絵本/おすすめ新刊絵本

子どもの想像力を刺激するパワフルな絵本

絵本の中の「空想の世界」で遊ぶ楽しさを知ることは、絵本の醍醐味の1つに触れること。『ぼくだよ ぼくだよ』は、そんな絵本の楽しさを内包した作品です。パワフルで鮮やかな絵を道標に、子どもも大人も思う存分想像の世界で遊んでみましょう。

執筆者:大橋 悦子

何かに導かれるように絵本に出会うことがある

絵本に関わる仕事をしていると、「絵本との出会いは、人との出会いに似ている」とつくづく思います。不思議なことに、人との出会いと同じように、自分の好みとは関係なく導かれるように絵本と出会うことがあるのです。今回ご紹介する絵本『ぼくだよ ぼくだよ』は、ガイドにとってそんな絵本の1つでした。フラリと立ち寄った書店で何気なく手にし、すっかり心を奪われてしまった絵本なのです。

空想の世界で遊ぶ楽しさを実感できる絵本

『ぼくだよ ぼくだよ』の表紙画像

負けられない!! らいおんとひょうが出会って始まるバトル

元気ならいおんと元気なひょうが、森で出会いました。「僕の方が強いぞ」「僕の方が綺麗だぞ」それぞれが、自分の魅力やパワーを主張し、互いに張り合ううちに、やがて2頭は空想の世界でも、バトルを繰り広げていきます。空を飛び、海に潜り、ワニになったり、大嵐や太陽にまで変身して、2頭のバトルはとどまるところを知らないようです。 そんな2頭の空想の果てに、やがてもたらされるカタルシスが友情の深まりを感じさせます。

子ども同士、大人から見れば、些細な、どうでもいいようなことで張り合って、エキサイトしてしまう……うん、あるある、そういうこと! そんな展開に共感する子どもたちも多いことでしょう。けんかとも言えない他愛のない言葉のやり取りをするうちに、空想の世界で遊ぶ楽しさを知る主人公たちの姿は、現実世界の子どもたちそのものですね。

せっかくですから私たちも、絵本の中で存分に空想の世界を楽しんでみましょう。パワフルな筆使いと鮮やかな色で描かれたきくちちきさんの絵が道標となって、私たちの想像力をおもいきり刺激してくれます。ヒートアップしていく2頭の姿に「どうなる? どうなる?」という緊張感が高まる中、フワリと降り立つよう様におとずれる穏やかな解放感。その瞬間に子どもたちの頭の中に浮かぶのはどんな世界なのでしょうか? 私なら、そしてあなたなら、その瞬間に何を思い描くのでしょう? そんなことを考えるだけでも楽しくなりますね。

絵本の世界で遊ぶ楽しさを知ることは、絵本の醍醐味の1つに触れること。そういう楽しさを内包した絵本に巡り合えるのは、とても幸せなことですね。今の時代、口コミや書評などを参考に絵本を選ぶ方も多いと思いますが、フラリと立ち寄った書店での見知らぬ絵本との予期せぬ出会い……そんな出会いを大切にした絵本選びも楽しいものです。


【書籍データ】
きくちちき
価格:1575円
発売日:2013/2/8
出版社:理論社
推奨年齢:3歳くらいから
購入はこちらから
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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