世界標準の都市型住宅「コートハウス」

外観
建築家 荒木毅さん設計の「CH7」。採光をふんだんに採りながら、プライバシーは守る。都市型コートハウスの好例です

密集した住宅地で、プライバシーを守りながら広々とした中庭と、明るい採光をとれる家。それが「コートハウス」です。

コートハウスは、元々ギリシャやイスラム圏諸国、そしてヨーロッパ各国で発展してきました。基本的なコートハウスは、道路側に高い壁を立て、その内側に中庭と家を配置します。外に面した家の窓は極力小さくして、中庭に面した窓を大きくします。

外観は当然、そそり立った壁になり、古くは侵略者から家を守る役割を果たしました。中庭は外部というよりは、部屋の一室と考えられ、天気のよい日は家事や食事をします。いまもコートハウスの家は、都市型住宅の標準として、多くの都市で見られます。

今回は、日本の都市部に適したコートハウスを紹介します。

コートハウス最大のメリット

周りの目を気にせずに中庭で日光浴をしたり、お茶を楽しんだり、コートハウスの長所は、外空間でくつろぎの時間を過ごせることです。そして、都市部においての最大のメリットは、周りの環境に影響されないことです。例えば新興住宅地の場合、隣や向かいの区画がまだ空地で、後からどんな家が建つか分からないことが多くあります。
断面
断面図(真横から見たところ)。左の四角い棟と右の三角屋根の棟の間が中庭です

今回は建築家・荒木毅さん設計の「CH7」を実例としてあげ、コートハウスの特徴を見ていきます。この家は、開発されたばかりの住宅地にあり、まわりの環境が今後どう変化するかが予測出来ませんでした。隣家の建ち方によっては、採光や景観のための大きなガラス窓が、風呂の窓と向きあってしまうことも考えられますし、隣家の屋根によって、採光や景観が遮られることも多いのです。

その点コートハウスの場合は、周辺の変化から受ける影響を、極力少なくできます。マンションなどの高層建築が建てば別ですが、採光やプライバシーを自分たちの工夫によって守ることが出来るのです。向かいに何が建つか、どきどきしながら暮らす心配がありません。これが都市部におけるコートハウスの最大のメリットといえます。

部屋の一部として、中庭を利用する

中庭
中庭の景観。三角屋根の上には広い青空。中庭にはどこからでも出入りできる
中庭には天然木のデッキ材が、室内の床と同じ高さに張られています。部屋からの出入りがしやすく、裸足のままでも違和感がありません。部屋の一部として利用出来るように工夫されています。夏はサッシュを開け放したままにすると、中と外が一体になった広々とした空間ができます。

ヨーロッパとは異なり、湿気の多い日本では、中庭に降った雨がなかなか乾きません。水たまりが出来てしまうと、虫がわいたり苔が生えたりします。そのため地面にコンクリートを打ってから、スノコ状の木製デッキを作り、排水口から雨水を下水へ流すようにしています。

外観で特徴的なのは、大きくそそり立った片流れの三角屋根です。中庭を挟んで、南北に南棟と北棟があり、三角屋根の方が南棟、四角い方が北棟です。南棟と北棟は広い廊下で結ばれています。これらが中庭を囲むように配置されています。南棟の方からの日光は、斜めの三角屋根のおかげで、中庭や北棟の1階に入り込みます。中庭に差込んだ光は、 ガラスサッシュ(木製サッシュ)をとおり各部屋を照らします。

雨、風もふくめて、自然を取込んだ暮しを

リビングから中庭
南棟から見た中庭。中庭を中心にして、空間が一体になっているのが分かる。中庭を部屋の一部として考えると、狭い敷地でもインテリアの幅がぐっと広がる
中庭はプライバシーを守るために塀で目隠ししています。ただし周囲に威圧感を与えないように、高い壁ではなく、木の塀を立てています。板の間にはスリットを設け、風通しをよくしました。

コートハウスを設計するときは、まず中庭を中心にして、家のプランを考えていきます。中庭が採光や生活動線の中心になるのです。それが普通の庭との大きな違いです。外空間とふれあいを持ちたくなければ、コートハウスはおすすめできません。中庭が生活動線の一部にもなりますから、日差しや風(ときには雨)を生活のなかで楽しめるかどうかが大切になります。

次のページで、一年中、太陽の光を感じられる、採光のポイントを解説します。