ワイン/ワイン産地と生産者のレポート

函館元町にワイン醸造所&ショップ「農楽蔵」オープン(3ページ目)

昨年9月、函館山の麓の街にワイン醸造所「農楽蔵(のらくら)」が生まれた。和洋折衷の魅力あふれる函館市元町に溶け込む小さなワイナリーで、2013年1月13日には醸造所2階にショップもオープンした。蔵と人とその味わいをご紹介しよう。また、飲める店買える店も合わせてご紹介。

友田 晶子

執筆者:友田 晶子

日本酒・焼酎ガイド


実は、自家ヴィンヤードも所有

畑2

雪のぶどう畑をバックに、佐々木夫妻

現在は道内の農家さんからブドウを調達しているが2011年から自分たちのぶどう畑を所有した。場所は函館の隣北斗市だ。2015年に北海道新幹線の駅ができることで注目の地でもある。畑の広さは3ヘクタール。決して広くはないが、しかし二人で開拓し植樹をするにはかなりの体力がいった。

雪に覆われた畑に立つと、南のほうに函館山が望める。ここを選んだ理由は「南東向きでブドウの育成に不可欠な朝日が十分に得られること」「白ブドウの酸の保持がいいこと」「他県よりも昼夜の寒暖差が大きいこと」「シャルドネ向きの気象データを持つ地域であること」「近隣にシャサーニュやサントーバン(ブルゴーニュの銘醸白ワイン産地)に似たジュラ紀の石灰岩があり、それを利用できること」とさすがフランス国家認定農業上級免状(BPA)取得者らしい観点で語る佐々木さん。

函館山夜

函館山からの夜景

「それに、親が近くに住んでいるから」とも付け加える。なんだかちょっとほっとする理由だ。現在はシャルドネがほとんどだが、ピノ・ブーロやショルドネ・ローズなどを植え、いずれ自分好みの味に造りかえていくとのこと。栽培はもちろん、無化学農薬栽培、無化学肥料栽培で、有機認定を取得するのが目標だ。ワイン好きにはなんともわくわくする話だ。



買える店・飲める店、購入方法は?

さて、購入はどうしたらいいのか。お勧めしたいのは函館観光の際に「農楽蔵ショップ」をのぞいて購入すること。佐々木夫妻と話ができるかもしれない。ただし、ショップは常に開いているわけではない。オープン日のスケジュールと場所はこちらをチェックしてほしい。ぜひ、確認してからお出かけを。

あわせてリリースされるワインのスケジュールを確認して好みのワインを狙っていくのもいい。

函館ではなく、近所のお酒屋さんで買いたいときは、全国の特約酒屋さんリストをチェック。

函館の特約酒屋さんの一つ「サケブティック 越前屋」さんをお尋ねした。

越前屋

サケブティック越前屋は階上にもさまざまなお酒が

創業大正10年の老舗。ルーツは越前(福井)ということで福井出身の私は他人とは思えない気持ちに…(笑)。店内に並べられた国産・輸入ワインの品ぞろえは目をみはるものがあるし、日本酒・焼酎・ビールのラインナップもすばらしい。オリジナルのラベルも作ってくれる。お土産にいかがだろうか。商品は自分の舌でセレクトしている。質問にも親切に答えてくれるおすすめのお酒屋さんだ。

そのほか、一般の人で購入したい人は「Nora-club」の会員なるという手もある。ただし2012年分は終了。次の募集は狙おう。人気が高いことは今から覚悟。



函館市内で飲める店(飲食店)はこちら。まだ掲載は少ないがこれから増えるそう。今回お勧めしたい飲める店2件を紹介しよう。

■驚くべき洗練度のイタリア料理「エノテカ・ラ・リコルマ」
ノラブラン

リコルマの前菜「函館産真鱈白子のコトレッタ スパイシーなドライトマトソース」とノラ・ブラン・シャルドネ。

地元産の食材のみで勝負する。オーナーシェフのご主人とソムリエとしてサービスをする奥様と若いスタッフで運営する落ち着いた隠れ家的レストラン。「散布(ちりっぷ)産ばふんうにと野付産天然ホタテ貝のタルタル」や「噴火湾産毛ガニを詰めたラビオリ」「七飯町福田農園の王様しいたけのリゾット」「瀬棚町よしもりまきばの仔羊肉の煮込みソース 自家製キタッラ」・・・と食いしん坊にはたまらない皿ばかりが並ぶ。もちろんあわせるのは農楽のワインだ。地方都市の地元食材を使うレストランでこれほど洗練&研究されたイタリアンはあまりないのではないか。メディアで知られる地方レストランの有名シェフでも意外に味はいまいちというところがある昨今だから…。カジュアルに楽しめるが通も満足できる店。食に興味がある人には本当にお勧め。予約すべき。

住所:〒041-0811 北海道函館市富岡町2丁目33−12
電話:0138-42-8303
ランチ11:30~13:30/ディナー18:00~20:30(LO)
定休日:火曜日、水曜日のランチ


■酒匠のいる「鮨処 ひろ季

ひろ季

鮨処ひろ季の和美女将は世界きき酒師コンクールのファイナリストだ

北海道、函館と言えばお寿司。お店のたたずまいは落ち着いた高級店だが、比較的カジュアルに楽しめる店。近海物のネタはもちろんのこと、きき酒師や酒匠の資格を持つ女将は2012年世界きき酒師コンクールのセミファイナリスト。農楽ワインのほか日本酒、焼酎を上手に楽しませてくれる。この季節に堪能できるのは無添加のウニの刺身やウニの塩辛(ご主人のオリジナル)、蝦夷アワビだ。生臭みを感じさせない農楽ワインとの組み合わせを体験してほしい。



<おまけ>
ワインにピッタリのチーズ工房「山田農場チーズ工房

チーズ工房

手作り感満載の山田チーズ工房

農楽ワインとベストマッチのチーズをご紹介しよう。函館市の北隣、亀田郡にある「山田農場チーズ工房」だ。
畜舎やチーズ工房・住宅までも自分たちで建て自給自足を目標に家族経営をされている。雪に埋もれた木造りチーズ工房の向かいには白い息を吐くブラウンスイス(乳牛)や山羊さん羊さんがおとなしく佇んでいる。かなりのナチュラル、いやワイルドといった環境にみえるが、この日購入したセミハードの「トム」は本格派の味わいで実に奥深く洗練された旨味を楽しめる。

トム

ハードタイプのトムは、そのままでも焼いてもおいしい

なんでも、山田さんは国産チーズのリーダー的存在である共働学舎新得農場(きょうどうがくしゃしんとくのうじょう)でチーズ製造を担当されていたのだとか。函館から少し足を延ばして工房で直接購入するのがお勧めだが、通販もしている。






さて、おもわず長くなってしまった「農楽蔵」の紹介だが、今回の訪問は函館そのものの魅力も再発見できた。函館のワインはやはりまずは函館で楽しみたいと感じる旅でもあった。雪の函館、春の函館、新緑の函館、初夏の函館、秋の函館・・・とそれぞれの季節にそれぞれの魅力を体験させてくれるだろう函館に、あなたも旅をしてみないか? もちろん「農楽蔵」をのぞくのも楽しみの一つに入れてほしい。
また、農楽蔵は始まったばかりのワイナリー。生産量も少ないしラインナップも変更があるだろう。ワインファンとしては温かく見守りたいワイナリーだ。日本ワインファンの皆様、応援をどうぞよろしく。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます