様々な国での修業が実を結んだ造形美!

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現地では「ハーフェルシュー」と呼ばれるサイドレースアップシューズは、ミュンヘンのあるドイツ南部からオーストリア・チロル地方に起源を持つ、言わばご当地靴の代表格。早藤氏のビスポークでももちろんオーダー可能です。コバの白の出し縫い糸が絶妙なアクセントになっています。

今回ご紹介する早藤氏は若い頃、著名なシューズセレクトショップで紳士靴の販売に携わったのが靴との直接的な縁のスタート。もちろんそれ以前から靴に対する興味は高かったのですが、次第に靴を「作る」ことに対する情熱が湧き上がり、意を決しイギリスのCordwainers College (現在はLondon College of Fashionの一部門)に留学します。在学中からイギリスのビスポーク靴職人の門を叩き、卒業後は敢えて直ぐには帰国せず、フランスのパリを拠点に彼の地の著名な靴職人のもとで修業を積み重ねました。

2004年にいったん帰国し、都内にあるイタリア系セレクトショップに併設された工房で靴の修理に携わります。そこで自らのビスポークシューズの製作も行い、修理共々好評を博していたのですが、彼の更なる向上心は三度、視点を海外へと向けたのです。その地が店を開くことになったミュンヘンで、2009年に転居し改めて修業に邁進し、一旦整形靴(この種の「医学的に正しい靴」を容易に注文できる社会的な仕組みが、ドイツは非常に整っています)を軸とする靴工房に就職して経験と実績を積み重ねた上で、2012年に満を持して独立となった訳です。

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切り返しのデザインが非常にユニークな、コンビのUチップです。履き口の真下でなく少し離れた所にブローギングを入れるのは、フランスの紳士靴に暫し見られる意匠。早藤氏がパリで修業をしていた経験が活かされたデザインです。

このように様々な地域での経験を積み重ねた早藤氏の靴には、当然ながら各々の要素が高度に複合化された表情が出て来ているのは数々の写真でもお解りでしょう。ある部分は典型的なイギリス靴の様式美で、別の箇所はフランスの紳士靴的、また別の所はお膝元であるドイツ・オーストリア圏の靴の要素が濃い…… 的な感じです。そしてその複合性が全く破綻を来たさず、一つのハウススタイルとして自然に昇華している点が何よりも素晴らしい!

独立して間もないとは言え、その造形はもはや誰の真似でもない領域に突入している感があります。しかも、これは早藤氏の気さくな性格がなせる技なのでしょうか、靴だけが決して独り善がり的に目立ち過ぎることはなく、履く人に寄り添ってくれそうなユーモアと言うのか、一種の優しさまで表情に持ち合わせている気もします。心理的にピリピリ緊張しがちな強張った靴ばかりが尊ばれる昨今、履いていて「その人」に自然になれてしまう雰囲気を有する彼の靴は、国の内外を問わず実は貴重な存在なのです。


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