腸チフスとは…感染経路・潜伏期間・症状
腸チフスとは、チフス菌によって起こる感染症です。チフス菌に汚染された生水、乳製品、生野菜などの食べ物を食べることで経口感染します。食べてから発症までの潜伏期間は約7~21日。途上国を中心に、毎年2000万人の感染した患者が発生し、約20~30万人が死亡されています。抗菌薬によって治りますが、早期確定診断が必要です。いわゆる胃腸炎の症状が少ない病気です。
高熱が出ると脈拍数が速くなるのが普通ですが、腸チフスの場合、高熱の割には脈拍数が少なかったり、脈が乱れたりする症状も。脾臓がはれるなどの症状も見られます。
腸チフスでは、特徴的な発疹と薄い紅色の発疹(バラ疹)が胸、お腹、背中に出現し、高熱時に出現し、数時間で消えます。脳・髄膜炎が約5%あります。
腸チフスの治療法
腸チフスは、無治療であっても3~4週間で回復しますが、抗菌薬(ニューキノロン系)が最も効果的で、5~14日間内服することが勧められています。無治療の場合、約15~20%で腸に穴が開いたり、腸が出血したりすることがあるためで、その場合、菌血症や腹膜炎で死に至ることもあるからです。一度、腸チフスにかかると抗体ができるので、しばらくかかることはありません。
腸チフスの予防法・予防接種
まずは、腸チフスの発生する地域では、水、生の食物を摂らないようにしましょう。加熱が不十分な場合に感染しやすくなるので、調理方法も大切です。腸チフスではワクチンがあり、欧米から途上国への旅行では、ワクチンが推奨されています。
汚染地域に行く1~2週間前に、腸チフスワクチンを接種します。
腸チフスワクチン
腸チフスワクチンは2種類あります。日本では未承認のワクチンではありますが、海外では効果が認められており、アジア、アフリカ、アメリカなどで使用されています。- 経口生菌ワクチン(Ty21a)タイプ…接種対象は6歳以上。投与法は弱毒菌の入ったカプセルを、1カプセルを1日おきに3~4回服用
- 注射用不活化ワクチン(Vi CPS)タイプ…接種対象は2歳以上。投与法は海外旅行2週間以上前に、1回0.5mlを筋肉内注射。チフス菌から病原性に関係する成分であるVi 多糖体を使ったワクチンです
ワクチンの効果ですが、経口生菌ワクチンの場合は約5年持続し、注射用不活化ワクチンの場合、免疫力の獲得が約90%で、持続は約2年です。そのため、2年ごとの接種が勧められています。
これらのワクチンは、海外輸入になること、自費での接種になりますが、腸チフスが多く見られる国に旅行する時には、接種が望ましいでしょう。