厚生年金基金が廃止?
AIJ投資顧問による巨額の年金資金消失事件が引き金になったのか、2012年11月2日、厚生労働省は突然「厚生年金基金の改革案―財政難に陥っている基金を5年以内に集中的に解散させた上で、10年かけて制度を廃止」を公表しました。厚生労働省が厚生年金基金より提出された2011年度決算書に基づき、2012年11月30日時点で集計した結果によると、577ある基金のうち最低積立準備金が不足する基金は半数の287基金、不足額は1兆1058億円に上ります。最低積立準備金とは厚生年金の給付の一部を代行する部分を給付するために必要な額で、現時点で解散する場合に最低保有していなければならない金額を言います。
さらに厚生労働省は、自前で退職金制度を持てない中小企業が加入する中小企業退職金共済(以下「中退共」)制度で退職金を減額する検討を始めました(2012年11月21日付日本経済新聞朝刊)。中退共の現状は、2011年度期末繰越欠損金が1741億円、2012年10月末現在の加入事業所は約36万5000所、加入者数は約328万人です(「中小企業退職金共済事業概況」第52巻・第7号(平成24年10月)とホームページより)。
退職金制度改革待ったなしを見越してか、「退職金前払い制度(選択性)」や「退職金制度廃止」、「将来の退職金や福利厚生費用を含む年俸制」などを採用し「退職金」という概念をなくす方向に進んでいる企業もあります。
では、現在多くの企業が採用している退職金制度を詳しく見ていきましょう。
確定給付と確定拠出が拮抗
中央労働委員会が2012年4月27日に公表した「平成23年度賃金事情等総合調査―退職金、年金及び定年制事情調査」によると、退職一時金だけ、退職年金だけ、という企業は少なく、多くの会社は退職一時金制度と退職年金制度を併用しています。<退職金制度の採用状況別分布> 集計社総数は208社
- 退職一時金制度のみ 5.3%
- 退職年金制度のみ 8.6%
- 退職一時金制度と退職年金制度の併用 86.1%
退職年金制度で最も多いのは確定給付企業年金(規約型)です。僅差で確定拠出年金(企業型)、次いで確定給付企業年金(基金型)が続きます(複数回答)。また、複数の年金制度を併用している企業は約40%でした。
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