身近にあるたいへん重要な施設でありながら、なかなか目にする機会のない公共下水道。売買契約の前に重要事項のひとつとして説明されるものの、よく分からないままで済ませてしまうことが多いかもしれません。

今回はこの公共下水道について、不動産を売買する際にぜひ知っておきたい基礎知識や、事前に確認するべきポイントなどをまとめておくことにしましょう。

なお、浄化槽が使われている敷地については ≪浄化槽が必要な住宅を購入するときの注意点≫ をご覧ください。


公共下水道の種類は「合流式と分流式」

公共下水道とは、下水道法第2条第3号により「主として市街地における下水を排除し、又は処理するために地方公共団体が管理する下水道で、終末処理場を有するもの又は流域下水道に接続するものであり、かつ、汚水を排除すべき排水施設の相当部分が暗渠である構造のものをいう」と定義されています。

定義は難しいのですが、簡単にいえば台所や洗濯、浴室などからの「生活排水」、水洗式トイレの「し尿」、市街地に降った「雨水」などを排水するための公共施設です。

大半の場合は管路が地下に埋設され、終末処理場において浄化したうえで河川や海に放流されています。たとえば東京都では、神田川(柳橋付近)の水の9割以上、隅田川(両国橋付近)の水の約6割、多摩川(中流域)の水の約5割が下水処理水なのだそうです。

下水の排水施設のうち、排水管の方式には合流式と分流式の2種類があります。合流式とは汚水と雨水を同一の管渠(かんきょ)系統で排除するものであり、分流式とは汚水と雨水を別々の管渠系統で排除するものです。

合流式下水道

合流式 出所:国土交通省「下水道施設の構成と下水の排除方式」


合流式は、要するに生活排水やウンチ、オシッコなどが雨水と一緒に流れるものです。分流式と比べて、施工が容易で工事費が安く短期に整備できるため、下水道の整備時期が早かった大都市中心部ほど合流式区域の比率が高くなっているでしょう。

しかし、合流式には次のような問題点があるため、1970年(昭和45年)の下水道法改正以降に整備された公共下水道は、原則として分流式になっています。

合流式下水道

分流式 出所:国土交通省「下水道施設の構成と下水の排除方式」



合流式下水道の問題点

合流式の場合には、生活排水やし尿が流れる配管と、宅地内の雨水桝(ます)や道路の側溝が繋がっています。そのため、晴天時などに道路面へ悪臭が出てくることもあります。

さらに、一定量を超える降雨があった場合には、し尿を含む汚水が未処理のまま雨水と一緒に河川などへ放流され、水質を悪化させることになります。晴天時に堆積した泥やゴミなども、降雨の初期に河川などへ流れ込みます。

また、近年になって急増している局地的豪雨によって合流管の排水処理能力を超えれば、し尿を含んだ汚水が溢れ、住宅地に浸水被害をもたらすことにもなりかねません。

「合流管=整備時期が古い=処理能力が低い場合が多い」という図式と同時に、これが都心部に多いことも留意しておくべきでしょう。

それに対して、分流式の場合には汚水管と雨水管が別々になっているため、大雨時でも原則として汚水が河川に放流されたり溢れたりすることはありません。ただし、少ない雨であっても地面や道路にあった汚れが、雨と一緒に河川などへ流れ出てしまいます。

また、過去に何度が報道されていますが、誤接続によって汚水が雨水管に流され、未処理のまま河川などに放流されるという事故も起きています。


合流式の改善対策

いろいろと問題のある合流式ですが、古くから公共下水道の整備が行なわれた大都市を中心に、全国の191都市で採用されています。同じ自治体の中でも合流式区域と分流式区域が混在しているものの、とくに大阪市では市域のほぼすべてが合流式となっているようです。

もちろん、国や自治体によって合流式下水道の改善が進められています。2003年度の下水道法施行令改正により、中小都市(170都市)では2013年度まで、大都市(21都市)では2023年度までに緊急改善対策の完了が義務付けられました。

しかし、国土交通省がまとめた2010年度末の評価では、東京23区のほか、岩手県盛岡市、埼玉県行田市、兵庫県西宮市、兵庫県高砂市、奈良県奈良市が「計画通りに事業が進捗しておらず、目標達成がやや困難」のCランクとされています。

合流式の改善といっても、これを分流式にすることはなかなか困難です。

分流式への切り替え(既設合流管を汚水管にして、雨水管を新設するなど)を進めているのは一部の自治体に限られ、多くの場合は合流式のままで雨天時の貯留対策(貯留施設の整備)、雨天時の下水をより多く処理場へ送る対策(遮集)、ろ過スクリーンの設置など、放流時の浄化対策を進めているようです。

なお、下水道法施行令の改正によって水質基準の強化が適用されるのは2024年度と、ずいぶん先の話でしかありません。

また、東京都区部では明治17年に整備された神田下水に始まり、昭和30年代からの高度成長期において急速に下水道が整備されています。

この老朽化が大きな問題となっていて、東京都のまとめによれば区部全体で年間約1,000件程度の道路陥没が発生しているようです。また、高度成長期以前には下水道に流入する雨水が約50%にとどまっていたものの、現在は約80%まで増大しているようです。

これら老朽化した下水管の補修による延命化や再構築、耐震化と合わせ、1時間雨量50ミリに対応する施設の整備が進められています(東京都区部で2008年度から10年間の計画)。また、一部の地区では1時間雨量75ミリへの対策も講じられています。

しかし、近年は1時間に100ミリを超えるような局所的集中豪雨も増え、浸水被害の危険性は年々高まっている状況でしょう。

50ミリの基準を超える雨が降ったからといって、ただちに下水道が溢れだすわけではありませんが、回りよりも低い土地の場合や、地下室、半地下の車庫を設けた住宅の場合には、止水板や排水ポンプの設置を含め、しっかりと浸水対策をすることが欠かせません。


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