療養食・食事療法/その他の病気の療養食・食事療法

貧血の栄養療法・食事

貧血は症状が軽い場合でも、疲れ・口内炎・免疫低下の原因になります。貧血の症状が進むと、不妊、うつ、認知症、心不全など深刻な状態に陥ることがあります。ビタミンB12不足による神経障害などは、手遅れになると治らない場合もあります。

一政 晶子

執筆者:一政 晶子

管理栄養士・米国登録栄養士(RD) / 栄養管理・療養食ガイド

貧血とは

貧血は、血が薄くなった状態です。血液の中の赤血球や、赤血球に含まれるヘモグロビンが少ない状態です。ヘモグロビンは血液にのって体全体に酸素を運びます。貧血になって体に酸素が十分に行き渡らなくなると、疲労・動機・息切れなどを起こします。

貧血のリスクがある人は、ダイエットをしている人、ベジタリアン、高齢者、肉や卵などをあまり食べない人、お酒を過剰摂取している人、腎臓病・肝臓病・ガンなどの病気がある人です。貧血には非常に多くの種類がありますが、今回は鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血を紹介します。

鉄欠乏性貧血

体内の鉄分が不足すると、赤血球の数が減ったり、赤血球が小さくなったりし、これを鉄欠乏性貧血と呼びます。

鉄欠乏性貧血になる理由は以下のような場合:
  • 鉄分を体は吸収できるのに十分な鉄が食事から摂取できていない(菜食主義者、偏食、ダイエットなど)。赤血球は3~4ヵ月ほど体内を移動し、体外に排出されます。よって、偏った食生活をはじめてすぐにというより、少し時間が経ってから体への不調などが現れると考えられます。
  • 鉄の必要量が増えているとき(妊娠など)。
  • 出血がある場合(重い月経、食道・胃・大腸がん、食道静脈瘤、消化性潰瘍など)。
  • 何らかの理由で赤血球や鉄の喪失が補充より多い。
  • 鉄分を上手く吸収できない(セリアック病、クローン病、胃の切除、カルシウムを含む制酸薬の過剰服用など)。
貧血の食事

葉酸、鉄分、ビタミンB12がよく摂れるメニュー

■鉄欠乏性貧血の症状
初期症状としては、不機嫌、疲れやすい、頭痛、集中散漫などがみられます。症状が悪化してくると、息切れ、青白くなる、立つ時のくらみ、口内炎、爪が反り返ったり、爪がボロボロになったりします。

■鉄分の多い食べ物
卵(卵黄)、納豆、牛肉、枝豆、サラダ菜、小松菜、あさり、しじみ、赤貝、牡蠣などの貝類、いわし、さんま、魚卵(キャビア、)


ビタミンB12欠乏性貧血(悪性貧血)

赤血球を作るためにはビタミンB12が欠かせません。ビタミンB12は動物性の肉、魚介類、乳製品、卵に含まれます。植物性の食物にはビタミンB12は含まれません(酵母は例外)。また、食事から摂取したビタミンB12を体内に取り込むためには、胃から放出される特別なたんぱく質(内因性因子)が欠かせません。ビタミンB12の欠乏は、菜食主義者、胃の酸性度が低くなる高齢者でリスクが高くなります。また、肝臓に障害があるとビタミンB12を蓄えられなくなります。動物性植物を一切摂取しない菜食主義者、胃の摘出をした人の場合、ビタミンB12をサプリメント等で補わなければ、3~5年ほどでビタミンB12が枯渇します。ビタミンB12欠乏であるか、葉酸欠乏であるかの判断をするのは難しいことがあります。本来はビタミンB12欠乏であるのに、葉酸欠乏の治療をしてしまうと、貧血自体は改善されても、ビタミンB12欠乏の症状である神経障害などが残り悪化してしまいます。

■ビタミンB12を吸収しにくくなる状態
慢性的なアルコール中毒、クローン病、セリアック病、長期に渡って制酸薬を使っている場合

■ビタミンB12欠乏の症状
昏惑、認知症、うつ、バランス感覚の装喪失、手足のしびれなどがあります。

■ビタミンB12を豊富に含む食べ物
卵、鶉の卵、さんま、さば、いわし、いわし、かつお、にじます、貝類

葉酸欠乏性貧血(megaloblastic anemia)

体は多くの葉酸を貯蓄することができないので、葉酸を豊富に含む食べ物が不足しないように食べる必要があります。葉酸が欠乏する貧血では、赤血球が異常に大きくなります。

■葉酸が欠乏しやすい状態
貧血の原因としては、食事からの葉酸不足(偏食、小食、高齢者、果物・野菜を食べない人)、アルコールの乱用者、溶血性貧血などがあります。妊婦も貧血リスクがあがります。

■貧血の症状
初期症状としては、疲労感、頭痛、青白、口内炎などがあります。症状が進むと、不妊、縮れた白髪、皮膚の色が濃くなる、心不全などにつながります。

■葉酸を豊富に含む食べ物
芽キャベツ、ほうれん草、アスパラガス、卵(卵黄)、納豆、ブロッコリー、ケール、枝豆、オクラ、ニンニクの茎、サニーレタス
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