雑穀文化の中の最高のサービス「おもてなしの心意気」

 

 

 

 

先日、盛岡の「東屋本店」を訪れました。連れは10人ほどの大人数。二階のお座敷に通されました。みんな盛岡に着いたばかりで、まだ仕事をしていなかったので、少々時間のかかる「わんこそば」は頼むことはできませんでした。

「はい、どうぞ!」「じゃんじゃん!」「もう一杯どうぞ!」「はい、よいしょ!」「はい、どんどん!」

先程から隣りの部屋との襖を隔てて従業員のおねえさんの掛け声が聞こえています。

岩手は山形、長野と並び、そばの美味いことで名を馳せています。寒冷地で夏でも寒暖差があることから、そばの生育には向いています。米中心の江戸時代。夏、岩手では冷たくて湿気を帯びた東北からの風「山背(やませ)」が長い間吹いて冷害を招きました。

これでは稲が育たないと分かると、青稲を刈り、そばを撒きました。65~70日で刈り取りができるそばは無くてはならない穀物でした。稲の収穫があっても、米は上納するもので、そば粉をそのまま食べるか、練ってゆでた「そばがき」「ひっつみ」などを常食としました。

年に何回かある集落の集団行事の打ち上げの宴席では庄屋さんは最後に
出す料理「留め椀」としてそば切り「お立ちそば」を出し、蔵のそば粉がなくなるまでそば切りを食べさせようとしました。

とは言え大勢の客の分を一遍にゆでることはできないので、例えば10人前のそばを100人前に分けて出しました。何度も、何度もゆでては分けて「もっと食え、もっと食え」と供応しました。雑穀文化の中の最高のサービス「おもてなしの心意気」です。

戦後まもなくのこと。一杯のそばを三分の一に分け、三分の一の値段で「斉藤そば屋」が出したのが「わんこそば」のルーツだそうです。東北新幹線の開業と相まって「盛岡イコールわんこそば」となりました。ちなみに椀の数、東家本店では1万個を超えるといいます。以前、亡くなった東屋の馬場さんに聞いたお話です。

おっと、私が頼んだ「かき揚げそば」が出てきました。そのかき揚げの厚さたるや「どうやって揚げるのだろう」の素朴な疑問が浮かびましたが、美味しさが打ち消してくれました。


■そば処 東屋(あずまや) 本店
住所:岩手県盛岡市中ノ橋1-8-3
TEL:019-622-2252
ホームページ:そば処 東屋
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