荒ぶる心を抑えきれない情熱的な高校生たち
北野武、井筒和幸、三池崇史と、日本映画界の巨匠は、男子高校生を主人公に情熱を持て余した荒ぶる心を描いています。北野監督の作品はボクシングに、三池、井筒監督の作品はケンカに燃える男たちも登場。熱い青春ものは、見ていても燃えますね!『Kids Return キッズ・リターン』(1996年度作品)
高校生のマサル(金子賢)とシンジ(安藤正信)はいつもつるんで悪さばかりしていたけれど、喧嘩でKOされたことがきっかけとなりボクシングジムに通うように。やがてシンジは新人ボクサーとして注目を浴びますが、マサルは別の道を歩み始め……。若さゆえの情熱と危なっかしさ。挫折して大人になっていく感覚が、二人の青年の青春を通して胸に響きます。自転車二人乗り、「まだ始まっちゃいねえよ」というマサルの名セリフなど、心に残る名シーンの数々……。人生の通過点を苦くかつ軽やかに描いた北野武監督の傑作です。
監督:北野武
出演:金子賢、安藤政信、森本レオ、山谷初男、柏谷享助、大家由祐子、寺島進、モロ師岡ほか
『パッチギ!』(2004年度作品)
舞台は1968年の京都。高2の松山(塩谷瞬)は、朝鮮高校へ親善サッカーの試合の申し込みに行き、そこで美少女キョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れしますが、彼女の兄は朝鮮高校の番長(高岡蒼佑)だった。塩谷瞬、沢尻エリカ、高岡蒼佑が共演! お騒がせ俳優のイメージが強い3人だけれど『パッチギ!』の頃は新人。特に沢尻エリカはこの映画の好演でメジャーシーンに躍り出ました。朝鮮分断の悲しみを歌う「イムジン河」という曲と日本と在日韓国人の高校生の恋が重なり合い、微妙な距離感が切なさを倍増。また壮絶な喧嘩シーンは映画におけるバイオレンスの在り方を熟知した井筒監督らしく強烈!
監督:井筒和幸
出演:塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、尾上寛之、真木よう子、小出恵介、波岡一喜、オダギリジョー、光石研、加瀬亮ほか
『クローズZERO』(2007年度)
ワルが集まった鈴蘭男子高校に、鈴蘭のトップになるために転向してきた源治(小栗旬)。校内の派閥はあれど、どこにも属さず一匹狼を貫いてきた源治でしたが、OBの片桐(やべきょうすけ)と出会い、親交を深めます。そして片桐は、自身がとげられなかった鈴蘭制覇を源治に託すのですが……。漫画「クローズ」を三池崇史が映画化。高校生の派閥争いとは思えない壮絶なバイオレンス描写と個々の強烈なキャラクターが際立ち、同世代から圧倒的な支持を得て、第二作も作られました。青春バイオレンスの怪作です。
監督:三池崇史
出演:小栗旬、やべきょうすけ、黒木メイサ、桐谷健太、高橋努、鈴之助、上地雄輔、
松重豊、塩見三省、遠藤憲一、岸谷五朗、高岡蒼甫、山田孝之ほか
次のページでは長澤まさみの主演映画など、文化系映画をピックアップ!