2分26秒に1組が離婚……2016年は約62万1千組の婚姻があったのに対して、約21万7千組が離婚することになったようです(厚生労働省による年間推計)。
婚姻数の3分の1を超える離婚数ですから、マイホームを共有名義にしたまま、あるいは連帯債務や連帯保証の関係になったままで別れることになった夫婦も多いでしょう。
離婚をするときは、マイホームをどうするのかが難題に?
そのため、いざ離婚をしようとするときになって、マイホームが思わぬ足かせとなることも多いようです。いったいどのような問題が生じるのか、その対処法も含めて考えてみることにしましょう。
なお、ここでは別れた夫がマイホームを出ていくケースを例に話を進めますが、逆に妻が出ていくケースでも夫と妻を入れ替えて考えれば同じです。
離婚した後も共有名義のままだと……
別れた夫婦の共有名義となっているマイホームに、妻と子が住み続けているとします。やがて子が大きくなったり、再婚することになったりしてそのマイホームを売却しようとしても、元夫の名義が残っているかぎり、その協力がなければ売却することはできません。何年も連絡を取らないうちに元夫の行方が分からなくなってしまえば、売るに売れないといった事態も起きるでしょう。
また、元夫が再婚して新たな家族ができた後に亡くなれば、その共有持分が複数の人に相続されることもあり得ます。元妻からみれば赤の他人が、自分たちの住むマイホームの権利を持つことにもなりかねないのです。
さらに、元夫名義の住宅ローンが残っているとき、他の家で新しい生活を始めた元夫が住宅ローンを滞納することはありがちな話です。住んでいる元妻と子が知らないうちに差し押さえられたり、元夫の持分が競売にかけられたりすることもあるでしょう。
住宅ローンが残っていなくても、元夫がその共有持分を担保にして借金をしたり、税金の滞納をしたりすれば、同じように差し押さえられたりするリスクは付いて回ります。
なお、夫婦が共に住宅ローン控除の適用を受けているマイホームの場合、たとえ共有名義のままだったとしても、そこに住まなくなった側はその年から住宅ローン控除が使えなくなります。
離婚の際は共有名義を解消することが理想だが……
上記のような事態を避けるためには、離婚の際に共有名義を解消しておくことが求められます。住宅ローンが残っていないか残債が少なければ、夫の共有持分を財産分与で妻へ渡し、妻の名義に一本化する方法なども考えられるでしょう。ただし、財産分与をした夫は時価で譲渡したものとして課税対象となる場合もあるので、事前によく調べておくことが必要です。
また、分与を受けた妻に原則として贈与税はかかりませんが、婚姻期間中の事情を考慮したうえで「財産分与額が多過ぎる」と判断されれば、贈与税がかけられる場合もあります。
婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、離婚をする前に「贈与税の配偶者控除」を使って夫の共有持分を妻に移しておくことも有効です。この特例では、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円までの控除を受けることができます。
しかし、住宅ローンの残債が多額のときは財産分与による方法が難しくなります。とくに共有名義のうえ、妻が夫の連帯債務者や連帯保証人となっているときは注意しなければなりません。
離婚をしても連帯債務などは外せない
住宅ローンの借り入れにあたって妻が連帯債務者などになっているとき、離婚をしたからという理由だけでその関係を解消することはできない場合が多いでしょう。一部の金融機関では認めてくれることもあるようですが、一般的には離婚をしてからも、ローンを完済するまで連帯債務などの関係から逃れることはできません。
離婚後に元妻が家を出て新しい生活を始めていても、元夫が住宅ローンを滞納すればその請求が元妻に来ることになりますから厄介です。
残債が比較的少なくなっていれば、離婚前に住宅ローンの借り換えによって夫の単独名義の住宅ローンにしておくこともできるでしょう。
しかし、共有名義や連帯債務などでマイホームを購入するケースでは、たいてい住宅ローンを借りる際の審査で夫婦の収入合算をしていますから、残債が多い段階では住宅ローン名義の一本化も困難です。財産分与などによって共有名義を解消することもなかなか容易ではありません。
マイホームに元妻が住み続けようとする場合には、親などの身内や第三者にいったん買い取ってもらったうえで、賃貸の形式にしたり、あるいはそこから新たにローンを組んで買い戻したりといった方策が有効なケースもあります。
離婚の際は売却も選択肢に
離婚をした後に元妻や子がそのままマイホームに住み続けようとすれば、転居などの手間は省けるものの、いろいろと面倒なことも起こりがちです。住宅ローンの残債との兼ね合いもありますが、離婚の際には売却をすることで、元夫との共有名義、あるいは連帯債務などの関係の解消を優先的に考えることも必要です。
共有名義や連帯債務などの関係ではなく、もともと夫の単独名義だったとしても、離婚の慰謝料代わりに「元夫が住宅ローンを支払い続け、元妻らが住み続ける」という選択は避けたほうが賢明でしょう。
新しい生活を始めた元夫が住宅ローンを滞納し、元妻らが窮地に追い込まれるケースは多いのです。離婚の原因が元夫にあったとしても、慰謝料代わりの住宅ローンを元夫がいつまでも支払ってくれる保証は何もありません。
また、マイホームに住み続ける元妻が、残った住宅ローンの支払いをすべて引き受けるとしたときも、共有名義の問題、連帯債務の問題などが残ることに変わりはないでしょう。
そもそも離婚するような事態にならなければ、何ら問題はないのですが……。
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