Choice 3
ボディがしっかりした、まとまりのいいサウンド
デノン AH-D600

デノン

分厚いイヤーパッドと弱めの側圧で、心地よい肌触り。頭にスーッと吸い付くようなかけ心地でした

老舗中の老舗オーディオメーカー、デノンは、やや地味ながらヘッドホンやイヤホンの名作も折に付けリリースしてきました。そのデノンは今年、ヘッドホンのシリーズを拡充したのですが、本機は「ミュージック・マニアック」シリーズという、純オーディオ的な高音質を追求するシリーズの一員です。

ひと目で心を奪われるのは、モダンでクオリティ感に富んだデザイン。微妙な曲面を見せるハウジングに装着された分厚いイヤーパッドは、よく見ると5角形です。もちろんこれは、デザイン上のインパクトだけを優先したものではなく、かけ心地の向上や音作りにも大きく貢献しているようです。実際に本機を装着してみると、耳のまわりを軟らかなクッションがしっとり優しく包み込んでくれ、じつにフィット感が高く快適でした。

サウンドは、いかにもデノンらしい、たっぷりした低音とみずみずしい中音のバランスが優れた、落ち着きとくつろぎの世界です。低音が厚いといっても、音がこもったりボーカルがかき消されたりすることはありません。楽器が耳の近くでしっかり歌いながら、音全体は大地をしっかりと踏みしめているような、スケールが大きく安定感の高い音だと感じました。

本機の上位機種として、同様のコンセプトを持つ「AH-D7100」もリリースされていますが、価格は11万円台。対して本機は5万円以下です。絶対的な音質は上位機種に譲るものの、価格差を含めたら大納得のお値打ちモデルではないでしょうか。

 


■デノン
AH-D600

Choice 4
沈み込むような渋い音色の平面振動板ヘッドホン
ハイファイマン HE-400

ハイファイマン

ハイファイマンの平面振動板シリーズ中、もっとも安価なモデル。趣味で楽しむサブ機としてもお勧めです

今回ご紹介するヘッドホンの中でも、とくに個性的なモデルがこの「HE-400」です。ハイファイマンというブランドをご存じない方もいらっしゃることと思いますが、2007年にニューヨークで設立された、ハイエンドオーディオブランドだそうです。

本機のドライバユニットには「平面振動板」が採用されています。一般的なダイナミック式ドライバは、ドーム状や皿状に成型された振動板の後ろにコイルが装着され、そのコイルに音楽信号を流すことで、振動板を駆動します。

しかしこの平面振動板は、文字通り平らな振動板自体に音楽信号を流し、振動板全体を同じストロークで駆動。振動板の動作が一部分だけずれる分割振動時に発生しがちな、音のひずみや濁りが少ないという利点があります。スピーカー製品を中心に、以前からときどき採用されている方式で、発想自体は突飛なものではありません。

大昔の話になりますが、平面振動板を使用したフォステクスのヘッドホンを所有していたことがあります。音の尖りや暴れがなく、滑らかで聴きやすいサウンドがじつに私好みでした。

本機のサウンドも、どちらかといえば大人しくもの静か。低音から中音にかけての量感がたっぷりしている代わりに、ズバッと切れる高音やガツンと襲いかかるパンチ力は控えめです。でも、それがじつに気持ちがいいのです。住み慣れた空間に音がぽっかり浮かび上がるように柔らかく生まれ、気負わずラクに音楽を楽しめます。

平面振動板ユニットの特性ともいえる(欠点とは言い切れません)能率の低さもやや感じられ、ポータブルプレーヤー直差しでは実力を発揮しきれないかもしれません。さらに全体的に大型で重く、側圧が強めで外部の音は素通しということもあって、アウトドアでの使用はお勧めできません。しかし、それを補ってあまりある魅力に溢れた音でした。

■ハイファイマン
HE-400

次のページでは、お勧めヘッドホンのChoice 5と個人的注目モデルをご紹介します。