商品や什器備品は地震保険の補償対象外
居住用部分が地震保険の補償対象となる
ただし、地震により建物が倒壊や焼失、津波による流失といった被害は、火災保険だけでは補償を受けられません。地震被害の補償のためには、地震保険の契約が必要です。
個人宅と同様、賃貸オーナーが保有する住宅物件にも、地震保険をかけることができます。ただし対象となるのは居住用部分のみで、店舗や事務所等の部分等は対象になりません。
このように保険金支払いの対象となる建物は、暮らしに必要な建物(=家屋およびそれに店舗や事務所などとの併用住宅)ですが、事務所や店舗が併設された併用住宅の商品や、什器備品など営業用の動産についても、地震保険金支払の対象外となります。
地震保険金額は戸数×5000万円、かつ建物価額の50%が上限
なお地震保険は火災保険とセットで契約し、設定できる保険金額は火災保険金額の30%~50%まで、かつ建物5000万円、家財1000万円までが個人のマイホームでは上限と定められています。
一方、賃貸物件については、「火災保険金額の30~50%」の範囲内、かつ「戸室数×5000万円」までと定められています。たとえば火災保険金額が2億円で、戸室数が30戸のマンションの場合、2億円×30~50%の範囲内で、かつ30戸×5000万円までとなりますから、1億円が設定できる地震保険金額の上限ということになります。
また、火災保険がいくらの損害を受けたかで保険金が決まるのに対し、地震保険は建物の「主要構造部(柱やはり、屋根、基礎など)」にどの程度の割合で損害を受けているか、あるいは延べ床面積のどれだけの部分が焼失・流失したかで、4区分のいずれかの損害区分に分けられて保険金が決まる仕組みであり、受けた損害に応じ個々に保険金が決定されるのではありません。最大でも火災保険金額の半分まで、さらに損害区分は4区分のみという特性から、そもそも地震保険金だけで建物を再建、再取得できる仕組みの保険でないことは肝に銘じておく必要があります。そうはいっても被災後の厳しい状況のなかで自力再建を求められるからこそ、ほぼ唯一の手段である地震保険は、多くの賃貸物件オーナーに必要といえるでしょう。
多額の負債を抱え、地震被災時に対応できる資金が心もとない場合は、地震保険契約も結んでおきたいところ。建物をまるごと一棟所有するオーナーはもちろん、分譲マンションの一室を所有するオーナーにも、同じことが言えます。
火災、水漏れ、ペット……入居者が起こしたトラブルにも対応するには?
自然災害や放火といった災害だけでなく、入居者自身の過失により発生する事故にも、賃貸物件オーナーは対応しなければなりません。こうした事故に備えるには、賃貸借契約時、入居者に借家人賠償責任補償・個人賠償責任補償の付いた家財の火災保険(建物部分は賃貸物件オーナーが火災保険をかけていますから)の契約をしてもらうのが一般的です。
たとえば、入居者の過失によって、火災・破裂・爆発事故で建物に損害が生じることがあります。この場合、入居者が契約した借家人賠償責任保険により、修繕費等をカバーすることが可能です。また昨今では入居者の起こした水もれで生じた家主建物の損害についても、保険金を支払う商品もあるようです。
また、漏水を起こした入居者の階下の入居者の家財に、水濡れ損害が生じた場合には、漏水事故を起こした入居者が契約する個人賠償責任補償で、階下の入居者の家財の損害についてもカバーすることが可能です。この個人賠償責任補償では、住居に関わる賠償責任だけでなく自転車運転中に歩行者にケガを負わせるといった加害事故や、飼っているペットの加害事故等で生じた賠償責任についても、入居者の同居の親族や別居の未婚の子どもなども含め補償を受けることができます(なお、契約によっては同居の親族や別居の未婚の子どもは「入居者と同一の生計」という条件が付く場合があります)。
このように、賃貸物件のオーナーが建物の火災保険に加入するのと同時に、入居者にも賃貸契約時に火災保険に加入してもらっておけば、さらに種々のトラブル防止に役立つのです。
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