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アクオスを名乗らないシャープのフラグシップ4Kテレビ(2ページ目)

シャープ"ICC ピュリウス"LC-60HQ10は画面解像度3840×2160の4Kテレビです。しかし、本機は単なる画面解像度の高密度化に止まっていません。4Kパネルを手段と考え、テレビがこれから人間に何を見せ感受させるのかという一段高い領域に踏み込んでいるのです。それではLC-60HQ10のどこが他と異なっているのかを明らかにしてみましょう。

大橋 伸太郎

執筆者:大橋 伸太郎

テレビガイド



LC-60HQ10はなぜ60Vワンサイズなのか。
ICCはテレビの何を変えるのか。
 

実際に搭載されたLSIの外観は違っています

LC-60HQ10に搭載されたICC LSIのイメージ。実際に搭載されたものの外観は違いがある


読者はなぜLC-60HQ10が60Vというパネルサイズを選択したか、に興味をそそられるのではないでしょうか。新たなブランド名ICC PURIOSの背景となったICC技術によって狙っている世界が、ここから浮かび上がってきます。

本機は光クリエーション技術“ICC”をワンチップLSI化して搭載しています。ICCは、Integrated Cognitive Creation(統合脳内クリエーション)の略で、東京都世田谷区に所在するI3(アイキューブド研究所)が開発した技術です。大まかに言えば一種の超解像技術と考えてよく、4K映像の高画質化にも効力を発揮しますが、今回は現在の映像の主流である2Kのアップコンバートに主たる照準を合わせています。

ICCについてもう少し突っ込んで解説しましょう。人間は自然の景色や被写体を光の刺激として視覚を通して脳で認知し、行動に利用したり記憶に残します。この認知過程に着目しディスプレイ(テレビ)を使った映像視聴の際に、それを再現し利用するのがICCというわけです。

ICCのLSIは、実際の情景を肉眼視する場合と同様の光刺激を得ることを目的に4K ICC画像の創造を行います。映像視聴の際に脳に負荷を掛けてなくとも、過去の記憶から実際の情景をイメージしやすく現実感に富む映像体験を実現します。

それでは、ICCが入力された映像をどう処理するのか、ですが、映像信号処理の高画質化・精密化だけでなくパネル制御技術を組合せることが特徴。ポイントは<フォーカス感>と<(光の)鮮度>への着目。人間の視覚のフォーカスと撮影カメラの合焦範囲の差から生まれる細部情報の差、そして光が事物の色彩と質感を生み出すことを重視し、映像プロセスで失われた微細情報と光の鮮度、微妙な明暗コントラストを復元し映像に加味し、ICCは力強くリアリティに富む映像を生み出します。

解析とマッピング技術の応用で4Kに相応しいフォーカス感とディテールの改善が達成出来ても、ICCの狙い通りテレビの映像が人間の視覚に限りなく寄り添うためには、画面密度とその器となる画面サイズの厳密な一致が求められます。

高解像度映像の一つの基準としてシャープが参考にしたものが、一眼レフスチルカメラの解像力でした。高画質一眼レフの場合、最大ミリ当り8本になりますが、これをディスプレイに当てはめると、テレビがICCの狙う自然映像のリアリティを実現するためには、最低ミリ3本が必要で4Kの場合60Vという画面サイズがピタリ一致するのです。

もう一回り大きい70Vの画面サイズでは最早ICCが狙う情報密度が得られないそうです。LC-60HQ10が60Vという画面サイズを採用したのには、ICCの効果を最大限忠実に表現することが目的にあったわけです。

サイズともう一つ、ICC搭載にあたってLC-60HQ10が最大限志向したものが、<フラットな光のカンバス>を実現することでした。LC-60HQ10は初の4KTHX認定を受けたテレビです。つまり、直下型バックライトを採用しますが、ローカルディミングをスコープサイズの映画ソフトを入力した際の黒帯の輝度調整にのみ限定しています。

LC-60HQ10は直下型LEDの使用目的が他と違うのです。画面の部分部分を明るくしたり暗くしたりの作為的な明暗操作でなく、画面の均一な輝度を実現するために直下型を採用したわけです。実際に上下部分の輝度の一致には驚くべきものがあります。

もう一つ<フラットな光のカンバス>実現と関連するのが、映像の入力に対する出力の応答特性つまりガンマカーブの設定でした。従来は凹凸のあるカンバス上に、暗部階調を寝かせ高輝度部分を持ち上げる設定が基本でしたが、今回ICCの前提のフラットなカンバスを実現するためにほぼリニアな設定になっています。(暗部を僅かだが寝かせています。)次のページで、こうして生まれた最初のICC ピュリオス LC-60HQ10の画質を実際に確認してみましょう。
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