様々な国での修業が実を結んだ造形美!
現地では「ハーフェルシュー」と呼ばれるサイドレースアップシューズは、ミュンヘンのあるドイツ南部からオーストリア・チロル地方に起源を持つ、言わばご当地靴の代表格。早藤氏のビスポークでももちろんオーダー可能です。コバの白の出し縫い糸が絶妙なアクセントになっています。
2004年にいったん帰国し、都内にあるイタリア系セレクトショップに併設された工房で靴の修理に携わります。そこで自らのビスポークシューズの製作も行い、修理共々好評を博していたのですが、彼の更なる向上心は三度、視点を海外へと向けたのです。その地が店を開くことになったミュンヘンで、2009年に転居し改めて修業に邁進し、一旦整形靴(この種の「医学的に正しい靴」を容易に注文できる社会的な仕組みが、ドイツは非常に整っています)を軸とする靴工房に就職して経験と実績を積み重ねた上で、2012年に満を持して独立となった訳です。
切り返しのデザインが非常にユニークな、コンビのUチップです。履き口の真下でなく少し離れた所にブローギングを入れるのは、フランスの紳士靴に暫し見られる意匠。早藤氏がパリで修業をしていた経験が活かされたデザインです。
独立して間もないとは言え、その造形はもはや誰の真似でもない領域に突入している感があります。しかも、これは早藤氏の気さくな性格がなせる技なのでしょうか、靴だけが決して独り善がり的に目立ち過ぎることはなく、履く人に寄り添ってくれそうなユーモアと言うのか、一種の優しさまで表情に持ち合わせている気もします。心理的にピリピリ緊張しがちな強張った靴ばかりが尊ばれる昨今、履いていて「その人」に自然になれてしまう雰囲気を有する彼の靴は、国の内外を問わず実は貴重な存在なのです。
最後のページでは、受注会のご案内!