企業の人材採用

人材採用で分かる良い会社

良い会社を見分けるには、経営指標や従業員満足度調査などの内部情報だけでなく、その会社の人材採用の仕方を外から観察するだけでもある程度のことが分かります。常に人材を募集している会社、選考基準が甘く、採用手続きがおざなりの会社は良い会社ではない可能性が高いです。

本田 和盛

執筆者:本田 和盛

企業の人材採用ガイド

高収益と働きやすさを両立しているのが良い会社

高収益と働きやすさの両立が良い会社の条件

高収益と働きやすさの両立が良い会社の条件

社会的にみて「良い会社」と言われている企業があります。つい最近までは、給料が高く、雇用が安定している大企業が良い会社と評価されていました。しかしバブル崩壊後に大企業が次々と倒産に見舞われ、リーマンショック後には、安定雇用を信条としていた優良企業でも人員削減を行うなど、企業規模だけで会社の善し悪しを判断することは難しくなっています。定年までの安定雇用が難しいとなると、良い会社とは、当面の雇用が安定している継続的に高収益を上げられる会社とした方が適切だと思います。

また良い会社の基準も変わってきています。長時間労働などの過重労働をいとわない猛烈社員は少なくなり、就労環境が良く快適に働ける会社、ワーク・ライフ・バランスが保たれている会社、社会に貢献している会社が良い会社と考えられるようになっきています。

仮に「継続的に高収益を上げつつ、働きやすい会社」がこれからの良い会社だとすると、そういった会社は何を見たら分かるのでしょうか。具体的には各種の経営指標や従業員満足度調査の結果などを見なければなりませんが、会社がどのような採用の仕方をしているのかを見れば、外部からでもある程度見当がつきます。

企業の収益環境は採用ニーズに現れる

企業が人材を採用するのは、採用ニーズがあるからです。採用ニーズとは、採用を行う理由・原因のことです。この採用ニーズを見れば、会社の置かれている収益環境が分かります。採用ニーズは、増員と退職者の補充の2つに大きく分けられます(上場準備など期間限定の一時的なニーズに基づく採用、ローパフォーマー従業員の入れ替えというニーズなどもありますが、ここでは触れません)。

増員の場合は、会社の業績が好調であることが分かります。人材を1人採用するだけでも人件費が年間数百万円以上増加しますので、そのコストに見合った収益が見込まれていないと増員はありえません。

退職者の補充は、定年退職者はもちろんのこと、定年を待たずに他社に転職した人材の穴埋めのためのニーズです。新卒一括採用は、即戦力にならない人材を採用し、時間をかけて社内で育成するという世界でもまれな制度ですが、長期的に見た場合の退職者の補充に当ると思います。

増員の場合は業績が上向きということで、当面は良い会社であると言えます。よく求人誌などに「業績拡大につきスタッフ大募集」といった文言を見かけますが、これは良い会社であることをアピールするためのものです。

常に人材を募集している会社は要注意

新聞や雑誌の求人欄を定期的にウオッチしていると、頻繁に求人広告を出している会社があることが分かります。このような会社は求人を出しても人材が集まらない、労働条件があまり良くない企業である場合が多いようです。仕事内容・業務負荷、就業環境などが労働条件(賃金等)とアンマッチな会社には人は集まりません。このような会社は特定の業種・業界に多く見られるようです。

また頻繁に求人広告を出しているということは、それだけ従業員が定着しない会社であるということも想定されます。私が知っているある会社では、経営者がパワハラをしていたために課長クラスの人材が定着せず、常に求人広告を出していました。課長クラスが定着しない会社は、その下の担当者クラスの人材が実務の中核にならざるを得ず、その結果、課長よりも担当者の方が専門性で勝りパワーが逆転してしまうことがよくあります。この会社では、課長クラスが上からのパワハラだけでなく、下からのパワハラ(突き上げ)も受け、ますます居づらくなっていました。

実際、「職場のいじめ・嫌がらせ」といったパワハラ問題が急速に増えています。全国の都道府県労働局に寄せられた労働相談の内訳(2011年度)を見ると、「解雇」が18.9%と最も多く、「いじめ・嫌がらせ」の15.1%が2番目に続いています。人材が定着しない会社には、パワハラ問題が隠されていることがあります。

選考手続きが甘い会社はブラック企業の可能性がある

採用手続きがおざなりな会社には気を付ける

採用手続きがおざなりな会社には気を付ける

採用選考の手続きが甘い会社も要注意です。大学生の就職が困難な昨今、ブラック企業という言葉が若者の間に広がっています。ブラック企業とは暴力団のフロント企業という意味では無く、サービス残業や賃金カット、パワハラなどが横行している労働条件や労働環境が劣悪な企業のことを指します。

就職活動で応募した企業に次々と門前払いされ、唯一内定が出た会社がブラック企業だったとなれば、本人にとっては深刻な問題です。応募している会社がブラック企業かどうかを見分けるには、インターネットの検索エンジンに、会社名と「ブラック」という単語を打ち込んでネット上の口コミなどをチェックすることが一般的なようです。しかし匿名のネット情報は真偽が定かでないものも多く、実際のところは良く分かりません。

むしろ内定が出た会社の採用選考の手続きが、他社に比べて甘くはなかったかどうかを振り返ることで、ブラック企業であるか否かが分かることがあります。ブラック企業は、内定者が入社後に退職することを見越して相当多めに採用するので、採用基準が甘く、採用手続きもおざなりになりがちです。

必要以上に多くの人材を採用する企業は、採用した人材に過重な労働条件を課し、ふるいにかけ、その中で生き残った人材だけを雇用するというスタンスの会社です。チャレンジングでハードワークが好きな方にとっては良いでしょうが、よい会社とは言えません。

リストラだけでは良い会社か否かは分からない

大手電機メーカーなどのリストラ報道が一昨年から目立つようになってきました。安易なリストラは問題外ですが、リストラを行っているからといって一概に悪い会社とは言えません。リストラは企業体質の強化という点では、むしろ望ましい場合もあります。良い会社の条件である高収益で働きやすい環境を維持するためにも、必要の無い人材を抱え込んでいる余裕はありません。

日経新聞社の2012年「働きやすい会社」調査(2012年9月29日発表)では、電機メーカー各社が上位にランキングされています。良い会社とは、まさに今現在その会社で働いている人にとって良い会社であれば十分に条件を満たします。

これまでの良い会社が定年までの雇用を保障してくれる企業であったとすると、これからの良い会社とは、「能力開発を怠らず仕事にコミットしている人材を支援する、高収益で働きやすい会社」となりそうです。良い会社に就職し、良い会社で働き続けるためには、従業員自身が良い人材であり続けることが必要なのでしょう。

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