アメリカと異なる選考のヨーロッパの映画祭
●世界三大映画祭
アカデミー賞とゴールデン・グローブ賞以外で、受賞すると宣伝のキャッチコピーに大々的に使われるのが、世界三大映画祭の受賞作です。カンヌ映画祭、ベルリン映画祭、ヴァネチア映画祭ですね。
日本映画も多く出品されるので、受賞チャンスも多いのがこれらの映画祭。カンヌ、ベルリン、ヴァネチアの三大映画祭で受賞をしている黒澤明監督。またベルリン映画祭で宮崎駿監督が『千と千尋の神隠し』で金熊賞を受賞、寺島しのぶが『キャタピラー』で女優賞を受賞。ヴェネチア映画祭では北野武監督が『HANABI』で金獅子賞『座頭市』で銀獅子賞受賞、染谷将太と二階堂ふみが『ヒミズ』でマルチェロ・マストロヤンニ賞受賞など、数多くの日本映画が歴代の受賞リストにあります。
また世界三大映画祭の特色は、審査員が選ぶ賞であるということ。審査委員長の趣味嗜好が受賞結果に色濃く反映されるのですね。だから、この映画祭でグランプリに値する賞を受賞しても、ゴールデン・グローブやアカデミー賞はスルーされるというのはよくあること。でも三大映画祭のいずれかで受賞し、アカデミー賞も受賞したら、それは世界中が認める傑作!ということになるでしょう。
最高賞はアカデミー外国映画賞候補になるか?
・カンヌ国際映画祭
フランス南部コートダジュール沖のカンヌで開催される映画祭。出品作品の中から、最高賞であるパルム・ドール賞ほか、審査員特別グランプリ、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、審査員賞、脚本賞、カメラ・ドール賞(監督新人賞)が選ばれます。2013年の映画祭は5月15日から開催されます。
2012年のパルム・ドールはミヒャエル・ハネケ監督作『愛、アムール』(3月9日公開)。ちなみに、同作は、第85回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞、脚本賞、外国映画賞候補になっています。カンヌでパルム・ドールを受賞し、アカデミー賞でも作品賞を受賞したら、それはものすごい快挙となります!
・ベルリン国際映画祭
ドイツのベルリンで開催される映画祭。最高賞は金熊賞、続いて銀熊賞、審査員グランプリ、監督賞、男優賞、女優賞、脚本賞などがあります。2013年のベルリン国際映画祭の審査委員長はウォン・カーウァイ監督、2月7日から開催されます。
ちなみに2012年の金熊賞はパオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ監督作『塀の中のジュリアス・シーザー』(イタリア/1月26日公開)。でもこの映画はアカデミー賞ではスルーされ、本映画祭で男優賞と脚本賞を受賞した『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』(デンマーク/4月公開)と女優賞を受賞した『魔女と呼ばれた少女』(カナダ/3月9日公開)がアカデミー賞外国映画賞候補になっています。
・ヴェネチア国際映画祭
イタリアのヴェネチアから水上バスで行く高級リゾートであるリド島で8月末から9月上旬まで行われる映画祭。最高賞は金獅子賞、続いて銀獅子賞、審査員特別賞、男優賞、女優賞、マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)、オッゼラ賞(脚本賞・技術的貢献賞)があります。
2012年の金獅子賞は韓国のキム・キドク監督作『Pietà』。銀獅子賞はポール・トーマス・アンダーソン監督作『ザ・マスター』(3月22日公開)。『ザ・マスター』はホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンが男優賞も受賞しています。こちらも最高賞を受賞したキム・ギドク作品はアカデミー賞外国映画賞をスルーされ、銀獅子賞の『ザ・マスター』が主演男優、助演男優、助演女優の各賞の候補になっています。まあ、これはアメリカ作品だから……というのはありますけどね。
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