謎に包まれたままのドンエンガス遺跡
崖の上からは美しい水平線が見える
アイルランドの西の都市ゴールウェイからフェリーで40分ほどでアクセスできるアラン諸島。アランセーターでも有名なこの島々は、アイルランド旅行の人気のスポットです。その中でも一番大きな島・イ二シュモア島は特に訪れる人が多く、島の南岸にある古代の遺跡・ドンエンガス遺跡はこの島のハイライトとも言えるでしょう。
小さな石を緻密に積み重ねたような壁の一部
ドンエンガス遺跡は、一般的に砦、要塞といった記述が多いのですが、宗教的儀式のためにつくられたのではないかとも言われており、誰が何のためにつくったのかは明らかにはされていません。海面から約100メートルの高さの崖にたたずむ砦からは大西洋に広がる地平線だけが見え、確かにこの海原に乗り込んで来ようものならいとも簡単に発見できそうなので要塞としても機能しそうですが、強風の吹き荒れる荒涼とした土地に無数の石を積み重ねたような壁が層になるように配された圧倒的な空間に佇むと、神事が行われていたという説もあながち否定できない気持ちになります。
遺跡の魅力は、厳しい自然と隣り合わせの風景
高さ約100メートル、崖のギリギリまで行くことができる
紀元前の鉄器時代約につくられたと言われるドンエンガス遺跡は、直立した巨大な石に小さな石を打つように積み重ねた構造の石の壁が海側から弧を描くように配されています。上空から見ると崖の端の比較的ストレートなラインと丸みを帯びた石の壁でアルファベットのDのような形をしています。もともと壁は円形で、現在の形は半分が崩れ落ちたものという説もあるそうですが、もとからこのような形に作られたという説もありやはりこちらも明らかになっていません。
石に張り付くように草が生息している
島全体が石灰岩の岩盤であるイニシュモア島は、痩せた土地で全体的に木々が少ないのも特徴です。ただでさえ風が強い上にさえぎるものがないので、歩いている時に向かい風にあうと前に歩めない感覚さえおぼえるのですが、海に面しているこの遺跡ではなおさら風が強く感じます。このような厳しい自然と隣り合わせの環境のため、オリジナルの石の壁は壊れてしまった部分もありますが、修復されながら今日に生き延びています。
崖の下をじっくり覗く人の姿も
またこの遺跡をより特別なものにしているのが、水平線を望む広い崖を遮るものが何もないことでしょう。まさに断崖絶壁という場所にも関わらず、そのギリギリまで行くことができ、下をのぞきこめば、打ち寄せる迫力の波の姿があります。海に面した断崖絶壁だけあって風もかなり強いので、風をしのげるフード付きフィンドブレーカー、スニーカーなどの身動きのとりやすい靴の着用はマストです。
次のページでは遺跡へのアクセスとゴールウェイからイニシュモア島へのアクセスをご紹介します。