輸入車/注目の輸入車試乗レポート

2012、心に残る12台(3ページ目)

昨年“予想”した通り、2012年もまた、日本にやってきた輸入車のレベルはとても高く、話題も豊富でした。また、渾身の内燃機関技術のマツダCX-5、“乗って楽しいFR”トヨタ86/スバルBRZなど国産車にも明るいニュースが。そんな2012年の“心に残った輸入車”を1月から順に振り返ってみました。

西川 淳

執筆者:西川 淳

車ガイド


July
ランボルギーニ ガヤルド スーパートロフェオ・ストラダーレ

ランボルギーニガヤルドスーパートロフェオ・ストラダーレ

ワンメークレースモデルをベースとした世界限定150台の“究極のガヤルド"。CFRP製パーツを多数用いるなど軽量化が図られている。価格は3136.875万円(eギア)

ランボルギーニガヤルド

今年11月にマイナーチェンジを受けたガヤルドLP560-4。エクステリアデザインが変更され、よりシャープなフロントマスクとされた。価格は2476.425万円

まだこの後に、フェイスリフトするなんて思ってもみなかった(秋のパリショーに登場)から、スーパートロフェオ・ストラダーレに乗ったとき、これが最後のガヤルドだ!として大絶讃した。もちろん、その気持ちには、顔の変わった本当に最後のガヤルド(来年夏前まで生産)を見た今だって変わらない。とにかく、ノーズがクイックに、カラダがヴィヴィッドに、よく動く。マクラーレンほどではないにせよ、延々に曲がっている道が欲しいと思うほど、気持よく曲がってくれる。そこに、V10の図太いパワーフィールとサウンドが加わって、乗って楽しいという意味においてはアヴェンタドールを上回った、とさえ確信した。リアウィングもよく利いていて、サーキットで試したときには後輪を押さえつける力が背中にまで伝わってきたものだ。乗って楽しいスーパーカー、ランボルギーニではこれが極み。おそらく、ガヤルド後継車は、この路線になるのだろうなあ。来年秋、デビュー予定。

August
M・ベンツ C63AMG ブラックシリーズ

M・ベンツ C63AMG ブラックシリーズ

メルセデスAMG社がモータースポーツで培ったテクノロジーを注ぎ込んだ少量限定生産モデル。517ps/620Nmの6.2リッターNAエンジンを搭載する。日本では50台限定とされ、価格は1500万円

8月は例によって趣味の月。12年もまた、ペブルビーチ三昧だったけれども、モントレーに行く前に日本で試乗した、M・ベンツC63ブラックシリーズとアウディRS5(マイナーチェンジ)の印象が強く残っている。特に前者。11年にラグナセカで乗ったときはサーキット試乗だけだったので、公道で試すのは今回がはじめて。東京~山形を往復してみたのだけれど、これが最高に幸せなひとときだった。全般的にフラットでソリッドな乗り心地の極北にあって街中はちょっと辛かったりするわけだけれども、高速域旋回での安定感とアシの動きの心地よさにはもうシビレっぱなし。ある意味、最新のスーパーカーよりもハードな乗り物で、公道を走るレーシングカーのようなスパルタンさの虜になった。文句ナシ、今年イチバン欲しいと思った1台。

September
ミニクロスオーバー JCW

ミニクロスオーバーJCW

JCWとしては初の4WDモデル。ミニ クーパーS クロスオーバー オール4をベースに、218psの1.6リッターツインスクロールターボを搭載、6MTと6ATを組み合わせる

M・ベンツCLSシューティングブレーク

“4ドアクーぺ”CLSのスタイリッシュさはそのままにラゲージスペースを拡大した“スポーツクーぺツアラー”。日本では350(970万円)、4WDの550(1240万円)、ハイパフォーマンスモデルの63AMG(1680万円)をラインナップする

8月をほとんど遊んで過ごすと、9月はえらいこっちゃ、になる。これまた、例年と同じパターン。モンテレーの週末がある限り、ずっとそうだろうなあ。というわけで、9月、取っ替え引っ替え、軽自動車からスーパーカーまで、実に様々なモデルに試乗したが、最も強烈なインパクトを残したフェラーリ458チャレンジナンバー付きはともかく、印象深かったのはM・ベンツCLSクラスシューティングブレークとミニクロスオーバーJCW(ジョン・クーパー・ワークス)だった。シューティングブレークは、その妖艶なスタイリングに参った! と思っていたら、乗ってもクーペセダンより洗練されていて、買うならゼッタイにこっちだと確信。そして、そんなシューティングブレークよりも乗ってさらに感動したのが、ミニクロスオーバーJCWだった。個人的には、でっかいミニ(がまんしないミニ)というコンセプトがダメ。まるで受け入れられないのだけれども、走りっぷりにはかなり感激した。JCWというから、もっとハードな乗り味を期待していたら、いい意味で裏切られたのだ。めちゃくちゃ洗練されたスポーティ味。このアシだけ、欲しいよな。

October
マクラーレン MP4-12Cスパイダー

マクラーレン MP4-12Cスパイダー

CFRP製カーボンモノコックボディを採用するミドシップスポーツのオープン版。600psの3.8リッターツインターボを搭載する。日本価格はクーぺより210万円高の3000万円

458スパイダーで幕を開けた12年。それを上回る感動に10月のスペインで遭遇した。マクラーレンが満を持して投入したMP4-12Cスパイダーである。このクルマもまた、458スパイダーと同様の開閉式ハードルーフシステムをもつスーパー・オープンカーなのだけれども、その街中の乗り心地といい、サーキットでのドライビングファンといい、まったくと言っていいほどクーペと変わらなかった。よく似たクルマ同士でがちんこのライバルなのに、458がクーペとスパイダーとで少し性格を変えたのとは方向性が違っていて面白い。ブランドの考え方の違いである。クーペのままリアウィンドウを下げてサウンドを楽しむドライブもよし、オープンにして風を感じながらゆっくりクルージングもよし、もちろんトラックアタックもいと楽し。そのうえ、実用性でもクーペにまさる。ただ、こうなるとフェラーリ458以上にクーペの存在理由が問われてしまうことだろう。クーペは今後、ライトウェイトバージョンに絞るなど、マクラーレンらしさをもっと演出して欲しいと思う。

November
ランボルギーニミウラ&フェラーリBB

ランボルギーニミウラ

1965年のトリノショーでシャシーのみが初めて登場した、ミウラの最終型となるSV。4リッターV12エンジンを搭載する

10月と11月は、とにかく趣味のクルマのイベントだらけの月で、そのうえ自前のイベント(CARZY Live)までやったものだから、もう大忙し。ラフェスタ・アウトゥンノやラリー日本といったクラシックカーイベントにもCo・ドライバーで参戦した。これだけ趣味三昧なクルマたちに触れてしまうと、スーパーカーの新型車(フェラーリカリフォルニア30、ランボルギーニガヤルド スーパートロフェオ・ストラダーレ、マクラーレンMP4-12C、ポルシェターボ、M・ベンツSLS AMG、コルベットZR-1などなど)に乗りまくったにも関わらず、さほど印象に残らない。ましてや、ランチア改めクライスラーイプシロンや、同300、M・ベンツCLSシューティングブレーク日本仕様も、役不足な感は否めず。というわけで、わが誕生月であることに免じて、12年11月の“顔”は、ミウラとBBということにしたい。とある日曜、50年代のジャガーから、最新のマクラーレンまで、各年代のエポックなスポーツカーを“サーキット”動態保存されているオーナーの厚意で、60年代を代表するミウラSVと、70年代を代表するフェラーリ365GT4BBに試乗させてもらった。いや、もうサイコー。何が最高って、やっぱり12気筒が空気を吸い込む音。万文は一乗に如かず。わが自動車人生のスタートは、確かにここにあった、初心忘るべからず、と慌ただしい年末に貴重な“人生振り返り”の瞬間を与えてくれたという意味でも、印象に残った2台だった。

December
BMW3シリーズ 320dツーリング

BMW3シリーズツーリング

3シリーズのステーションワゴンモデル。2リッターのディーゼルターボ(320d)とガソリンターボ(328i)をラインナップ。駆動系やエアコンなどを制御し燃費を向上させるECO PROモードを備えた、ドライビング・パフォーマンス・コントロールを備える

やっぱり12年の輸入車といえば、コレに尽きるでしょう。スケジュールの都合で国内の試乗会に参加できなかった関係で、じっくり乗る時間をなかなか取れなかったのだけれども、年の瀬も押し詰まってからようやく、東京~京都の往復ドライブを楽しむことができた。東京を満タンで出て大津で半分、という燃費の良さはもちろんのこと、何が嬉しいって、片道450kmが早く楽しく過ごせる、ということ。とはいっても、実際の所要時間は他のクルマとそれほど変わるもんじゃない。精神的に早く着いたなあ、と思えることが大事。これは、要するに疲れていない証拠でもあるわけで、実際、そのまま東京へ戻れって言われても、さほど苦にならないと思ったほど。エコプロモードで8速のまま、アクセルペダルをわずかに踏み込んだだけで、大概の追い越しを無難にこなす。もちろん、スポーツモードでギアを落とせばそれはもう、とても2リッターの所業とは思えぬ迫力の加速。“320”だとみくびって、がっついてくる乗用車を瞬時に引き離す快感なんかもあったりして……。なるほど、低速域ではボロボロガラガラゴーゴーとディーゼルらしい音もするし、アイドリングストップの再スタート時における“旦那、エンジンかかりましたぜ! ”振動も気になるし、それが嫌で敬遠する方も多いかとは思う。でも、高速ツーリングにおける、あの心地よさを知ってしまうと……。街中のディーゼルらしい振る舞いもまた、アバタにエクボだと思えてきて……。ツーリングボディの320dは、12年最高の“欲しい”実用車だった。

2013年もまた、輸入車の年、そしてウルトラスーパーカーの年になりそうな気配である。
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