シックハウス対策で、窓の存在は変った

風通しのいい家を作りたい、というのは、建主の方すべての願いだと思います。これだけは知りたい、窓を配置するコツでは,窓の採光を中心に解説しましたが、今回は窓を工夫して、風を体感できる家づくりのノウハウをご紹介します。

平成15年に施行された、いわゆるシックハウス対策法によって、居室の24時間換気が義務づけられました。換気扇などを使い、最低でも2時間に1回の空気の入れ換えを行います。こうした法律が出来たことで、シックハウスの問題はだいぶ改善されたといわれています。

この法律の換気に対する考え方は、
(1)窓からの風=住人の気分や自然の条件に左右され、空気の入れ換えが計算できない
(2)換気扇による換気=機械的なものなので空気が入れ替わる量を計算できる
というものです。ここで心配なのは、24時間換気システムがあれば、窓からの通風は考えなくてもよい、という風潮です。

シックハウスの原因には様々な要素があり、新建材からのホルムアルデヒドの発散や、住宅の高気密化などがいわれています。それに加え、こまめに窓を開け閉めしたり、毎朝掃除をして窓を開け放すといった、昔からの生活習慣が失われていることも原因のひとつだと考えられます。
   

風通しを体感できる家がほしい

風の流れ1
図1 窓が対面していないと、風は通りにくくなります
換気扇で空気を入れ換えることと、窓から入る風を感じることは、べつの事といってもいいでしょう。法律では窓の換気機能は計算されていませんが、自然の風の大切さは変りません。法律はあくまで必要最低限の基準をしめしているのです。

自然の風を感じる家をつくるには、どういった工夫が必要なのでしょうか。窓が大きいからといって、風通しのいい家が出来るわけではありません。窓から風が入るためには、次の3つの条件がポイントになります。
(1)窓が2面以上あり一直線に対面していること
(2)必要な時は常に開けておけること
(3)風向きを考慮すること(主風方向を確認する)

 
風の流れ2
図2 窓と窓を一直線に配置すると、風がよくとおります
これらの条件を満たすと、家の中にいい風が通ります。風にも「質」があり、冬場のすきま風や、春一番の突風は不快ですが、夏の夕日が落ちた頃に流れる風は、たまらなく気持ちのいいものです。不快な風や、暖冷房効率を下げる風をシャットアウトして、質のいい風を取り込むのが、風をデザインした家といえるでしょう。

まずはポイントのひとつ目です。風通しをよくするためには、窓を2カ所以上設ける必要があります。ここまでは常識ですが、問題は窓の配置です。図1のような形では、風はあまり通りません。風をよく通すためには、図2のように、窓と窓を一直線に対面させます。窓の大きさが同じである必要はありません。
 

高さを活かした通風法

風の流れ3
図3 ハイサイドライトから暖まった空気が排出され、ローサイドライトから冷たい風がはいります
この他に、部屋の高さを利用して風を抜く方法もあります。例えば図3のように、床面に近いローサイドライトと、天井面に近いハイサイドライトを向きあわせると、温められた空気がハイサイドライトから抜け、冷たい空気がローサイドライトから入ってくる効果が期待できます(窓の種類については、ガイド記事「 これだけは知りたい、窓を配置するコツ 」 をご覧ください)。

 
風の流れ4
図4 吹抜けを上手く利用すると、家全体の通気に役立ちます
これと同じ原理で、吹抜けを使った換気法もあります。図4のように、1階で暖まった空気は2階にあがります。それを2階の窓や換気扇で外にだすと、1階の汚れた空気を効率よく排出できます。ただし上手く排気できないと、2階に汚れた空気がたまってしまうので、注意が必要です。

 
風の流れ5
図5 風の通りかたは、気圧の変化に左右されます。窓の使い方も大切です
適切な位置に窓があっても、窓の開け方で風通しはかわります。図5のような場合、AとBの窓を開ければ風が通りますが、AとCを開けると風が淀んでしまいます。またA、B、Cの全てを開けるよりも、AとBだけを開けた方が、気圧の関係で風の流れがよくなる場合もあります。
 

同じ大きさの窓でも、風通しの効果に違いがでます

上下窓
上げ下げ窓を連続して使った例。上げ下げ窓は風の量をコントロールしやすい。写真提供:三協立山アルミ

通風に適しているのは「ガラスルーバー窓」や「上げ下げ窓」、「内倒し窓」などです。また引き違いではなく、FIX窓の両側(あるいは片側)に可動窓をつけたタイプもあります。これらはポイントの2つ目にあげた「常に開けておけること」に適した窓です(ただし在宅中に限ります)。また風量のコントロールがしやすいことも特長です。

ガラスルーバー窓は、ガラス板の角度によって、風通し(換気)の量を微妙にコントロール出来ます。ただし、あまり強い雨が吹き付ける所では、雨漏りすることがあります。1階に使うときは、面格子を付けると防犯性があがります。
 
上下窓
内倒し窓。高い所でも開け閉め可能。外側に網戸をつければ虫も防げる。
上げ下げ窓は、上下に窓が開くことで、空気の対流ができます。上の開口から空気が出ていき、下の開口から外気が入ってきます(あるいはその逆)。上げ下げ窓は西洋の石造りの建物によく見られます。石造りは、構造上幅の広い窓を作れません。そこで縦長の窓が発達しました、

内倒し窓は、ハイサイドライトに利用します。内側に窓が倒れる仕組みで、高い場所でも開け閉めできるよう、遠隔操作ができます。
 

主風方向を観察しましょう

さて3つめのポイントは「主風方向」です。主風方向とは、天候に関わらず常に一定の方向から吹く風の方向です。例えば夏は南風、冬は北風などです。海辺の家では、海からの風と山からの風が一日の中で切り替わります。

それぞれの土地には、固有の主風方向があり、季節や一日のなかで定期的に変化します。これを観察することで、最適な窓の配置が計算できるのです。建築家の中には、現地で主風方向を観測し、そのデータに基づいて窓の設計をする人もいます。

上手く風の方向をつかむことで、小さな窓でも効果的な通風が得られます。一方で主風方向を考えずに窓を作ってしまうと、冬の寒い風に悩まされることもあります。自然は大きな法則に従って動いています。風をつかんだ設計は、日本古来の知恵を活かした手法なのです。
 

建築基準法と窓

さてこの機会に、建築基準法と窓のことに触れておきます。建築基準法では、居室の窓の面積は、床面積の7分の1以上必要であるとされています。つまり6畳の部屋は約10平米なので、その7分の1は約1.4平米になります(1m×1.4mの窓があればいいわけです)。

隣の家の境界線から窓が近い場合、窓の下側は有効な窓と認められないことがあります。道路や公園などに面している場合は、全てが有効とされます。この決まりはあくまで「居室」に対して適用されます。「納戸」など、居室でない部屋には適用されません。

都会の狭い敷地では、なかなか守れない決まりなので、様々な方策をとります。納戸は居室ではない、というのもヒントになります。また障子などでつながった2つの部屋も一部屋と認められます。南側の8畳の洋間に、北側の6畳の和室がつながっていて、障子や引き戸で仕切られている場合、8+6畳=14畳と見なされるので、南の洋間に大きな窓をつければよい訳です。

最後の手段としては、天窓が使われます。天窓は場所に関わらず、通常の窓の3倍の面積として計算されます。例えば6畳間の場合、1.4平米の3分の1の面積=約0.46平米あればいいのです(70cm角の天窓に相当します)。

ここで忘れてならないのは、この法律はあくまで必要最低限の採光面積を指導したものだということです。「7分の1以上の採光面積がとれれば、快適な家になる」ということではありません。法律にばかり縛られてしまうといい結果は生まれません。

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