宝塚ファン/宝塚歌劇団 トップスターの変遷

雪組トップスター音月 桂・舞羽美海――退団(3ページ目)

2012年12月24日、雪組トップスター・音月 桂さん、娘役トップスター・舞羽美海さんが、宝塚歌劇団を卒業しました。フレッシュかつ円熟した演技を見せてくれた美しいトップコンビでした。

桜木 星子

執筆者:桜木 星子

宝塚ファンガイド

全国ツアー公演では、名作『黒い瞳』のニコライを。同期の未涼亜希さん演じるプガチョフとのソリの場面は、決して自分を譲らない信頼し合った二人の、至高のナンバーとなりました。

『フットルース』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

レオナルド・ディカプリオ主演でも話題となった『仮面の男』では、若き暴君ルイ14世と、その兄フィリップの2役を、『ドン・カルロス』では、国民から慕われる王子・ドン・カルロスを好演。貴族としての気品があふれ、コスチューム・プレイも似合います。
また『ハウ・トゥー・サクシード』のフィンチや『フットルース』の高校生・レンなど、明るい青年役ははまり役でした。

溌剌として爽やか。だけど、発するものは骨太で力強い。

そして、日本物の似合う男役、できる男役でもありました。
中でもバウホール公演単独初主演となった『やらずの雨』の徳兵衛。堅物な若旦那、遊び人、振り売り、売れっ子船頭など、次々と変わってゆく様を見事に演じました。ふっと抜く上手さも抜群。青天(あおてん)も着流しも、縁側に座り三味線をつま弾く姿もすべて粋。

『Samourai』

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

またトップになってからの『Samourai』の前田正名。プロローグでは子獅子二人を従えた歌舞伎ばりの連獅子を踊り、日舞の上手さも披露。台詞の一つ一つに説得力があり、勇敢で壮大で懐の大きな薩摩藩士でした。

そして最後も日本物。麻樹ゆめみさん、未涼亜希さん、専科から特別出演の北翔海莉さんの同期生3名に見守られてのサヨナラ公演、『JIN-仁-』の南方 仁。
皆に慕われ信頼され尊敬されたカッコいい仁先生は、“音月 桂”そのものでした。


音月 桂さんには、舞台の空気を動かす力があります。それはまだ若手と呼ばれる頃からでした。
彼女が何かを発すると、舞台がキュッと締まる。観ている者の心を、すっと動かす。そして酔わす。

また、役になりきるという自分側の処理だけではなく、その上で、観客にどれだけの感情を与えられるかということが、しっかりと出来た舞台人でした。

 「一瞬たりとも見逃してはならない」……そう思わせる押し出す力と引き付ける力。音月桂さんのそこに、私たちは惹きつけられたのです。

強い光彩を放つ、逸品のトップスターでした。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 6
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます