良い成績を上げるには、IQは高いに越した事はないでしょうが、やっぱり、IQの数字など気にせず、自分の得意分野を一生懸命、地道に頑張っていくのが一番だと思います
例えば、相手の要求にすばやく対応できるよう、相手の話の要点を正確につかみたい場合や、また、もしも何かの不注意で、危ない目にあってしまったら、以後、同じ目にあわないよう、そのことを教訓にしておくことも知能と呼べるかも知れません。さらに、もしも、何かの状況で二者択一が必要になってしまったら、それぞれを天秤にかけて思案してみる……といった具合に日常の至るところで知能はモノを言ってきます。
この知能を測る尺度にIQ(知能指数)があります。今回は、IQの意味、検査法、そして、その医学的意義などについてくわしく解説します。
IQは全体の中での自分の位置を示す数字
IQを測るテストは1905年、フランス人の心理学者ビネ(Alfred Binet)によって、初めて開発されました。その目的は、小児における精神遅滞の有無を調べる事ですが、IQは、そのテストで測定した精神年齢(MA)を本当の年齢(CA)で割り、それに100をかけたモノとされました。式で表せば、IQ=(MA÷CA)×100となります。例えば、10歳の小学生の精神年齢が14歳だったとします。これは別に、その子が、とてもマセた子であるということを意味している訳ではなく、その子の知的能力、特に言語能力が14歳の水準に達していることを意味します。それで、その子のIQは、(14÷10)×100=140なので、140という事になります。
しかし、ビネのテスト法では、一般に15歳を超えれば、その後の、知的能力の発達は、ゆるやかになるので、15歳を超えて精神年齢を設定しにくいといった困難がありました。そのため以後、新しく、IQを測るテストが幾つか開発され、IQは、その人のテスト結果が全体の中でどのくらいかを示す数字となり、真ん中の人のIQは100、そして標準偏差は通常、15ないし16と設定されました。
IQを測る標準的なテストはWAIS
現在、IQを測る手段として、日本のみならず、世界中で広く使用されているテストは、ウェクスラー成人知能検査、略してWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)と呼ばれるものです。WAISは1939年、米国の心理学者ウェクスラー(David Wechsler)によって開発されたもの。以後、幾版か改訂を重ねた結果、現在の最新バージョンはWAIS-IVになっています。そのテスト構成は、おおまかに言語性検査と動作性検査の2種類に分けられ、それぞれ複数の組から成っています。、それらの検査結果から、言語性IQと動作性IQが得られ、いわゆるIQは、この2つを総合したものです。
それでは、目から鼻へ抜ける人のIQって、どのくらい?
IQの統計分布は、100をピークに、そのピークから左右対称に傾斜していく、ベル型の形状、いわゆる正規分布になっています。WAISでは標準偏差は15に設定されていて、標準偏差の2倍以内、これはIQ70からIQ130までが相当し、この範囲に全体の約95%が入ります。以下に、IQの各レンジごとの、分布の詳細を記します。- IQ130以上
上位2.28%以内の人 - IQ120~129
上位2.28%から上位9.12%までの人 - IQ110~119
上位9.12%から上位25.25%までの人 - IQ90~109
上位25.25%から下位25.25%までの人 - IQ80~89
下位25.25%から下位9.12%までの人 - IQ70~79
下位9.12%から下位2.28%までの人 - IQ69以下
下位2.28%以内の人
IQの正常範囲は、上記のうち、IQ90~109のレンジとされていて、全体の約55%が相当します。
ところで、私たちの身の周りには、すごく頭の切れる人がいるもの。そういう人のIQって、どのくらいでしょう? もっとも、頭が切れそうな印象には、自分の主観も大きいですが、仮に、自分の住んでいる町に、自分と同じ年齢の人が250人いたとします。もしも、その人が、誰が挙げても、5本の指に必ず入るような人ならば、その人は、頭がすごく切れると言って、間違いはないと思います。
それで250人中、5本の指に入ると言う事は、その人は、上位2%以内という事になります。上記の分布を見れば、上位2%以内と言う事は、IQが130を超えているので、その人のIQは130を超えている可能性が充分あるでしょう。もっとも、IQは必ずしも学力と比例する訳ではありません。極端な話、いくらIQが高くても、英単語を全然知らなければ、英語の成績は悪くなってしまいます。やはり持続的な努力は、是非おしまないようにしたいものです、
IQは精神遅滞の定義に使用される指標の一つ
IQは精神遅滞の定義に使用される指標の一つです。ICD-10など、病気の国際分類では、精神遅滞は、IQが70以下、言い換えれば、標準偏差の2倍ないし、それを超えている事が必要条件となります。上記の分布を見れば、IQ70以下は、下位の約2.3%が相当します。ここで是非、注意しておきたいこととして、IQ60の人の知的能力は、IQ120の人の半分と言う訳では、決してないということです。IQはあくまで、正規分布における、その人の位置を示す数字に過ぎません。また、IQは対人コミュニケーション能力など、社会への適応能力とは一致しないので、精神遅滞を診断する際には、社会への適応能力を測る必要もあります。
では反対に、IQが標準偏差の2倍以上ならば、日常生活は楽勝なのかと問えば、決して、そんな事は、ありません。IQは主に、知能の一面である認知能力を測っているに過ぎず、社会生活を送る上で不可欠な対人コミュニケーション能力、特に、周りの空気を読める力などは全然、測定していません。例えれば、100メートル走で11秒を切るような韋駄天の人でも、野球のピッチャーとして成功するかどうかは不明なのと同じような話で、人生の決め手は結局、総合力だと思います。やはり日々、地道に頑張っていくしか、ないのではないでしょうか。