住宅設計・間取り/住宅設計・間取りのテクニック

コンビニの秘密を間取りに活かす(2ページ目)

最も計算し尽くされた間取りといえば、なんといってもコンビニです。その秘密を解き明かすことで、人の行動心理が分ります。

塩野 哲也

執筆者:塩野 哲也

空間デザインガイド

回転動線は、効率の高い生活をつくる

通路
シンクで作業する人の後ろを通り抜けるためには、最低でも1.05mの通路が必要
コンビニのノウハウを住宅に応用して考えてみましょう。住宅の中で最も動線が大切なのは、キッチンや家事スペースです。ここにはコンビニの回転動線が応用できます。回転動線については「動線次第で家が変る。おすすめは回転動線」をご参考ください。

家事スペースやキッチンなどで複数の人が立ち回る際には、動線が重ならないよう工夫する必要があります。すれ違う回数が多くなると、動作に支障がでてストレスになります(特に二所帯住宅でキッチンを共有する場合など)。

また通路の幅も大切なポイントです。コンビニの通路幅を見ると、壁際の通路は1.4m前後、それに比べて中島の通路は1m前後と狭くなっています。人通りが多い壁際の通路は広めにとっています。キッチンの通路も1.05m以上ないと、上手く通り抜けができません。

ゴールデンラインに注目

棚
よく使うものは目線の高さに置くのが使いやすい。コンビニの場合は、おすすめの品を目線の高さに置き、手に取りやすいように工夫しています
ものを置く位置を考えるときも、コンビニのノウハウが参考になります。キッチンなどの収納を考えた場合、よく使うものは目の高さから上下30cmほどの範囲に置くのがベストです。ここを「ゴールデンライン」と呼びます。コンビニでは、このゴールデンラインに置かれた商品が最も売れるといわれています。

子供のゴールデンラインは、大人に比べ低くなりますから、食玩などのおもちゃ類は子供の目線に合わせ、低い位置に置かれます。これは大人がリビングのソファに座ったときと同じ位の高さになります。

テレビを置く高さは、座ったときの目線よりも少し低い方が観やすいといわれています。ソファに座って大型テレビを観る場合は、かなり背の低いAVボードが必要になります。また、間仕切り収納などを置くときは、ゴールデンラインをオープン棚にして演出すると効果的です。

すぐに使うものから、順序よく並べる

例えばクローゼットの中のレイアウトは、最も頻繁に使う下着類から、シャツ、ズボン・上着、コート、ネクタイ類という順に並べていくと、クローゼットの前で行ったり来たりしなくて済みます。右利きの方は、左から順に並べていった方が動きやすくなります。

リビングの収納は、まずは使いやすい壁面収納から考えます。ただし窓が大きくオープンなプランでは、壁面があまり利用できません。収納を増やしたいときは、コンビニで中島を作るように間仕切り家具を利用します。ただし1m以上の通路を設けないと、人がすれ違えなかったり、下のものが取り出しにくくなるので気を付けましょう。

このように、コンビニなどの店舗から学べることがたくさんあります。特にコンビニは狭い空間に密度の高い陳列がされていますから、住宅に応用できることが多いのです。

プロのノウハウをプランニングに活かす

ケノスがプランニングした住宅の例。夫と妻、子供達、知人・友人とのコミュニティーなど、人と人の距離感がよく計算されています
ケノス・小林清泰さんは、コンビニなどの他に、住宅の設計やシステム収納のデザインも手掛けています。商業施設のノウハウを活かし、動線を整理することで、使いやすく、家族の距離感を大切にしたプランが特徴です。

住宅のプランで難しい点は、家族同士の話し合いだけでは、それぞれの欲求を交通整理できないことです。設計のプロは、それぞれの思いを活かしながら、出来ることと出来ないことを整理して、機能的なプランをまとめていきます。

さらに優れた建築デザイナーは、家族の深層心理にある思いを読み取ります。夫や姑の居る前では話せなかった妻の本音など、なかなか表に出てこない思いもあります。こうした隠された声までを考慮し、プランに盛り込んでいくのがプロのノウハウといえるでしょう。

建築デザイナーは、単に間取りをプランするだけでなく、家族の関係も考えながら、最善のプランを提案できるプロなのです。

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