上の階の人に調査を拒絶されたら
前のページでご紹介したとおり、上階の住人に対する調査の依頼は、あくまでも「お願い」してさせてもらうのが原則。管理組合に協力していただいて、事情を説明して、感情的にならずに行いたいものです。同じマンションの住人同士、できるだけ穏やかに解決をしたいものです。 |
ここで参考になるのが、定まった判例ではないのですが、大阪地方裁判所で昭和54年9月28日に出された判決。このような事例について、次のような判断をしています。
下の階からは、上の階の階下を通る給排水管の点検のできないような構造のマンションの場合、上の階に居住する人は、階下に漏水事故が生じ、その原因の調査、水漏個所の修理のため必要が生じた場合には、共同の社会生活を営む隣人に対する義務として、自分が所有して居住する部屋に工事関係者が立ち入って、漏水原因の点検、調査、修理工事をすることについて、特に正当事由がない限りは、受け入れる義務がある。
このような裁判例があることを、管理組合を通じて説明してもらうなどして、問題を早く穏やかに解決したい、ということを伝え、早急に調査に応じてもらえるよう、頑張ってみましょう。
調査結果が判明、さて誰に賠償を求める?
無事、調査が終わり、給排水管からの漏水であることが特定できた場合、誰に対して、損害の賠償を求めることができるのでしょうか?これは、その給排水管が「専有部分」か「共用部分」にあたるか、によって変わってきます。
上階の住戸の専有部分の給排水管であれば上階の住人に対し、共有部分の給排水管であれば、管理組合に対して、請求を行うことになります。
ごく大雑把に分けるとすれば、その給排水管が、上階の住人の専用で使用されている枝管であれば、専有部分、ということになっているようです。
ただし、これはあくまでも大雑把な分け方、実は、その分け方をめぐって裁判となったりすることも。
たとえば、ある住戸が専用で使用していいる排水管であっても、コンクリートスラブの下にあるため、専用部分からの点検・修理を行うことが不可能である排水管は、「共用部分」とした判例などがあります(最高裁判所・平成12年3月21日)。
このように、漏水の発生した給排水管が、どこの住戸によって利用されているのか、構造上どうなっているのか、を詳細に検討したうえで、専有部分か、共用部分であるかを判断しなくてはならない難しさがあります。
保険と専門家は強い味方!
ご紹介してきたとおり、上階の住人に確認を申し入れたり、調査を依頼したり、あるいは、調査結果を判断したりと、いろいろな場面で悩んだり、迷ったりすることも多いでしょう。マンションの漏水事案では、特に損害保険を利用しての解決が期待されますので、まずは、保険を使っての解決を試みてください。
また、市役所や区役所の法律相談窓口(場所によっては無料の相談などもあります)、あるいは各都道府県の弁護士会の法律相談を利用して、対処の方向性について相談をされてみるのも1つの方法。
自分で解決を図るにしても、アドバイスを受けながらすると、大分心強いと思いますので、ぜひ、利用してみてくださいね!(最後は手前味噌のようになってしまいましたが……)。
【関連サイト】
・日本全国の弁護士会一覧(相談窓口)
・マンションと保険2 水漏れ事故の対処法(損害保険)