「火災保険を使って無料で修理できる」?
災害後に相次ぐ火災保険金を利用した悪質勧誘、ご注意を!
しばしばこうして勧誘が行われるのが、住宅修理工事契約を結ぶことを目的として住宅修理業者により行われるサービス。火災保険金の請求代行と住宅修理サービスを一連として、消費者と修理業者が契約を結ぶといったものです。
サービス勧誘は、訪問販売や電話のほか、チラシが投げ込まれることもあるといいます。あるいは、サービスを提供している住宅修理業者のウエブサイトを訪問した消費者が、自分から申し込むといったケースもあるようです。
ところが近年、こうしたサービスに関しての相談が、全国の消費生活センターや国民生活センターに多く寄せられるようになってきています。消費生活に関する情報を蓄積しているデータベース、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)のデータによれば、2007年から住宅修理サービスに関する相談は年々増えており、東日本大震災後には前年の約2.5倍、さらに今年は前年同期の2倍にも上っているのです。
相談として寄せられている被害の中には、
- 契約をしたにもかかわらず契約書類の控えを渡してくれない
- 契約を取りやめたら解約料として保険金の50%を請求された
- 老朽化による損害を自然災害によるものであるとして保険金の請求を起こすことを勧められた
国民生活センターに寄せられた相談事例を具体的に見てみましょう。
火災保険に絡めた悪徳勧誘の事例
【事例 1】なじみの修理担当者から風害により屋根瓦が壊れているといわれ、修理内容も金額もわからないまま契約。その後修理は行われなかったが、損害保険会社から支払われた保険金全額を振り込むようにいわれ、断ると解約料として保険金の50%を請求された。
【事例 2】
雪による被害が生じ修理を検討していたところ、電話で「雪による損傷なので火災保険から保険金が出る。それを修理費用に充てることができる」と勧誘され、同意書に署名押印をした。しかしながら、書類の控えは渡されず、のちに損害保険会社から保険金が支払われたが、その業者に任せるのが不安となり解約を申し出たところ、クーリングオフはできないといわれ、解約金として保険金の30%、支払わなければ裁判をするといわれた。
【事例 3】
業者が自宅を訪問。「『強風で屋根が傷んだ』といえば、火災保険から保険金が出るので、保険金で屋根を修繕しないか」との勧誘があった。一度は断ったものの、保険金を請求するのは正当な権利だといわれ契約することにした。後日、保険会社への請求に対する手書きメモを渡され、風害が原因の被害であること、20万円を超える被害であることなどと答えよとあった。手続きをして保険金は振り込まれたが、その後工事内容を変えた方がいいといわれ、新しい見積書が渡されたが、なぜ保険金の振り込み後に見積もりが出されるのかわからず、不安である。
※事例は独立行政法人 国民生活センターの発表情報より抜粋、要約。
これらの事例の取引には、法的に問題がある思われる点が複数みられます。
<法的に問題があると思われる点>法定書面を交付しない
まず、訪問販売や電話勧誘販売を行う事業者は、契約申し込み時、消費者に特定商取引法が定める法定書面を交付することが義務付けられています。特定商取引法の法定書面を受け取ってから8日以内なら、クーリングオフによる契約解除ができます。これは修理が終わってからでもできます。法定書面を交付しない、交付しても記載事項に不備がある、はたまたクーリングオフを認めないなどということを事業者は行ってはならないのです。もし事業者が法定書面を交付していない場合、消費者はいつまでもクーリングオフができます。
<法的に問題があると思われる点>高額の解約金を請求される
消費者が事業者に工事の解約を申し出ると、実際に工事に着工していないにもかかわらず、高額の解約金を請求されたり、裁判に持ち込むぞと脅されるケースも見受けられます。こうした契約は、約款の内容や金額によっては消費者契約法第9条に定められている不当条項に該当、契約自体が無効である可能性もあります。
■消費者契約法第9条(消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効)
次の各号に掲げる消費者契約の条項は、当該各号に定める部分について、無効とする。
一 当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの 当該超える部分
二 当該消費者契約に基づき支払うべき金銭の全部又は一部を消費者が支払期日(支払回数が二以上である場合には、それぞれの支払期日。以下この号において同じ。)までに支払わない場合における損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、支払期日の翌日からその支払をする日までの期間について、その日数に応じ、当該支払期日に支払うべき額から当該支払期日に支払うべき額のうち既に支払われた額を控除した額に年十四・六パーセントの割合を乗じて計算した額を超えるもの 当該超える部分
<法的に問題があると思われる点>工事代金を前払いさせようとする
高額な修理代金を、工事の前に払わせようとする点にも問題があります。修理工事のように高額な費用が掛かる契約で前払いをした後に、工事が行われないとか、工事に不良箇所があっても直されないといったことが起これば、消費者は大きなダメージを被ることになってしまいます。
次のページは、悪徳業者に付け込まれないコツを紹介します。