浅重心が飛びの秘密
何故、こうしたFWが登場し、それがメーカーの販売戦略の核になるような商品になるかですが、まず考えられることは、ドライバーの性能向上がやや頭打ちになっていることが考えられます。ドライバーには、フェースの反発性能の規制をはじめ、ヘッド体積や慣性モーメントの規制、長さの規制などルール面での制限に比べ、競争過多になっている側面があります。
ここ数年のテーラーメイドのドライバーは「R9」からスタートした弾道調節機能、「R11」から始まった白いヘッドが人気を集めています。必ずしも飛ぶ、とか曲がらない、ではないわけです。
一方、フェアウェイウッドの性能はドライバーに比べるとまださまざまに改良の余地があり、プラス17ヤードといった革新的な性能を実現できたのだと思います。そこまで圧倒的な性能が実現出来れば、強力にゴルファーに訴求できるクラブになりえるわけです。
「RBZ」や「X HOT」に代表される飛びのフェアウェイウッドに共通する特徴は、重心位置を浅く低く設定していること。そうすることによって、クラブはバックスピンのかかりにくい低スピン性能になります。スピン量が多く飛距離をロスしていたゴルファーが、吹き上がるような弾道から、飛距離の出る棒球と呼ばれる弾道になり、劇的な飛距離アップが出来たようです。
今年発売のモデルは、そうした動向を受け、低重心かつ浅重心の物が多く見られます。
“高速キャビティバック”と呼ばれるソールをキャビティ形状にしたナイキ「VR_S コバート」は、タイガー・ウッズが長年使用したクラブからスイッチしています。タイトリストの「913Fd ロースピン」は、ソールの前方にSure Fit™ Tourウェイトと呼ばれる交換可能なウェイトを使って、重心位置を浅く設定できるようになっています。「RBZ」のスピードポケットと呼ばれる“溝”も低重心、浅重心の効果があると思われます。
こうした特徴は、どちらかと言えばヘッドスピードの速いゴルファーにメリットがあります。男子プロのような強烈なパワーを持つゴルファーがエネルギーロスを抑える意味ではとても効果的です。一方、パワーがなく、スイングも定まらないゴルファーには難しくなる側面もあります。
こうした“飛び”のフェアウェイウッドを使いこなすには、十分にボールをあげられるロフト角とミート率を高めるシャフトの選択が重要になるでしょう。
国内メーカーにもプロギア「eggスプーン」やリョーマゴルフ「D-1F」のような優れた“飛び”のウェアウッドがありますが、今後は他の国内メーカーもFWの飛距離性能をアピールするような商品で追随すると思われます。各社のラインナップがそろってきたとき、FWでの戦いもドライバー同様に過熱するものと思います。