大開口の窓は本当に快適か?
窓のサイズや取り付ける位置を考えるのは、とても骨のおれる作業です。日光の入り方は季節によって異なりますし、隣家との窓の位置関係やプライバシーの問題、景観の見え方まで。考えはじめるときりがありません。だからという訳ではありませんが、最近増えたのが、大開口の窓の家です。道路側は一面が窓というような家や、バルコニーは全面サッシュといった例が多くなっています。しかし、窓が広ければ開放的とは限りません。
特に都市型の住宅の場合、窓の大きさと開放感は、必ずしも比例しません。プライバシーが守れなかったり、不快な西日が入ってくると、結局はブラインドやカーテンで閉め切ってしまうこともあります。適切な場所に、適切な大きさの窓があることが大切です。窓は日光や景観、風などを、上手にコントロールする装置なのです。
窓を配置するコツは「上・下・縦・横」の組み合わせ
ハイサイドライトは、小さな面積でも、部屋を明るくする効率のよい窓です |
では窓の位置や形によって、光の入り方がどう変るかを解説します。
■ハイサイドライト(上):部屋の天井近くにつける横長の窓です。プライバシーが守れ、均等な光が部屋の奥まで入ってきます。FIX窓や引き違い窓を使えるので、天窓に比べコストが掛かりません。
■ローサイドライト(下):床の近くにつける横長の窓です。プライバシーが守れる点はハイサイドライトと同じですが、日光は部屋の奥までは入りません。和室や廊下の窓につかうと効果があります。例えば和室と塀の間に小さな坪庭を作り、それを眺められるようにローサイドライトをつけます。塀の全体が見えてしまうよりも、上品な景色が楽しめます。
ローサイドライトは、和室などに使うと、重心の低い落着いた空間をつくれます |
■縦長窓(縦):同じ面積ならば、横長窓よりも光がよく入るといわれています。縦長の方が外から見える範囲が狭くなり、プライバシーの保護にもなります。一方で、プライバシーが気になりやすいのは、目線から腰の高さにある横長の窓でしょう。
縦長窓を連続して並べた例。引き違い窓を設けるよりも採光の量は多くなる。縦のラインが強調され、部屋がすっきりと見える |
■出窓(横):出窓の中でも、ボウウインドというタイプは、外の景観を広く感じさせます。しかし庭や借景が無ければ、あまり意味はありません。狭い敷地の家の場合、同じ6畳の部屋でも、出窓をつけると1.2倍ほどの広さに感じられます。出窓の面積は「延床面積」に入らないため、狭い敷地に家を建てるときによく利用されてきました。
窓の配置も外観デザインのひとつです
以上のような窓の特性を理解して、効果的な窓の配置を考えましょう。窓を考えていくことは、間取りのゾーニングを決めていくきっかけにもなります。リビングや寝室、キッチンの位置をどこにするかは、窓の配置や採光と密接な関係があります。窓の取り付け位置は、外観のデザインを大きく左右します。窓の位置を内装の都合だけで考えてしまうと、外から見たときに窓がバラバラに見えて、デザインが台無しになることもあります。 すっきりと見せるためには、窓の上端の位置を揃えるといいといわれています。
また1階の小さな窓には、面格子を付けると防犯に役立ちます。ただし面格子のデザインは、外観の印象を大きく左右しますので、注意して選びましょう。次回は、窓のからの「通風」について解説します。風通しのよい家を作るためのノウハウです。
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