件の多い都市7位までのランキングは以下になります。
1位メキシコ州
2位ゲレロ州
3位チワワ州
4位ミチョアカン州
5位タマウリパス州
6位シナロア州
7位ハリスコ州
このランクのなかに含まれていませんが、ヌエボレオン州モンテレーでは2011年頃に抗争が激化し、未だに警戒体制が続いています。日系企業を含む外資企業が進出するグアナファト州では外国人狙いの窃盗被害が増えています。いっぽう2011、2012年頃まで麻薬抗争の激戦区だったバハカリフォルニア州ティファナやベラクルス州ハラパの治安は改善方向にあります。治安は麻薬組織抗争の状況により刻々と変わるので、対象州へ旅行の際は、地元の住人たちの話を聞くなどして事前に情報を集めておきましょう。
政権交代後の事件
2000年から12年間、政権の座にあったPAN(国民行動党)にかわり、2012年12月1日からPRI(制度的革命党)が政権を握ることになったメキシコ。大統領エンリケ・ペニャ・ニエトが就任し、メキシコシティのセントロ地区で抗議活動を行っていた人々が逮捕されました。ほとんどの人々は平和的に活動を行っていたのですが、反体制活動を行った見せしめとして逮捕され、投獄されたのです。そのなかには、デモの写真を撮っていただけの外国人や、通りすがりの人までいて、これは世論的にも大問題になりました。メキシコでは頻繁にデモや集会が行われているだけに、観光客でも巻き込まれないように細心の注意が必要です。
2013年1月31日には、メキシコ石油公社のメキシコシティ本社ビルが爆発し、死者33名、100名以上が負傷する事件が起こりました。建物は、外国人観光客もよく訪れる高級ショッピングゾーン、ポランコ地区にもほど近い場所です。メキシコ連邦検察が、地下にたまったガスが原因と発表しましたが、これは事故ではなく、石油公社の民営化をすすめたい何らかの圧力が関与している疑惑もあります。
このような事件は避けようもありませんが、当面の間は、大企業や政府、政党関係の建物にはあまり近寄らないほうがいいでしょう。