「アメ」と「ムチ」が交錯する2013年度税制改正 「住宅ローン減税」は4年延長へ
さて、こうして取りまとめられた税制改正の中身を見てみると、まさに「アメ」と「ムチ」が入り混じった内容になっています。
まず、「ムチ」とは消費税率の引き上げです。昨年8月に消費税増税法案が可決・成立したことで、2014年4月から8%、15年10月から10%へと2段階で税率が引き上げられる予定です。「景気弾力条項」(経済状況いかんによっては増税を停止する)により、今秋の経済状況を見たうえでの最終判断にはなりますが、早々に10兆円規模の緊急経済対策が閣議決定されており、景気を暗転させない(=増税を実施できる)よう景気浮揚に向けた地ならしが進んでいます。
誤解のないよう補足しておくと、税制改正大綱に直接、消費増税が盛り込まれているわけではありません。「何としてでも消費増税を実現したい」という政府サイドの“思惑”が込められているという意味です。この点については、自民党も「来年4月に第一段階の税率引き上げが予定される消費税増税に向けた対策を重視した内容」と税制大綱についてコメントしており、税率引き上げに対して国民の理解が得られるよう試行錯誤している様子がうかがえます。
他方、「アメ」とは住宅ローン減税の延長・拡充です。住宅投資は経済効果が大きいため、政府としては内需拡大の観点からも住宅流通を促進させたい狙いがあります。景気は弱めに推移しており、長引く円高にデフレ不況、成長機会や若年雇用の縮小と閉塞感は深刻さを増しています。こうした危機を打破するためにも、住宅市場の活性化は喫緊の課題です。
もちろん、消費者サイドにとっても持ち家取得が促進されれば、居住水準の上昇による生活レベルの向上が期待できます。国民1人ひとりがライフステージに応じた住宅を無理のない負担で安心して選択できるようになれば、生活基盤の安定につながります。老後に対する将来不安の払拭にもなるでしょう。
こうした利点を内包した住宅ローン減税が、13年度税制改正により延長・拡充される見込みです。一体どのように見直されるのか、以下、その改正内容を見てみましょう。
最大控除額に満たない人に配慮し、増税負担を緩和できる「給付措置」を検討
振り返れば、直近で住宅ローン減税制度が改正されたのは2009年度でした。当時の総理大臣だった麻生首相が住宅ローン減税に強い関心を示しており、「生活防衛のための緊急対策」として麻生内閣の下で追加経済対策が取りまとめられ、09年度税制改正で5年間の延長が取り決められました(表1)。
【給付措置の実施ポイント】
- 住宅ローン減税の拡充措置を講じても、なお効果が限定的な所得層に対して実施する
- 税制において、当面、特例的な措置を行なう2017年末まで一貫して実施する
- 減税措置とあわせ、住宅取得に係る消費税負担増をかなりの程度、緩和できるようにする
- できるだけ早期に、遅くとも今夏には給付措置の内容を示す
瑕疵保険に加入すれば、築25年超のマンションでも住宅ローン減税が適用される
中古住宅に対しては、住宅ローン減税の適用条件が一部緩和される予定です。従来の築年数要件に加え、新たに「既存住宅売買瑕疵(かし)保険に加入していること」が適用条件の1つに追加されました。これにより、耐震基準に適合していない築25年超のマンションでも住宅ローン減税が適用されることになります。中古住宅のすそ野を広げたいという政策的な意図が見て取れます。【中古住宅に対する住宅ローン減税の適用条件】(改正案)
- 木造住宅は築20年以内、耐火住宅は築25年以内(築年数要件)
- 耐震基準に適合していることが証明された住宅(この場合、築年数は問わない)
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること(この場合も、築年数は問わない)
※上記(1)(2)(3)のいずれか1つに該当すれば、中古住宅でも住宅ローン減税の適用が受けられるようになる。
マイホームの購入検討者は来るべき消費増税との負担バランスを勘案しながら、どのタイミングで購入を決断するのが得策か?―― 各自、「消費増税の追加負担額」と「住宅ローン減税による還付額」をシミュレーションし、両者の多寡を比較しながら最適なタイミングを見つける必要があります。せっかく拡充される住宅税制を無駄にする手はありません。上手に活用したいものです。例年通りであれば、年度末(2013年3月末)までには決定します。今後の政治動向に注目し、その成り行きを見守りましょう。