浄化槽は保守点検、清掃、検査が重要
浄化槽を設置する際に、住宅などの建築確認申請を伴うときはそれに併せて手続きされますが、そうでない場合には事前に保健所などに対して「設置届」を出さなければなりません。そして、使用を開始してから30日以内に「使用開始報告書」を都道府県知事(保健所を設置する市は市長、特別区は区長)に提出します。
さらに大事なのは、その後の保守点検や定期的な清掃、検査などです。浄化槽の保守点検は環境省令で定められ専門的な知識や技術が必要なため、都道府県知事などの登録を受けた「保守点検業者」に依頼をすることになります。
ただし、横浜市と大阪市には登録制度がないため「浄化槽管理士」に委託ができます。保守点検の回数は、方式によって年3回以上、または4回以上などと定められています。
また、浄化槽内には分離された汚泥などが溜まりますので、これを定期的に抜き取る清掃作業が必要です。これも毎年1回、または浄化槽の種類によりおおむね6か月ごとに1回以上実施する必要があり、市町村長の許可を受けた「浄化槽清掃業者」に委託をします。
そして、すべての浄化槽は定期的な保守点検や清掃とは別に、法定検査を受けなければなりません。まず使用開始後3か月~8か月の間に「設置後の水質検査」(浄化槽法第7条検査)を受け、その後は年1回の法定検査(法第11条定期検査)を受けることになります。
この検査をするのは都道府県知事の指定を受けた検査機関ですが、その手続き自体は保守点検業者または清掃業者に委託することができます。
浄化槽が使われている中古住宅を購入するときの注意点
浄化槽を使用している中古住宅を購入するときには、上記のような保守点検、清掃、検査がこれまで適切にされていたかどうかを確認することが大切です。委託した業者に関する書類を売主からきちんと見せてもらう(契約後はその書類を受け取る)ようにしましょう。これらがしっかりと実施されていない場合、あるいは油分や食べ残しなどが多く流された場合、トイレの芳香剤や洗浄剤などが大量に流された場合などには、浄化槽の故障により放流水が汚くなったり悪臭を発したりすることがあります。いわゆる「水が腐った」状態です。
トイレの芳香剤や洗浄剤などは通常の使用であれば問題ありませんが、大量に流されると浄化槽内の微生物を死滅させ、浄化機能を失うことがあるようです。
また、浄化槽への使用が認められていない殺菌剤やカビ取り剤、塩素系消毒剤、殺虫剤などが流されたときも、微生物に悪影響を与えることがあります。
また、ブロワが止められていると空気が送られないため、やはり微生物が死滅している場合があります。ブロワが動いているかどうかは、耳を近付けてみたり軽く触ってみたりすれば容易に分かるので、忘れずにチェックするようにしましょう。
しばらく空き家になっていた中古住宅の場合には、とくに注意が必要です。
さらに、共振などによってブロワの作動音が大きい場合には、夜間にとても気になることもあるでしょう。その解消手段があるのかどうかも確認が欠かせません。
新たに浄化槽の設置が必要な敷地を購入するとき
公共下水の設備がなく、これまで浄化槽が設置されていない敷地を購入するときには、もう少し踏み込んだ確認も必要です。浄化槽からの排水に対し、道路のU字溝などへ接続する工事の許可が道路管理者から受けられるか、さらに浄化槽からの排水自体が認められるか、といったことを調べなければなりません。
この調査は媒介をする不動産業者または売主業者に任せればよいのですが、地形や排水先の流量などによって、許可が下りないこともあり得ます。
新築の建売住宅であれば、原則としてこれらの問題はクリアされているはずです。また、自治体によって浄化槽設置費用の補助制度や融資制度がありますから、注文住宅を建てるときにはあらかじめ確認しておくようにしましょう。
単独処理浄化槽が設置された中古住宅を購入するとき
水洗トイレからの汚水だけを処理する「単独処理浄化槽」は2001年4月以降、新たな設置はできなくなっていますが、それ以前に建てられた中古住宅であればこれを使用しているケースも考えられます。単独処理浄化槽の使用で、生活雑排水が垂れ流しになっていれば、環境に与える負荷もたいへん大きなものです。この場合に必ず「合併処理浄化槽」へ変更しなければならないというわけではありませんが、積極的に取り換えることも検討したほうがよいでしょう。
ただし、7年以内に下水道が供用開始される予定の区域であれば、それまで待って構いません。
公共下水整備後に浄化槽が残っているとき
地域一帯で公共下水道などが整備されたのにも関わらず、何らかの事情で切り替え工事がされずに、浄化槽がそのまま使われている中古住宅もあります。このような場合には、売買を機に切り替えをするべきですが、自治体に支払う負担金の有無やその金額、工事費用などについて、その補助が受けられるのかどうかも含めて事前にしっかりと確認をすることが必要です。
使われなくなった浄化槽が敷地に残っているときには、その撤去工事費用についても考えておかなければなりません。
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